結婚する前は控え目でおとなしく、大和撫子タイプの彼女。それが結婚すると、夫を自分の意に従わせて、おもうままに振る舞うような女性に豹変……。そんな話を、既婚男性から聞くことは珍しくありません。なぜ、女性は結婚すると次第に強くなっていくのでしょうか。
「繁殖」がキーワードに
確かに、結婚すると女性は変わるとよく言われます。女性だけではなく、男性だって大なり小なり変わるでしょう。ですが、その変わり様は、男性よりも女性のほうが大きい印象があるのでしょう。その理由は、男女の性の違いにあるかもしれません。
人はなぜ恋をするのか。それは、繁殖の目的を達成させるため、というのが進化心理学的にはいわれます。つまり、誰かと一緒にいたい、その人の子どもが欲しい、大好きな人の子どもだからがんばって育て上げたい。このように、恋愛にまつわる気持ちは、繁殖と密接に結びついていると言います。そして、女性は結婚すると次第に強くなっていくというのも、この繁殖という点から説明できるとおもいます。
女性は、初潮から閉経までの期間が決まっています。つまり、繁殖期間に制限があるわけです。そして妊娠中は新たに妊娠できません。当然ですよね。つまり、出産回数には限度があるのです。といっても、産後すぐの妊娠を繰り返すことは、身体へのダメージ、子育ての充実といった観点から現実的ではありません。また、様々な人の子を次々に妊娠することも難しいです。
ですから、「本当にこの人と繁殖して子孫を残してもいいのだろうか」という判断が冷静です。そこが、いわゆる「すぐにベッドに行きたがる男性とそうではない女性」という構図を生み出します。
男性の場合、自分が妊娠するわけではないですから、より多くの子孫を残したいと「質より量」を考えるわけです。反対に、女性はその機会に限度があるわけですから質を優先しますよね。なので女性は、冷静に繁殖のパートナーを見極めます。そして、妊娠・出産するのですが、当然その間の面倒はパートナーにみてもらいたいわけです。もし、パートナーが浮気ばかりするような人なら、自分自身や子どもを守ってくれませんよね。そこで、自分のパートナーが、別の女性に気をもたないように束縛が激しくなったりするわけなのです。
つまり、女性が結婚後に強くなったというのは、図太くなったわけではなく、自分や子どもを守る存在、つまり夫がどこにも行かないでほしいという思いのあらわれなのではないでしょうか。だからこそ、自分の意に従わせて、おもうままに振る舞うような行動をしてしまうのだと思います。もし、あなたが既婚男性で、結婚後に妻が変わったという思うなら、「あなただけ愛しているから、いつもそばにいるよ」という気持ちをちゃんと伝えれば、いい方向に変わっていくかもしれませんよ。
※画像は本文と関係ありません。
著者プロフィール
平松隆円
化粧心理学者 / 大学教員
1980年滋賀県生まれ。2008年世界でも類をみない化粧研究で博士(教育学)の学位を取得。京都大学研究員、国際日本文化研究センター講師、チュラロンコーン大学講師などを歴任。専門は、化粧心理学や化粧文化論など。魅力や男女の恋ゴコロに関する心理に詳しい。
現在は、生活の拠点をバンコクに移し、日本と往復しながら、大学の講義のみならず、テレビ、雑誌、講演会などの仕事を行う。主著は「化粧にみる日本文化」「黒髪と美女の日本史」(共に水曜社)など。