すみだ水族館(東京都墨田区)は、同館で飼育しているチンアナゴおよびニシキアナゴの二種(以下、これらをまとめてチンアナゴ類と記載)の産卵行動を確認し、動画での記録に世界で初めて成功した。
チンアナゴ類は、温暖で潮通しの良い砂地に生息するウナギ目アナゴ科の仲間。巣穴を掘って生活し、時には大きな群れを作る。砂から体を伸ばし、流れてきた動物プランクトンを捕食する姿がユニークで人気となっている。
同館で最初にチンアナゴ類の卵が発見されたのは、2014年4月14日の午前2時頃。飼育スタッフが見回りを行った際、水槽の表面に卵が浮いているのを発見した。発見から約半年間は、夜間に水槽の観察および撮影を実施。通常、夜間は巣穴に潜って寝ているチンアナゴやニシキアナゴが巣穴から体を伸ばし、産卵行動を行う姿を合計17回確認した。
特にニシキアナゴは特徴的な産卵行動であったという。雌は、巣穴からカクカクとした動きで体を伸ばして放卵し、雌の放卵後に雄が巣穴から体を伸ばし放精するという特有の行動が見られた。また、雌1匹と複数の雄が直線状に並び、放卵・放精を行う姿も観察できた。一方、チンアナゴはこれらのような雌雄での行動は確認できなかったという。
また、水槽に浮遊したチンアナゴやニシキアナゴの受精卵の採取とふ化にも成功した。観察したところ、受精卵の段階での種類の識別も可能なほど、2種の受精卵は明らかに見た目が異なっていたという。ふ化した稚魚は約10日間生存したが、その後の育成は残念ながら継続できなかった。
なお、記録データについては、日本大学でウナギの回遊行動と産卵生態についての研究を行う塚本勝巳教授のチームと共同で解析を行い、現在は論文を学術誌に投稿中とのこと。