人気フレッシュハンドメイドコスメブランド「LUSH」。その日本法人であるラッシュジャパンは、独自の方法を取り入れたことで、社員の残業時間を大幅に削減することができたのだという。その方法とは一体何なのか。ヒントはある社員のデスクに隠されていた。

お気づきだろうか?

勘の良い人は、一瞬で気づいたかもしれない。そう、写真中央のピンクの髪の女性だ。(ちょっと怖い)このアイテムは一体…? 首をかしげていると、デスクの主が戻ってきた。何事もなかったかのように席につき、仕事を始める同社社員。

ものすごい目力の女性。めちゃくちゃ見られている! 机にあると視線が気になって集中できなくなりそうなものだが、気にせず書類をチェックする社員さん。彼女は「NO! 残業」と言っているので、恐らく残業対策グッズなのだろうが、これは一体…?

めちゃくちゃ見られてます!

掛け声は「GO HOME!」

気になるこのアイテムの使い道を、デスクの主で、ブランドコミュニケーション ブランドマネージャー 土田晃之さんに聞いてみた。

土田さん「お察しの通り、これは残業対策グッズです。19時間際になったら、これを持って『GO HOME! GO HOME!(家に帰りましょう!)』と言いながらオフィスを練り歩くんです。ちなみにこの人はラッシュジャパン 代表のロウィーナ・バードです」

代表の顔パネルという忘年会などで出てきそうなこのアイテム。微妙にクオリティが高いのは、「フレッシュハンドメイドブランドだから、こういうハンドメイドは得意なんです」(土田さん)とのこと。それはさておき、パネルの効果のほどは?

土田さん「それが、効果抜群なんです。18時に第1弾がスタートし、終業時間を伝えて回ります。19時を過ぎると、皆が帰るように『7 O'CLOCK! GO HOME!(7時ですよ! 家に帰りましょう!)』と声を掛けながら歩きまわるんですが、この取り組みを始めてから19時以降に残業する人がかなり減りました。残業している人はパネルと目が合うと『そろそろ帰らないとまずい』と目をそらすことも(笑)。社員の意識は大きく変わりましたね」

効果抜群の残業対策アイテムを持つ土田さん

この取り組みで、残業をする人が減ったという土田さん。どうしてこのような残業対策をするようになったのだろうか。

土田さん「以前はラッシュジャパンでも、かなり多くの社員が残業をしていました。しかしながら『ライフワークバランス』、特に家族や友人、パートナーとゆっくりと時間を過ごすことで、仕事のパフォーマンスやクオリティは上がるのでは?と考えたのです。そこで、2014年末よりこのパネルを作って残業対策をスタートさせました」

ライフワークバランスの重要性が再認識されている現在。社員の残業を減らし、仕事にメリハリを付けようと積極的に取り組んでいる企業も多い。同社も家族や友人と過ごすことを重要視しているのだが、残業をしないことにはもうひとつ大きな意味があるのだそう。

土田さん「仕事終わりに街に出て、買い物や遊びを楽しむことも重要です。メーカーとしては、商品を買ってくださるお客様の気持ちを体験することも欠かせませんから。デスクワークだけをして家に帰る繰り返しだけではなく、外に出ることが大切だと考えています」

成功の秘訣は?

ラッシュジャパンは、「代表の顔パネルを持ってオフィスを練り歩く」というユニークな取り組みで残業削減に成功した。顔パネルは、会社が「残業対策に取り組んでいる」ということを社員に明確にアピールするアイコンになったためである。

ノー残業の成功の秘訣は?

一方で、残業対策をしている会社の中には「始めは積極的に取り組んでいたが、次第になあなあになってしまった」という失敗例も見受けられる。このような問題を解決するにはどうしたら良いのか。そのポイントを聞いてみた。

土田さん「大切なのは、『チームの各リーダーが率先して実施すること』ではないでしょうか。終業時間が来ると、率先してパネルを持って練り歩くマネージャーもいます。チームの各リーダーが積極的に声を掛けて動くことで、皆が帰るようになりました」

確かに、部下というのは上司よりも先には帰りづらいもの。だからこそ、同社は、上司が先導して残業をしないように促すことで、部下も帰りやすい空気を作り出しているのだ。また、声掛けを継続することで、「残業をしないで帰ろう」という意識が根付く。そして残業せずに帰るために、仕事の効率を上げるよう工夫し努力するようになったのである。

ラッシュジャパンの成功例は、社長の顔をパネルにするというユーモアの受け入れられる環境だからこそ実現したものかもしれない。しかしながら、同社の取り組みには、残業を減らすために参考にできそうなヒントがたくさん潜んでいる。残業に取り組んでいる企業ややってはいるがうまくいかないという企業は、独自色を生かして挑戦してみてはいかがだろうか。