大手ビジネスホテルチェーンが地方都市にまで展開している中、地方都市の独立系ホテルも大手へ対抗すべく更に充実の無料モーニングを展開する例も増えている。その傾向は地方によってバラつきがあるものの、北陸地方には注目すべき展開をしている独立系ホテルも少なくない。そこで今回、富山市の無料モーニングを体験してきた。

POPは分かりやすさと活気を演出(写真は「ホテルプライム富山」)

なお、この企画では、地元密着の独立系や小規模チェーンのビジネスホテル無料朝食にスポットを当てており、また、本文では別途料金が発生する「有料朝食」との対比で「無料朝食」と定義している。

食欲をそそるPOPにも好印象

富山駅前から路面電車通りに沿って、3分ほど歩いたところに位置する「ホテルプライム富山」。充実の無料朝食を提供する地元密着系ビジネスホテルだ。

スクランブルエッグやきんぴらごぼう、焼きそばなどの無料朝食スタンダードメニューが並ぶ中、大きく見やすい表示で"具沢山お味噌汁""湯豆腐"そして"朝カレー"と食欲がそそられる掲示がある。単に料理が並べられているのではなく、このような表示があったりすると、ただ分かりやすいのみならず"彩り"が感じられてちょっと楽しくなってくる。味はもちろんお墨付きだ。

「ホテルプライム富山」では料理の陳列が一目で分かる

富山らしくホタルイカの沖漬けも

大規模な全国チェーンではないが、独自のコンセプトで「ホテルクラウンヒルズ」を全国展開する「BBHホテルグループ」も注目のひとつ。ホテルプライム富山から路地を1本挟んだ、駅からほど近い場所に位置するのが「ホテルクラウンヒルズ富山」である。

整然と並んだ使い勝手が良さそうな食器が好印象。木の台に乗せられた大皿には、焼き魚やマカロニサラダ、漬物などが並べられている。台の色が濃茶なので色も映える。パンとトースターも使いやすいポジションで、無料朝食の要は導線でもあることがよく分かる。取材日にはホタルイカの沖漬けがあり、富山を感じる朝食となった。

「ホテルクラウンヒルズ富山」の朝食は見た目はシックな印象

心まで温かくおひつの米

最後に紹介したいのは、駅至近の立地である「コンセプトホテル和休」だ。コンセプトホテル、という名の通り、一般的なビジネスホテルにはない秀逸なコンセプトが特徴だ。エントランスで靴を脱いで入館する「和」のビジネスホテルで、客室も畳にマットレスというスタイルである。

ホテル全体の秀逸なコンセプトは朝食にも現れている。中心にいろりが位置する木のテーブルに丸太の椅子。まず注目するのがおひつだ。米のクオリティーもさることながら、おひつで供されるホカホカご飯は味わいもひとしお。

無料朝食の焼き魚といえば、薄く冷めて固いというイメージを持っていたが、こちらの焼き魚は身が厚くジューシー。また、提供される食器の種類が多いこともうれしい。朝食を様々にコーディネートできそうだ。

木の温もりを感じられる「コンセプトホテル和休」の朝食会場

おひつのご飯や料亭のような雰囲気のある焼き魚などこだわりが光る

さらにこのホテルでは、チェックイン時に朝食予定時刻を聞かれるが、その理由は夜のエレベーター内で判明する。朝食の各時間帯の予定人数が掲示され、可能な場合は時間を変更すれば混雑を避けることができるとのこと。ホテル側にも利用者にも優しい心遣い。無料朝食もまだまだ利用者目線を追求できる余地があることを実感した。

※記事中の情報は2014年12月取材時のもの

筆者プロフィール : 瀧澤 信秋(たきざわ のぶあき)

ホテル評論家、旅行作家。オールアバウト公式ホテルガイド、ホテル情報専門メディアホテラーズ編集長、日本旅行作家協会正会員。ホテル評論家として宿泊者・利用者の立場から徹底した現場取材によりホテルや旅館を評論し、ホテルや旅に関するエッセイなども多数発表。テレビやラジオへの出演や雑誌などへの寄稿・連載など多数手がけている。2014年は365日365泊、全て異なるホテルを利用するという企画も実践。著書に『365日365ホテル 上』(マガジンハウス)、『ホテルに騙されるな! プロが教える絶対失敗しない選び方』(光文社新書)などがある。

「ホテル評論家 瀧澤信秋 オフィシャルサイト」