例えば結婚生活の中で、妻が夫に向かって「あの時、アナタはこういった! 」と10年、20年前のことを言うというシーン、よくありませんか。昔のことを昨日のことのように鮮明に覚えている妻を見て、夫は「よくそんな昔のことを……」という感じです。なぜ女性は、こういった細かいことをよく覚えているのでしょうか。

研究でも明らかになった事実とは

よくそんな昔のことを…とゾッとした男性はいませんか?

アメリカのコーネル大学の研究によれば、実際に男性より女性の記憶力が高いということがわかっています。その研究では、60名の大学生に対して1週間不規則な時間にメール送信し、そのメールを受け取った30分前に何をしていたかを返信させるという実験が行われました。そしてさらに1週間後、自分がメールに書いた内容を思い出してもらうというテストを実施しました。

その結果、男性より女性のほうが詳細に記憶をとどめているということがわかったのです。ですが残念ながら、男女で記憶力に差が出た理由については明らかになっていません。

ただ、これにははるか昔からの男女におけるコミュニケーションの違いが影響しているのではないかと思うのです。というのも、人がまだ狩猟の生活を送っていた頃、男性は狩りに出掛け、女性は家や村で残っている他の女性と1日の大半を過ごす。つまり、男性は1人で過ごす時間が長く、女性は大勢の人たちと過ごす時間のほうが長いわけです。

共同で生活をするということは、周囲の人々との争いごとを避けなければいけません。勘違いから、言った言わない、したしてないという争いに発展することはよくあります。つまり、お互いにしっかり記憶をしていれば、不要な争いをする必要がなくなるわけです。 女性が細かいことまで覚えているのは、女性がはるか昔から無用な争いを避けようとしてきたことが影響しているのではないでしょうか。ただ、現代においては男性が細かいことまで覚えていないために、細かいことまで記憶している女性との間で、本来避けようとするはずだった、言った言わない、したしてないという争いを引き起こしてしまっているのだと思います。女性は細かい、男性はおおざっぱと一言で片付けるのではなく、男性もなぜ女性が細かいことまで覚えるようになったのかということを知れば、相手を理解する新たなきっかけになると思います。

※画像は本文と関係ありません。

著者プロフィール

平松隆円
化粧心理学者 / 大学教員
1980年滋賀県生まれ。2008年世界でも類をみない化粧研究で博士(教育学)の学位を取得。京都大学研究員、国際日本文化研究センター講師、チュラロンコーン大学講師などを歴任。専門は、化粧心理学や化粧文化論など。魅力や男女の恋ゴコロに関する心理に詳しい。
現在は、生活の拠点をバンコクに移し、日本と往復しながら、大学の講義のみならず、テレビ、雑誌、講演会などの仕事を行う。主著は「化粧にみる日本文化」「黒髪と美女の日本史」(共に水曜社)など。