2月1日、東京ビックサイトで開催された自主制作漫画誌の展示即売会「COMITIA(コミティア)111」にNVIDIAが展示ブースを出展した。同社のコミティア出展は今回が初となる。ブースでは8型Androidタブレット「SHIELDタブレット」の体験ブースや「SHIELDタブレット」を使ったモバイルペイントの実演を行った。

コミティアは、オリジナル作品に限定した自主制作物の即売会。東京では年に4回開催し、1回当たり約3,000~5,000の個人やサークルがブースを出展し、一般参加者を含めた総来場者は約15,000人から25,000人になるという。東京以外でも大阪、名古屋、新潟、北海道、福島の5都市でも年2回のペースで開催されている。

コミティア111は東京ビックサイトにて開催

「自主制作漫画誌の展示即売会」というように、メインの販売物は漫画やイラストだが、オリジナル作品であれば小説やゲーム、音楽、グッズの販売も可能となっている。

コミティアには「出張編集部」として、漫画雑誌をはじめとする編集部が原稿の持ち込みを受け付ける場も設けられている。最近では雑誌だけではなく、ケータイコミックの編集部やLINEマンガも持ち込み受付を行っている

会場には個人やサークルによるブースだけではなく、画材メーカーや印刷所といった企業もブースを出展している。NVIDIAもそうした1社としてブースを構え、来場者に「SHIELDタブレット」を紹介した。

NVIDIAのブース。NVIDIA テクニカルマーケティングエンジニア 矢戸知得氏(左)が「SHIELDタブレット」の紹介を行う。中央に座っているのが漫画家・イラストレーターのハマモト氏

「SHIELDタブレット」は、「ゲーム特化」の8型Androidタブレット。4+1コアのCortex-A15にKeplerアーキテクチャをベースとしたGPUを統合したモバイル向けSoC「NVIDIA Tegra K1」を採用する。KeplerベースのGPUにより、従来のTegraシリーズから処理能力が大きく向上。競合製品と比べても高いパフォーマンスを実現する。

「SHIELDタブレット」の概要。Kepler GPUの搭載により競合製品よりも高い性能を実現するという

また、入力インタフェースとして専用のワイヤレスコントローラ(別売り)と、独自の「DirectStylus 2」を用意している。DirectStylus 2は、パッシブ方式でもGPUの処理能力を使うことで、ペンタブレットで採用されるアクティブ方式のような機能を実現したスタイラス。細いペン先で高い精度の操作が可能なほか、筆圧の検知、指とスタイラスの区別、手のひら検知といった機能を備えている。

DirectStylusは、GPUの処理能力を生かしてパッシブ方式でもアクティブ方式のような機能を実現するスタイラス。「SHIELDタブレット」には第2世代となる「DirectStylus 2」を備える。国内で展開するAndroidタブレットで筆圧検知に対応したものはそう多くなく、貴重な存在といえる

会場でも「NVIDIA Tegra K1」が持つ高いパフォーマンスと、DirectStylusによって、タブレットでも快適に絵を描くことができると盛んにアピールする。

なぜ「コミティア」に?

「SHIELDタブレット」はこれまで、ゲーミングタブレットという位置付けから、ゲーマーに対する訴求が中心だった。それがなぜ、今回「コミティア」という場への出展となったのか。NVIDIAの担当者によると、「モバイル向けペイントアプリである"LayerPaint HD"がSHIELDタブレットに最適化されたこと」がきっかけとなったという。

2014年11月にLayerPaint HDがSHIELDタブレットに最適化することが発表された

LayerPaint HDはGoogle Playで配布されている。開発者の方によるとユーザーの4割が日本国内のユーザーで、あとは韓国や北米のユーザーが多いという

「LayerPaint HD」は、ピージーエヌが開発するAndroid向けのペイントアプリ。高品質なブラシエンジンに、多彩なレイヤー機能を備える。また、メモリの少ないモバイル端末でも高解像度データも扱える。

LayerPaint HDの特徴や機能の概要

会場で行われた「LayerPaint HD」のデモでは、ブラシ機能として直線や平行線、パースのきいた絵を描きやすくするスナップ機能が紹介された

ブラシ機能の紹介。ブラシの種類はある程度プリセットされているほか、自分で作ったりもできる

1ピクセル以下の細い部分も透明画像との組み合わせで表現可能

正確な直線も引ける。集中線などを描く時に便利だ

消失線もかける。パースのきいた絵も描きやすくなる

また、多彩なレイヤー機能を搭載する。乗算や加算、発光といったブレンドモードは10種類が利用可能なほか、クリッピング処理や透明度の保護のサポート、1bitや8bitのカラーレイヤーに対応する。このほか、高解像度データを編集するデモが行われた。

レイヤー機能の紹介。ちなみに右の絵を描いたイラストレーターの方は、「LayerPaint HD」を触って5~6時間ほどで描いてしまったという

6,000×8,500ピクセルのような高解像度のファイルも取り扱うことができる。例えば、自宅の環境で描いたデータを「SHIELDタブレット」で持ち歩いてチェックするといったこともできる

無料ペイントツール「FireAlpaca」との互換性もある

会場では「SHIELDタブレット」によるライブペイントも

さて、NVIDIAブースでの目玉は漫画家・イラストレーターのハマモト氏によるライブペインティング。会場ではハマモト氏があらかじめ用意した線画をベースに、「SHIELDタブレット」と「LayerPaint HD」を使った彩色の実演が行われた。

ハマモト氏によるライブペインティングの実演。ハマモト氏は第1回ジャンプSQ美大芸大キャラバンの最優秀賞受賞のほか、現在はソーシャルゲーム「ガールフレンド(仮)」のイラスト制作に参加するなど活躍中だ。ちなみにハマモト氏は「SHIELDタブレット」を使い始めて2週間程度だというが、かなりスムーズに作業を進めていた

「SHIELDタブレット」と「LayerPaint HD」を使って彩色していく。このファイル自体は3,072×2,048ピクセルの解像度

普段は13型の液晶タブレットとiMacで作業しているというハマモト氏。「SHIELDタブレット」の8型という大きさについて印象を聞いてみると、「普段の環境よりは狭いがそれほど問題に感じない」という。また、DirectStylus 2については、「ペン先の形状に慣れるまで時間がかかったが、かなり精度が高く書き味も普段の環境と遜色ない」とコメント。その言葉通り、実演では「SHIELDタブレット」を使って巧に色を乗せていく様子が見て取れた。

色が重ねられて陰影がついていく

作業が進められていく中で、「SHIELDタブレット」ならではという利点を発見した。それは専用のワイヤレスコントローラの存在だ。デジタルで絵を描く人にはおなじみかもしれないが、「Undo」をはじめとするよく使う機能をキーボードのショートカットに割り当てて操作するケースがほとんどだ。自分が使いやすいようにカスタマイズしているという人も多いのではないだろうか。

ハマモト氏の左手にあるコントローラでショートカットの操作をしている。なお、Undoはトリガーキー、ズームはアナログパッドといった具合に設定されているという

ハマモト氏による実演では、「SHIELDタブレット」に搭載されたキーマッピング機能「Gamepad mapper」を利用し、ワイヤレスコントローラにショートカットを設定。キーボード代わりに活用していた。ハマモト氏によると「キーボードでは(CTRL+Zなどのように)複数キーを押す必要がある機能があるが、ワイヤレスコントローラではGamepad mapperによる設定で1つのキーを押せばいいようになっているので、使いやすい」とのことだった。

コミティア111中で4回紹介セッションが行われたが、各回でかなりの人数が集まり、大盛況の様子だった。また、紹介ブース内の体験スペースでは、4台用意された「SHIELDタブレット」がフル回転するなど注目度の高さがうかがえたイベントとなった。