世界の風景を見て、文化の違いを肌で感じ、土地の料理を味わうトラベルライター。多くの人が憧れるこの仕事でキャリアを積み、香港の新聞に寄稿しているのがウィリー・リュウさんです。世界50カ国を取材したと聞けば、なんともうらやましいのですが、その実、毎日がプレッシャーとの闘いだそうです。でも臨機応変に対応できる香港人気質は、この職業にうってつけだとリュウさんは話します。
■これまでのキャリアと今の仕事について教えて下さい
仕事は雑誌や新聞のライフスタイルセクションに記事を書くことです。これまでずっとマスコミ業界で働いてきました。大学で言語学を学んだ後、最初は自動車専門誌で編集のアシスタント。そしてチャンス到来! トラベルライターという長いキャリアの始まりとなりました。2紙でトラベルライターを務めてから、今の新聞社(星島日報)で働くようになって10年以上が過ぎました。
僕は仕事に選ばれたと思っています。旅行は好きだったけれど、以前の同僚に「新聞の旅行ページを担当してみないか?」と言われるまで、トラベルライターになるなんて思ってもみませんでした。即座に「イエス」と答えたのは、いろいろな文化が息づく様々な国を冒険してみたかったからです。もちろん書くことも語学も、私の強みでしたし。
■現在のお給料は以前のお給料と比べてどうですか?
年収は日本円で400万円くらいです。香港の物価を考えると、高いとはいえません。この金額に満足しているか? もっとあればいいですね、香港の生活費は高いですから。
■今の仕事で気に入っているところ、満足を感じる瞬間は?
いい点は自分の特技を活かせるだけでなく、好奇心を満たすことができることです。仕事でいろいろな国を訪れるたびに、自分の視野が広げられます。また、仕事のやり方も自分でコントロールできるので、旅のプランを自分で練り、旅の目的も自由に選ぶことができます。一番いいのは、旅での経験を自分なりに表現でき、いろいろな街、国で感じたこと、味わったこと、楽しかったことを読者に伝えられること。吸収したことを還元できるという、達成感のある仕事ではないでしょうか。
■逆に今の仕事で大変なこと、嫌な点は?
うーん、プレッシャーかな。「50カ国を旅した」と言うと、たいていの人が「トラベルライターって天国だね」と言うんです。でも、仕事量やプレッシャーはかなりヘビー。締切はタイトだし、旅行といっても観光旅行とはまったく違います。長い移動時間かけてようやく現地に着き、1日中インタビューに追われても、ホテルで記事を書かなければならないこともあります。それが5つ星の豪華なホテルでも、のんびり過ごすなんてことはほとんどないのが現状!
締切以外にも、旅行中にはハプニングがつきものです。台湾では台風の中で仕事をしなければならなかったし、列車のストで立ち往生したこともありました。そうなると、準備していたプランを替えなければならないし、なんとしてでも帰りの飛行機には間に合わせなければいけないのでもう必死!
■ちなみに、今日のお昼ごはんは?
旅に出ていないときは、プレス向けのランチに行くこともあります。今日は航空会社主催のイベントがレストランであり、とてもおいしい海老のスパゲッティを食べました。
■日本人のイメージは? あるいは、理解し難いところなどありますか?
日本に行ったときは日本人と仕事をします。各県の観光局の方々が日本のプロモーションのために私たちメディアを招待してくれます。皆さんとても思いやりがあり、細かいことに気配りがあります。プレスツアーでは何から何まで決まっていて、交通も必要な情報もあらかじめきちんと整えられています。旅の間も何かと気を遣ってくれるのです。日本の方は本当に礼儀正しくて、車が見えなくなるまで手を振って見送ってくれるんですね。あるクルージングで日本のライターにお会いしましたが、私たちが早朝に帰ることを知り、見送るためだけに6時に起きてくれたこともありました。
一方で少し融通の利かないところもありますね。計画を途中で変更するのを嫌がり、ハプニングがあって計画を替えなければならないと困ってしまう。これはいい点にも、悪い点にもなる点です。柔軟で、ときには簡単に心変わりしてしまう香港人とはちょっと違いますね。
■最近、気になる日本のニュースはありましたか?
やはり3.11の津波です。日本人があの悲劇にどれだけ必死に向き合っているかが印象的です。3.11の半年後、六魂祭を見に仙台に行きました。津波の爪痕がいまだ残る仙台で、そこから立ち直っている日本人を見たときには本当に驚きました。
最近のニュースで一番、ワクワクするのが円安。ここ10年で一番の円安じゃないかな。香港からの旅行者も嬉しいと思いますし、僕もショッピングに行きたい!
■休日の過ごし方を教えてください。
毎月1~2回取材旅行にでかけるし、平日も仕事で忙しいので、週末はできるだけ家にいます。ときどき妻と映画に行き、近くのレストランで夕食をとったりすることもあります。
■将来の仕事や生活の展望は? すべてにベストを尽くしたら、あとは神様にゆだねています。深刻に考えず、とにかく楽しむこと! ですね。