スマートフォンは、携帯電話とコンピュータ両方の顔を持ち、様々な部品や技術が搭載されています。そんなスマートフォンのカタログを見たときに、専門用語 のオンパレード……と思ったことはないでしょうか。このコーナーでは、そんなスマートフォン関連の用語をやさしく解説します。今回は「eMMC」についてです。

eMMC(Embedded Multi Media Card)は、NANDフラッシュメモリと制御回路からなる記憶装置の1種です。その名のとおりメモリカード規格「MMC」(SDカードの基礎となったメモリカード)に由来しますが、現在ではもっぱら基板に実装されたフラッシュメモリにMMC互換の接続性を持たせるために利用されているため、外見はカード型ではありません。

フラッシュメモリを利用した記憶装置といえば、パソコンなどを中心にSSDが普及していますが、eMMCはSSDほど高速ではありません。しかしハードディスク(HDD)に比べると構造がシンプルで、より高速に読み書きできるため、スマートフォンやタブレットでの採用が進んでいます。いわゆる内蔵メモリ/ストレージ、Android端末の場合は内蔵ROMとも呼ばれる部分にeMMCが活用されているのです。

SSDに比べ小型化が容易なことと消費電力が低いことも、スマートフォンやタブレットでの採用が進む理由といえます。大量・大容量のファイルを高速に読み書きする性能が求められるパソコンに比べ、データ転送性能への要求がシビアではないことも理由です。

eMMCの規格はJEDEC(電子素子技術連合評議会)で策定され、バージョンが上がるごとに最大転送速度が向上しています。eMMC 4.5からは最大200MB/秒のHS200モード、eMMC 5.0からは最大400MB/秒のHS400モードがサポートされるようになりました。より高速なUFS(Universal Flash Storage)が後継規格として期待され、サムスンなどの企業が量産を開始していますが、スマートフォン/タブレットにおいてはeMMCが主流という状況はもうしばらく続くことでしょう。

多くのスマートフォンの内蔵ストレージには「eMMC」が採用されています(写真はSpansion社の製品)