『HERO』『単騎、千里を走る。』の映画作品のほか、北京五輪開会式やAPEC歓迎式典の演出も手がけるチャン・イーモウの監督20作品目となる最新作『妻への家路』が、3月6日公開された。2005年には、高倉健さんを主演に迎え『単騎、千里を走る。』を監督したチャン・イーモウ。このたび、高倉さんとの思い出や、最新作にまつわるエピソードを明かした。

高倉健さんとの秘話を明かしたチャン・イーモウ監督

イーモウ監督は「実は一昨年、この映画を撮る前に高倉さんに『今度、こういう文革を背景にしたある家庭の話を撮るんだけれども、きっと高倉さんはお好きな映画だと思いますよ』と手紙に書いたんです。また、一昨年の撮影中にも一度お電話しました。その時も、いつものように、電話の最後にご自身で中国語で『イーモウ、がんばれよ』と言ってくれました。それが彼と話した最後」と高倉さんとのエピソードを披露。

そして、「昨年末に突然、高倉さんの死をニュースで知り、驚きました。病気の事も知らなかったので、大変ショックを受けました」と高倉さんの死を振り返り、「中国のマスコミは高倉さんの死を連日報道していて、その中で高倉さんの生涯について細かく振り返っていました。中国では、"高倉さんの死で一つの時代が終わった"という程、それほど中国に影響を与えた日本人でした。あれほど中国人に広く愛された日本人はいないと思います」と中国における影響の大きさを語った。

イーモウ監督も、高倉さんに影響を受けた一人。「私と高倉さんは一本の映画をとっただけですが、高倉さんの影響、高倉さんが私に与えてくれた言葉、それは一生忘れることのないもの」と言い、「高倉さんは手紙もそうですが、日本刀も贈ってくれました。その日本刀は今も、私のオフィスの私から1mと離れていないところにあります。日本刀は持ち主を守るといわれますが、高倉さんが守ってくれているような気がします」と告白。「高倉さんは本当にひととなりが素晴らしく、昔堅気な人だった。高倉さんは常に人の事を考えるような尊敬に値する人でした」と敬意を示した。

また、今年2月に来日した際、高倉さんの祭壇が設えてあるという共通の友人の家を訪れ、その友人から「高倉さん、『妻への家路』を見ていたんだよ」と聞いたイーモウ監督。「映画を見た後、しばらく黙っていて、一言、『ついにイーモウは自分の一番よく知っている、一番得意な映画を撮ることができたね』と言ったそうです」と明かし、「見ていただけているとは思っていなかったので、それを聞いて大変に慰められました。最後にお会いすることはできなかったけれど、『妻への家路』を見ていただけていたんだとほっとしました」と語った。

チャン・イーモウ監督最新作『妻への家路』の舞台は、文化大革命が終結した1977年の中国。20年ぶりに解放された陸焉識(ルー・イエンシー)は、妻の馮婉玉(フォン・ワンイー)と再会するが、待ちすぎた妻は心労のあまり記憶障害となり、現在の夫を別人として認識してしまう。焉識は他人として向かいの家に住み、娘の丹丹(タンタン)の助けを借りながら、妻に思い出してもらおうと奮闘する。果たして、彼女の記憶が戻る日は来るのか。

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