これからの季節、症状に悩む人が多い花粉症。どれぐらい患者がいるのか正確な数値はわかっていないが、推定では日本人の4人に1人は花粉症患者といわれ、「国民病」とも言われている。
花粉症に悩んでいる人は、症状を少しでも軽くしようとさまざまな努力をしている。「花粉症に負けないように免疫力を強化しよう」という考え方もその一つに当てはまるだろうが、実はこの「免疫力」が花粉症を悪化させていたのだ。
免疫力を高めると、症状が強く出る可能性も
花粉症とは、スギなどの特定の異物に対して、過剰に免疫力が高まっている状態のことを表す。免疫力が高いがゆえに、花粉症が発症してしまうのだ。
免疫とは本来、体に入ってくるウイルスや細菌などの異物を防御するために働く。花粉症は、植物の花粉や胞子が鼻や口から吸い込まれたり目に入ったりすると、免疫システムがそれらを「異物」と判断し、追い出そうとする。そのときに、化学伝達物質「ヒスタミン」が過剰分泌することで、くしゃみや鼻水、目のかゆみといった症状が起きてしまうわけだ。
そのため、単純に免疫力を高めるだけだと、症状が強く出てしまう可能性も。免疫力を「高める」のではなく、「整える」ことで"ニュートラルな状態"を作ることが大切なのだ。
スギ花粉は40代がピーク?
花粉症は年齢が高くなるほど、症状が軽くなるというデータがある。スギ花粉の有病率は40代がピークで、それ以降は低下していく傾向があるが、年齢に伴い免疫反応が低下することで発病しにくくなると言われている。
症状が強く出る40代までの人は、徹底した花粉防御とセルフケア、さらに医薬品でのケアを徹底したほうがいいだろう。さらに、この世代は仕事も忙しく睡眠不足にもなりがち。睡眠不足やストレスは花粉症の天敵なので、この部分の見直しも必要だ。
花粉症は放っておいてもよくならない。「自力でどうにかしよう」と考える人もいるが、アレルギー反応なので、セルフケアだけでは限界がある。重要なのは、「セルフケア」「医薬品」「生活改善」の3つの柱だということを覚えておこう。
花粉症の誤解を解くことが対策の第一歩
花粉症と正しく向き合うには、まずは敵を知ることが大事。意外と間違った認識も多いので、花粉症の誤解をここで整理するようにしよう。
誤解1 花粉症は完治する
花粉症や通年性アレルギー性鼻炎のようなアレルギー性の症状の場合、「完治」という表現は使わない。代わりに、完治したわけではないけれど、症状が見えない状態の「寛解」という言葉を用いる。花粉症においては、自然と症状が穏やかになり、その症状が見えなくなる「自然寛解」はありうる。だが残念ながら、他のアレルギー症状に比べるとその可能性は低いと言われている。ただ上述のように、年齢とともに症状が穏やかになることはある。
誤解2 アレルギー物質を食べるとよい
花粉症の完治の可能性があるとして注目されているのが、「舌下免疫療法」と呼ばれる免疫療法だ。まだ保険適用外の治療法だが、2015年6月からは保険適用になり3割負担になる。スギ花粉などの抗原のエキスを舌の下側(舌下)に滴下し、一定時間その状態を保ったあとで飲み込むというこの治療法から、「アレルギー物質を食べるとよい」という情報が巷に広まっているようだ。杉の葉を干したスギ茶なども話題になっているが、安易に行うとアナフィラキシーショックを招くなどの恐れがある。舌下免疫療法のようなアレルギーを取り込む治療は、きちんとした専門医のもとで行うのが基本ということを忘れずに。
誤解3 花粉症治療はしても意味がない
ある製薬会社のアンケートで、「花粉症で病院にかかったり、市販薬を飲んだりして治療している人の満足度は、40%前後である」という報告があった。治療してもすっきり改善しないという悩みを持っている人が多いようだが、先にお伝えしたように、花粉症の完治は難しいもの。また、治療をしても、次々と体内にアレルギーを引き起こす花粉が入ってきてしまえば、症状は悪化してしまう。治療をすればそれで万全というわけではなく、「治療×セルフケア」で満足度を上げていくことが肝心。満足度が低いからと治療をやめてしまわずに、セルフケアと上手に組み合わせることで、満足度を上げていくことが大切となる。
誤解4 「花粉症じゃないから大丈夫」
「私は今まで花粉症にならかったから大丈夫」という人も多いが、昨年まで花粉症ではなかったからといって、今年も花粉症にならないという根拠はないのだ。花粉症は、免疫と生体の過剰反応によって起こる。毎年花粉を浴び続けることで、ある日ふと許容範囲を超えて花粉症を発病することもある。その許容範囲は人によって異なるため、すでに花粉症が出ている人と出ていない人がいるというわけだ。だから「今まで症状が出ていなかったから、花粉症にはならない」とは言い切れないのだ。また、「両親が花粉症だとかかりやすい」とも言われているが、遺伝的に関係なくても発病している人の割合も高いので、これもまだはっきりとは言い切れないことを覚えておこう。