ひと足早く咲く桜の花を撮るために、南国・九州の果て鹿児島にやって来た。持参したカメラは、1.0型センサー搭載のコンパクト機、キヤノン「PowerShot G7 X」だ。広角から中望遠までをカバーする光学4.2倍ズームレンズを備えつつ、ポケットに収まる薄型ボディなので、旅の相棒には打ってつけ。大げさな機材を使わずに、気軽だけど本格的に楽しむ桜撮影のコツを紹介しよう。
最初に向かったのは、鹿児島を代表する観光名所のひとつ「仙巌園(せんがんえん)」だ。1658年、島津光久によって築造されたという、歴史ファンにはたまらない由緒ある庭園である一方、毎年2月から4月にかけてはさまざまな品種が楽しめる桜の絶景スポットでもある。訪れた日はちょうどカンヒザクラ(寒緋桜)が満開。濃いピンク色で釣鐘状の形をした花が咲く、南国に多い桜である。
マクロモードで花に接近して画面を整理する
満開のカンヒザクラをまのあたりにすると、自然と気持ちが高ぶり、撮影意欲が刺激されてくる。下の写真のようにクローズアップで桜を撮る際は、花弁にキズや欠損がなく、バランスよく整った状態の花を見つけることが大切。離れた距離から全体を眺めるときれいに見えていても、接近すればするほど、アラが目立つことがあるからだ。
きれいな花が見つかったら、できるだけ背景がシンプルになるようなカメラアングルを選ぼう。青空や草木、芝生、建物の壁面など、単色に近い背景がベターだ。そして、周辺に余分な被写体が写らないように、その花に接近して撮影する。中途半端な距離感ではなく、撮りたいものにグッと近寄ることが、どんな撮影でも基本である。
PowerShot G7 Xは、35mm判換算で24~100mm相当という広いズーム域を持つので、桜のような撮影ポジションが限られる被写体であっても狙いどおりの構図で撮りやすい。しかもマクロモードはワイド側で最短5cm、テレ側で最短40cmまで近寄れる。小さな花も大きく捉えることが可能だ。
ボケと光量をコントロールして一歩上の桜写真を
よく晴れた天候に満開の桜、そして光学4.2倍ズームにマクロ機能。これだけ好条件が揃えば、たとえ押すだけのフルオート設定であっても、きれいな桜写真になるだろう。とはいうものの、誰が撮っても同じ写真になるのはつまらない。ここからは少し工夫を加えて、一歩上の桜写真を目指していこう。
そんな工夫のひとつが「ボケ」のコントロールだ。PowerShot G7 Xは、ワイド側でF1.8、テレ側でF2.8というレンズ開放値の明るさが持ち味のひとつ。焦点距離や撮影距離が同じである場合、開放値は明るければ明るいほど(絞りのF値が小さいほど)、ピントを合わせた部分の前後がボケやすくなる。つまり、絞り優先AEモードやマニュアル露出モードを選び、絞り値を小さくセットすることで、ボケを生かした写真が撮れるというわけだ。
上のカットは、ズームをテレ端(望遠端)にして、絞りを開放値のF2.8で撮影したもの。背後の桜を美しいボケとして表現できた。なお、こうした明るい屋外で絞り開放値を利用する際は、PowerShot G7 Xに内蔵された「NDフィルター機能」をオンにすること。光量を抑えることで露出オーバーになるのを防ぐ機能だ。
もちろん、常に何もかもぼかしたほうがいい、と言うつもりはない。被写体によっては、くっきりと写したほうが映えることもある。下の写真は、F11まで絞り込み、背景の枝の様子がわかるように写したケースだ。PowerShot G7 Xでは、レンズの周りにあるコントローラーリングを回転することで絞り値を素早く調整できるのが便利。ボケを表現したければ絞り値は小さく、全体をくっきり写したければ絞り値は大きく。絞り値は狙いに応じて使い分けるようにしたい。