スマートフォンの便利さといえば、もちろん探している情報がすぐに見つかることだ。話題のニュースから、今日のランチ、スポーツの試合結果など、欲しい情報をすぐに手に入れることができる。しかも、目的に特化したアプリを使えば、より早く、見やすく、詳しい情報にたどり着ける。

だが、スマートフォンの画面を前に、何を探せばいいのか分からなくなったことはないだろうか。自分が今日何をしたいのか、明日どこへ行きたいのか、それをどのサービスで探せばいいのか。情報は際限なくあふれているのに、ピッタリなものが見つからない……。そんな時に役立つ情報を届けることをコンセプトにした地域密着型アプリが、中部テレコミュニケーション(以下、ctc)が提供する「ちずコレ -ハッピーライフマップマガジン-」(以下、ちずコレ)だ。なお、同アプリはiOSおよびAndroidに対応しており、本稿ではiOS版の画面を使って紹介する。

第2回:【レビュー】「ちずコレ」はディープなスポットも教えてくれる地図情報アプリだった

全て無料、広告なしで利用できるマップ系アプリ「ちずコレ」

ctcは、中部エリアで企業向け通信回線(イーサネット、クラウド、データセンター)や家庭向けインターネットサービス(コミュファ光)を展開する通信事業者。2013年末、同社は新たな事業へのトライアルとして、このアプリを立ち上げた。カテゴリとしては飲食店や観光スポット、イベントなどの情報が地図に紐付けられて掲載されるマップ系アプリだが、その運営方法が他とは少し違う。事業を担当する同社経営戦略室のグループマネージャー坂上氏と、梶田氏にお話をうかがった。

中部テレコミュニケーション 経営戦略室 グループマネージャー坂上氏(写真右)、同室梶田氏(写真左)

毎週新着情報を届ける、情報誌的地図アプリ

ちずコレは地図連動でローカル情報を提供するマップ系アプリ。ひとつのテーマに沿って20~30件の情報を集め、雑誌の特集記事のようにまとめた「マップ」という形式でコンテンツを提供している点が特徴だ。マップに含まれる1件ごとの情報は「フラグ」と呼ばれ、ひとつのマップを開くとそれに含まれるフラグを地図とリストで表示。フラグを選択するとそのスポットの詳しい情報を閲覧できるようになっている。

トップ画面の「マップ」タブ。毎月4本掲載される「新着マップ」(左カラム)と、お気に入り数と閲覧数の多い「人気マップ」(右カラム)を表示

各マップをタップすると、マップに含まれる「フラグ」を地図上のマークとリストで一覧表示

フラグを開くと、スポットごとの詳細情報を確認できる

一般的にこうした情報連動型のマップ系アプリは、利用者の投稿によってコンテンツを作る仕組みになっていることが多い。しかし、このアプリではコンテンツの企画や編集をちずコレ編集部が行っている。最近のアプリとしては珍しい運営スタイルだが、なぜこのコンセプトで、しかもこうした形で提供を始めたのだろうか。

同社は通信事業者として、中部エリア(愛知・岐阜・三重・静岡・長野各県)で企業向けのイーサネット回線を提供し、現在は「コミュファ光」の名称で家庭向けのインターネットサービス事業も行っている(インターネットサービス事業は長野県を除く)。長らくインフラ事業を手掛けてきた同社だが、次なる事業を模索する中で、シームレスになるインフラ上でサービス展開できるコンテンツサービスに可能性を探ることを考えたという。

経営戦略室 グループマネージャー坂上氏

坂上氏:「スマートフォンの利用者は年々増加しており、誰もが常に情報に接する環境になってきています。いつでも、どこでもという状況に親和性の高いマップ系のアプリには、まだまだ需要があると考えました。ちずコレにビジネス側から情報を提供してもらうことで、BtoBtoCのような役割を担うことが狙いです」

ちずコレのコンセプトは「目的を探してもらう」こと。ただやみくもに数多くの情報を掲載したのでは、検索サイトと価値は変わらない。思ってもみなかった情報に出会ったり、新たな視点を見つけてもらうために、テーマを設けて雑誌の特集記事のような見せ方でまとめ、定期的に新しい情報を届ける"マップ+フラグ"というスタイルを考案した。地図を基盤にした「ライフスタイルマガジン」たる理由がここにある。

経営戦略室 梶田氏

梶田氏:「例えば、飲み会があると目的が決まっていればグルメサイトで検索しますが、『デートに行くのでどこかいい場所を探したい』『連休に普段行かない場所へ家族と出かけたい』など、目的を探す時にちずコレのマップから"ピン"とくるスポットを見つけてもらうことを想定しています。また、ふとした時に雑誌感覚でちずコレを活用していただきたいです」

独自の企画でまとめられた各ジャンルのマップ。着眼点の多彩さは、コンテンツのプロである編集部ならでは

ちずコレに掲載されている記事は、ほぼ全てがちずコレ編集部で制作されたものだ。タイトルやキャッチの入れ方、紹介文の読みやすさやポイントのつかみ方など、伝わりやすい内容作りはプロの技術。フォーマットや文章のクォリティが整っているだけでなく、掲載時には対象の店舗や施設などに内容の確認を取り、手間をかけて信頼性の高い、質の良い情報を載せていることも大きな特徴だ。

気になるマップやフラグは「お気に入り」に登録。行きたい場所をまとめておくことができる

情報は洗練されると価値が高まる

ちずコレでは編集部が独自に企画・制作するマップと並行して、企業や自治体にコンテンツを出してもらうタイアップ型のマップも提供している。例えば、自治体が観光客向けに情報を提供したいと考えた場合、観光ガイドや地図を作製しても、多くは地元の観光案内所や宿泊施設などに置かれることが中心になるため、他県の潜在客に情報を届けることは難しい。

自治体が独自で観光情報アプリを提供しているケースもあるが、そこへ行きたい人・行った人にとっては便利でも幅広い誘致促進にはあまり期待できず、観光を終えれば削除されてしまう可能性もある。自治体にとって、情報のリフレッシュやOSに合わせたアプリの機能アップデートなど、費用面、管理面で負担が大きいことも問題だ。

こうした情報も、ちずコレに掲載すれば利用者はエリア横断で幅広く情報を集めることができ、目的地の近くに興味あるスポットを発見するような楽しみも得られる。エリアによってまとめ方が異なる各地の情報を個別に集めるより、一覧性が高くポイントも掴みやすくまとまっていることも利点。情報は見せ方ひとつで価値が高まるものだ。

テーマ別にエリア横断で情報を探せるのがマップの特徴。こちらは「ちずコレ厳選! イベント情報(2015年1月~2月)」

毎回ひとつの市町村ごとにおすすめスポットを取り上げる「まちコレ BEST20」シリーズ。「この辺に行ってみようかな」というきっかけ作りにも

坂上氏:「ちずコレは、情報を選別し鮮度と精度の高いものを提供するという、キュレーションの役割も持っていると思います。店舗や自治体、地元の観光協会がバラバラに情報を出しても、見た人はポイントが掴みづらいし、良い点も伝わりにくい。それをひとつのテーマを持って特集記事のようにまとめることで、多くの人に興味を持っていただき、役に立つものにしたいと考えています」

利用者にとって信頼できる情報を

情報の"鮮度"と"精度"にこだわりがあるというちずコレ。その方針は、記事の企画・編集だけでなく、その後の管理方法にも現れている。「特集」という形で一度掲載した情報は、一年程度経つと「バックナンバー」としてアーカイブするか、内容をリフレッシュして掲載しなおしている。だからちずコレの画面上では常に"現役"の情報を手に入れられるのだ。

一定期間が過ぎるとマップは「バックナンバー」カテゴリへ移動

消費税5%から8%が上がった2014年4月には、金額が載っている全ての情報について店舗や施設などに直接確認しなおし、変更のあったものは修正を行い更新したという。利用者が投稿するシステムで運営されているサービスではできない対応だ。同社がもともとインフラ事業者であることから来る精神というべきか、アプリへの信頼性の確保に対する信念を感じる。

現在までに掲載した情報は5,000件以上。テーマごとに提案してくれるスタイルは、旅行者にとっても使いやすい

信頼できる地図と情報は、地元で生活する人はもちろん、仕事や旅行で中部エリアを訪れる人にとっても貴重なものだ。次回は実際にアプリを使いながら、便利な機能を紹介していこう。

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