シャープは3月10日、都内にて報道機関向け「液晶タッチパネル新技術説明会」を開催、モバイル機器から70型電子黒板まで、用途に応じた最新UIソリューションを紹介した。
冒頭、シャープ 代表取締役 専務執行役員 デバイスビジネスグループ担当 方志教和(ほうしのりかず)氏は、「タブレットなど市場需要拡大の遅れ」「中国市場における流通在庫増」「モデルミックスの悪化」など厳しいビジネスの現状認識を踏まえ、4月1日付となるデバイスビジネスグループの組織体制強化を発表した(中型ディスプレイを管轄するディスプレイデバイス第二本部の新設など)。
続いて液晶事業ポートフォリオ変革に触れ、「B to B to B」、つまり非コンシューマ向け市場の車載や医療、電子黒板、サイネージなどの比重を高めるとした。2021年度までに、約40%の比率増という目標を掲げる(2014年度は約15%)。
シャープの意気込みとして、競合に対する優位性を表す新規軸を述べた。3点の要素(デザイン・耐環境性能・UI革新)を示したうえで、ディスプレイ技術と電子デバイスとの融合である「ディスプレイUIソリューション」がシャープの強みであると、熱く語った。
具体的には、紙とペンの使用感をそのままタッチパネルで実現することを目指した、同社の提唱する新コンセプト「フリードローイング技術」がある。タッチパネルのサイズに関係なく(5型~70型までなど)、同じ操作性の統一した使用感が実現できることがメリットだという。また、独自のUI技術によって、ウェアラブルデバイス、スマートフォン、パソコン、サイネージまで、コネクティビティの進化に貢献していくと語った。
シャープのディスプレイデバイス開発本部本部長 伴厚志(ばんあつし)氏からは、今回の説明会における中心テーマである新技術について、4つのポイントで解説があった。
タッチパネル高感度化技術
並列駆動センシングによって検知速度を高め、さらに従来比で約8倍という高SN比の検知によって高精細化・大画面化に対応するとした。
具体的なユーザーメリットは、「1mmのペン先でも検出可能」「鉛筆でも画面に綺麗に書き込める」「手袋をしたままでもタッチ入力可能」「大画面で50点同時タッチを処理し、大人数で利用可能」といったものだ。また伴氏は、「高感度インセルタッチパネル」を独自の高感度技術で実現し、今後は4Kなど高精細への対応はもちろん、タッチパネルのコストダウンや一層の薄型化、処理速度アップにつながるとした。
ディスプレイ形状とタッチ機能の融合
従来の長方形パネルにとらわれない、デザインと融合した直感的な操作の実現を示した。具体的には、会場にデモ展示されていたが、フレームレスUI、円形UI、アーチ型UIという3つの例だ。
ディスプレイに新たな機能を統合
カードリーダー搭載ディスプレイがそれだ。従来技術では、有線接続でNFCカードリーダーを機能させていたが、アンテナ部を透明化したNFCカードリーダーをディスプレイ自体に搭載することで、表示と入力を一体化した直感的UIを提供。POS、自動販売機、ショーケースなどでの展開を見込んでいるという。
新たなUI技術への取り組み
今後の取り組みとしては、電子ノート、カーブドサイネージ、空間検知(ジェスチャ)など、ディスプレイだけでなくセンシングデバイスやコントローラを融合させ、さらなる利便性と新しい体験を目指すとした。
シャープの液晶は、前述した組織の再編に加え、電子デバイス事業統括部門との「横連携」も強力に進めるという。「ディスプレイUIソリューション」というキーワードに注目していきたい。