「働きがい」とはなんだろうか。「給料」「評価」「誇り」…人によって基準は様々だ。

世界49カ国、7,000社超を対象に、「働きがいのある会社」を調査・表彰するGreat Place to Workの日本支部 Great Place to Work Institute Japanは24日、「働きがいのある会社」のベストカンパニーにおける傾向を発表した。このレポートでは、「働きがいのある会社」に選出された企業の取り組み事例や傾向などを紹介する。

「働きがいのある会社」受賞企業の代表

「働きがいのある会社」とは?

まず同社は「働きがいのある会社」を以下のように定義する。

「従業員から見た『働きがいのある会社』とは、従業員が会社や経営者、管理者を『信頼』し、自分の仕事に『誇り』を持ち、一緒に働いている人たちと『連帯感』を持てる会社である。マネジメント(会社)から見た働きがいのある会社とは、『信頼』に満ちた環境で、『一つのチームや家族』のように働きながら、『個人の能力』を最大に発揮して、『組織目標』を達成できる職場である」

同社は上記定義に基づき、日本国内240社の社員を対象に、「信用」「尊敬」「公正」「誇り」「連帯感」の5つの要素からなるアンケートを実施。同時に、企業を対象に9つのエリアに分けたアンケートも行った(基準は世界共通)。

調査の結果、2015年の「ベストカンパニー」(一定の水準に達した企業)は85社。従業員1,000人以上のランキングは、1位「グーグル」、2位「日本マイクロソフト」、3位「アメリカン・エキスプレス」となった。

「働きがいのある会社 2015」ランキング

企業規模別の傾向

続いて調査対象企業を規模別に分類。「大企業部門」(25社)、「中企業」(30社)、「少企業」(30社)それぞれに属する従業員の特徴が紹介された。

同社によると、大企業に所属する従業員は、5つの要素の中で仕事に対するプライドを測る「誇り」の項目への評価が最も高い。同社シニアコンサルタント 今野敦子氏は「社会的影響力が大きい大企業は、商品名や会社名が社員の誇りとなり、働きがいを導いている」とコメントしている。

一方中小企業では、職場での親密さやホスピタリティ、コミュニティの質を評価する「連帯感」の評価が最も高い。今野氏は「小さい組織であると、同僚・上司と信頼感をもってチームで何かを成し遂げるということが多い。また、お互いの顔を知っており、連帯感が生まれやすい環境が整っているため」と述べた。

特徴1 「採用」…トップを巻き込む

最後に、「働きがいのある会社」を作るため、各社が取り組んでいる事例とその特徴を紹介する。近年の傾向として紹介された特徴は大きく3つ。それぞれについて、今野氏の解説とともに見ていこう。

第1の特徴は「採用」。景気回復を受け新卒採用が難しくなる一方、3年内離職率は増加している。2015年のベストカンパニーと認定された企業では、新入社員を逃さないよう、入社後のフォローアップを手厚くする傾向が見られたという。

新入社員研修はその1つであるが、近年の特徴として、「よりマネジメントを巻き込む傾向」が顕著になってきていると今野氏は指摘する。「経営トップを入社式や歓迎会にも参加させ、新入社員にとって身近な存在として感じさせる。教育係・メンターも入社式に参列させ、初めから親しい関係性を作れるようなプログラムを組む傾向が見られた」(今野氏)

また、配属前に複数の部署を専攻・興味にかかわらず経験させるという取り組みも。「会社の仕組みを知るだけでなく、入社数年後のキャリアのつまづきやモチベーションの低下時に、同社他部門へ新たな機会を求めるきっかけに繋がる」と今野氏は説明した。

講演会の様子

特徴2 「配慮」…夫婦揃っての転勤も

第2の特徴は「配慮」。柔軟な働き方を支援するため、従来の発想を越えた制度が追加されている。

例えば営業職の女性社員の産休・育休支援強化として、社員が育児で長期休暇を希望する際、代替人員を速やかに採用する制度を採用した企業も。忙しい部署・職種であっても、配属転換をせずにその仕事を続けることができる。

社内結婚の場合、どちらかの転勤による退職者を防ぐため、希望すれば夫婦揃って異動できるという転勤制度を実施している事例も紹介された。

上記のような制度が整っているのは大企業が多く、中小企業の中にはまだまだという会社もたくさんある。ただ、一人ひとりの負担が大きい中小企業では、個別の事情にあった支援を行うという柔軟性が見られる。また、個別ニーズを聞き取り対応していった結果、制度化するということもあるようだ。

「働きがいのある会社 2015」第1位を受賞したグーグル 人事部 シルバ・ダニエル氏(右)とGreat Place to Work Institute Japan 代表 岡元利奈子氏(左)

特徴3 「傾聴」…社内SNSなど

第3の特徴は「傾聴」。社内の連帯感や信頼関係をどのように高めるかは、部門障壁のある大企業にとって大きな問題となる。従来は「お祭り」「運動会」などの方法が採用されてきたが、今野氏は「その場限りの一時的なもので、お互いを知る機会にはなりにくい」と指摘する。

こうした現状から大企業を中心に、自分に起きた身近な事、業務のちょっとした改善案を思った時に発信し、同僚・上司がフィードバックする場作りをしている会社が増えている。今野氏は「社内SNS」をその一例としてあげ、「ただ作っただけでは皆使わないので、誰かが常にフィードバックするようにし、コミュニケーションを活性化した」という事例を紹介。

新入社員の業務日誌についても、先輩のメンターだけが確認するのではなく、全公開し全社員が読んでコメントするということも重要だという。こうした取り組みが、新入社員が将来やりたいことを発見したり、イノベーションに繋がる可能性があると今野氏はコメントしている。