そうした中で、2015年のETロボコンが掲げるテーマは、「変化に対応する」であることが発表された。つまり、変化に対応するような競技にするということと、さまざまな変化に対応できるような開発を参加チームに求めるということである。要は、それに応じた内容の難所をデベロッパー部門のアドバンストクラスに用意していこうというわけだ。

ETロボコンは「5年後、15年後に世界をリードするエンジニアを育てる」という目標を掲げている。ちなみに5年後に活躍し始めるエンジニアとは、現在20代前半から半ば、入社間もない頃から数年という若手がターゲットで、5年後に30前後となって主力として活躍するだろうという年代である。また、そんな現在の若手が15年ごということになれば、さらに40前後ということで、エンジニアを取りまとめるポジションになっている人も多いはずで、新たなビジネスを作り出せるようなエンジニアを育てたい、育てていけるような環境を提供したい、という狙いもある。

また15年後に活躍してほしい世代としては、ETロボコンのルール上の最年少である高校生を筆頭に、高専生、大学生、専門学校生などの学生たちも対象だ(画像6)。高校生も15年後には30を過ぎており、エンジニアの道を歩んでいれば主力となっているであろう年代だし、大学院生なら40前後というわけで取りまとめるポジションになっているはずだ。そうした年代に取っても学ぶべきものが多い大会にしたいというのが、2015年のETロボコンというわけだ。

画像6。2014年CS大会のアーキテクト部門は10チーム中半分が学生チームで、中には高校生チームも

この2年間の改革で2部門3クラスとなったことで一段落し、2015年は部門やクラスが増えるといった大きな変更はない。ただし、いくつかの変更・改善点がある。まず部門名に関してだが、より対象となるエンジニアを明確にすることを目的として、内容の変更はないが、従来のアーキテクト部門の名称を「イノベーター部門」に変更することとなった。これは、アーキテクトという単語が持つイメージが幅広く、より「こと作り」的な「生み出す」というイメージを持たせるため、またイノベーションを起こせるようなエンジニアを育てるという意味での変更である。

ちなみにイノベーター部門とはデベロッパー部門の卒業者や中級・上級エンジニアを対象としており、新たなサービスやビジネスそのものを創出するなど、次世代のアーキテクト育成を目指したチャレンジ機会を提供するという内容だ。参加チーム自らが製品やサービスを企画し、さらにテーマや課題を設定。事前に企画内容を提出して内容自体と実現性の審査を200点満点で受けた後、大会当日に競技審査ということで会場にいる100名の一般・特別審査員の前でパフォーマンスを披露。そして200点満点で評価してもらい、合計400点満点で順位を競うという内容だ(詳しくは過去の大会リポート記事をお読みいただきたい)。

この名称変更に加えて、同部門に関しては審査方法も若干変更となった。企画のプレゼンテーション力も競技審査の対象に加えられたのだ。具体的には、A4縦サイズ1枚にまとめたプレゼン資料を全会場審査員に配布し、企画内容のプレゼンを実施するのである。要は、ビジネス寄りになったということだ。

これまでも、走行体や大道具小道具の設置などの準備時間中にパフォーマンス内容をモニターで説明するプレゼンの時間はあったし、競技中もMC担当のメンバーが解説を行うことは可能だったが、今後はそれだけではなく、まずは資料を配付してそのプレゼンを行い、その後に実際にパフォーマンスでそのプレゼンの通りかどうかを披露し、会場で審査を受けるという形となる。

これまでの2回では、パフォーマンスによって審査員を笑わせたり、驚かすことができたりすれば競技審査の得点は伸びる傾向だったのだが、それだどサービスを生み出したり、ビジネスそのものを創出するというアーキテクト部門の狙いに必ずしも合致しないため、より「こういうサービスがあったらいいな」というのを披露する形になるというわけだ。

もちろん、見た目の面白さも必要なのだが、学生チームはそれが優先されてしまって、さらにはそれのみ、となってしまっているケースも多い。まずは、どんな製品やサービスを企画しており、そしてテーマや課題などを設けているのかということを、会場の審査員を顧客に見立ててそれを訴求するつもりで、きちんと披露することがポイントとなるのである。その上で、その披露の仕方が面白い、笑いがあるというのがベストというわけだ。確実に難易度が高くなったといえるので、少々学生チームは大変かも知れないが、そこを越えて未来の可能性を感じさせるようなパフォーマンスを披露してほしい。

また細かいところに関しては、これまでは走行体がまずプライマリークラスのコースを走ってゴールの先にあるパフォーマンスエリアまで到達した後に、パフォーマンス開始となっていたが、今回からは最初からパフォーマンスエリアでスタートする形に変更されている。