富士通研究所は12日、厚さ1mm以下で従来比約5倍の熱輸送を可能とした薄型のループヒートパイプを、世界で初めて開発したと発表した。
ルートヒートパイプとは、熱源の熱を吸熱する蒸発器と、排熱する凝縮器が、ループ状に接続された熱輸送デバイス。ループ構造の内部に封入された冷媒が、毛細管現象を利用し熱移動。その後、熱源の熱により冷媒が蒸発する気化熱により、熱源の温度を下げることができる。
今回発表したループヒートパイプでは、銅薄板を重ねて微細な孔を持つ構造を開発。複数枚の銅薄板に、あらかじめ位置が少しずつずれるように設計した孔パターンをエッチングで形成し重ねることで、流体を循環させるための毛細管力を発生させた。この構造体がループの中で気体(蒸気)と液体の2つの流れを分離することで、高効率な熱輸送を実現。蒸発器へ液体を戻す液管内(パイプ)にも、毛細管力を発生させる構造を採用した。
また、厚さ0.1mmの銅薄板を、表裏面2枚と内層4枚の計6枚を一括形成することで、従来実用には厚さ10mm程度が必要であったループヒートパイプの蒸発器を、厚さ0.6mmまで薄型化した。
これらの新開発技術により、高い熱伝導率のシート材料や薄型のヒートパイプに比べて約5倍の熱輸送を実現したとする。
電力ではなく熱そのものを駆動源にしているため、バッテリ消費を増やさないというメリットや、金属薄板のエッチングを用いたパターン形成により、製品ごとの熱輸送量・配管レイアウトに応じた設計が可能。スマートフォン、タブレット、ノートPCなどモバイル機器において、CPUなどの熱源による発熱を効率良く分散させることが期待されている。
詳細については、サンノゼで3月15日(現地時間)より行なわれる、SEMI-THERM 31において発表。同社は、設計技術と低コスト化の研究・開発を進め、2017年度中の実用化を目指す。