それでは、インとアウトおよびそれらを足したトータルのゴールまでの走行タイム(難所で得たボーナスタイムは計算しない)のベスト5を紹介しよう。タイム、チーム名、所属、地区の順で紹介しているが、2度以上登場するチームの所属、地区は省略させていただいたのでご容赦願いたい。

走行タイム

インコース

  • 1位:17.7秒 いずみん(MHIエアロスペースシステムズ/東京)
  • 2位:20.8秒 TYM(金沢工業大学 夢考房/北陸)
  • 3位:22.6秒 EG-PG.Racing(日立オートモティブシステムズ 群馬事業所/北関東)
  • 4位:23.7秒 Team HARUYAMA(横河電機/東京)
  • 5位:23.9秒 HORIZ-ONE(日立製作所 ITプラットフォーム事業本部/南関東)

アウトコース

  • 1位:18.0秒 いずみん
  • 2位:22.5秒 TYM
  • 3位:23.5秒 Team HARUYAMA
  • 4位:24.1秒 HORIZ-ONE
  • 5位:25.4秒 ひよっこむ(アイシン・コムクルーズ(株) 品質部/東海)

トータル(イン+アウト)

  • 1位:35.7秒 いずみん
  • 2位:43.3秒 TYM
  • 3位:47.2秒 Team HARUYAMA
  • 4位:48.0秒 HORIZ-ONE
  • 5位:50.5秒 Team JISC(ジスクソフト/東京)

いずみんはインもアウトも唯一10秒台を出しており、トータルでも30秒台半ばと、初心者エンジニアによるチームとは思えないぶっちぎりである。これは、同チームのNXTWay(走行体)の最高速が高いことも理由の1つだが、レーンチェンジを行って、最速のアウトインアウトのラインを通っていることも理由の1つだ。要は、例えば第1走時にいずみんはインコースだったのだが、同じインコースでも右コーナーの時(S字の中に1つだけある)はコーナーのインとアウトが逆転して外側のラインになるわけで、本来のラインに沿って走るとそれだけ大回りになってしまう。それを本来はアウトコースである内側のラインにレーンチェンジして最短距離を走行しているというわけである(画像3~5)。

画像3(左):いずみんが1コーナーを抜けた直後。まだインのライン上にいる。画像4(中):S字(1コーナーからの3連続ヘアピンとした方が正しいかも知れない)の中間にある第2コーナーでは、本来はアウトのライン上で抜けていく。画像5(右):そして第3コーナーにアプローチする時点では再びレーンチェンジを行い、きっちりとインを回ってゴール

ちなみにいずみんのアウトコースの時のライン取りも実に渋い。1コーナーのアウトのところで(Team HARUYAMAも速いので、結構近くにいたから少し接触しそうではあったが)、一度インのラインの方に振って、よりアウトからのライン取りで第2コーナーにアプローチし(いわゆる逆ハンというやつで、その方がゆるやかなラインを取れて高い速度で旋回しやすい)、抜けた後も第3コーナーでインにつけるべく最短距離でレーンチェンジ。さらにゴールまでにはアウト側のレーンにチェンジし、Team HARUYAMAの走行を決して妨害をすることもなく、その後の難所のルックアップゲート(LUG)できっちりダブルを決めたというわけだ(画像6~9)。

画像6(左):少し隠れてしまってわかりにくいのだが、いずみん(黄色のゼッケン14)はインのラインに向かっており、インとアウトのトレースラインの間ぐらいに位置している。2014年CS大会のレイアウトはS字セクションのRがきつくて3連続ヘアピンに近いので、コース幅をできるだけ広く使うようにしたというわけだ。画像7(右):第2コーナーを抜けると、早くも3コーナーへのアプローチのためにレーンチェンジを開始する。右車輪だけがアウトのライン上なので、某走り屋マンガの溝落とし走法みたいだ

画像8(左):いずみんはレーンチェンジは行うが、コーナーのエイペックス(頂点)付近でギリギリのインを攻めるというわけではない。実は、インを攻めすぎると、中間ゲートのポールに引っかかったりする危険性もあり(実際に引っかかっていたチームもあった)、その危険性を考慮したのかも知れないし、速度的にそこまでインをデッドに攻めるのは難しいのかも知れない。画像9(右):ゴール前にはレーンチェンジしており、間違えてフィギュアLに挑むこともなく、きっちりLUGダブル。この後のガレージインも決めている

なお、相手チームのNXTWayの走行を妨害さえしなければ、どこをどう走ってゴールに向かうかは自由なので(コース外を抜けてスタートからゴールまでまっすぐ向かうのは、障害物による転倒の危険性と中間ゲートのボーナスを得られないことから、どれだけ直線距離的に短くても実施するチームは今のところいない)、インコースの場合、スタートラインが前方に設定されているアウトコースの相手チームのNXTWayを追い抜ける自信があるのなら、レーンチェンジはタイム短縮の効果的な戦略というわけだ。ここ数年、レーンチェンジやショートカット(2014年CS大会はコースのレイアウト上、メリットがないからと思われるが、見られなかった)などが好タイムを出すには必須となっており、いずみんはレーンチェンジで頭1つ抜けたタイムを出してきたというわけだ。

続いては、ボーナスタイムを加えたリザルトタイムのベスト5だ。いうまでもないが、ただ速いだけではダメで、2013年CS大会までとは比べて難所が少なくなってはいるが、それを確実にクリアできなければ結果が出ないのはいうまでもない。

リザルトタイム

インコース

  • 1位:-27.3秒 いずみん
  • 2位:-21.3秒 Team HARUYAMA
  • 3位:-21.1秒 HORIZ-ONE
  • 4位:-20.0秒 Team JISC
  • 5位:-19.5秒 FUNrobo2(公立はこだて未来大学/北海道)

アウトコース

  • 1位:-27.0秒 いずみん
  • 2位:-21.5秒 Team HARUYAMA
  • 3位:-20.9秒 HORIZ-ONE
  • 4位:-19.6秒 ひよっこむ
  • 5位:-19.5秒 Team JISC

いずみんのインとアウトのリザルトタイムは、CS大会、地区大会合わせて全国でトップタイムを記録。頭1つ抜けたタイムだった。そして以下は、リモートスタートの採用率、ゴールの成功率、各難所の成功率などだ。

ゴール・難所成功率

リモートスタート採用率(全15チーム)

  • イン:15チーム(100%)
  • アウト:14チーム(93.3%)

ゴール成功率(全15チーム)

  • イン:15チーム(100%)
  • アウト:11チーム(73.3%)

フィギュアL成功率(イン)

  • ノンスピン:0チーム(全体で0%、ゴールした15チーム中では0%)
  • スピン:11チーム(全体で73.3%、ゴールした15チーム中では73.3%)
  • 合計:11チーム(全体で73.3%、ゴールした15チーム中では73.3%)

ルックアップゲート成功率(アウト)

  • シングル:2チーム(全体で13.3%、ゴールした11チーム中では18.1%)
  • ダブル:7チーム(全体で46.7%、ゴールした11チーム中では63.6%)
  • 合計:9チーム(全体で60%、ゴールした11チーム中では81.8%)

ガレージ停止成功率

  • イン:6チーム(全体で40%、FLに成功した11チーム中では54.5%)
  • アウト:6チーム(全体で40%、LUGに成功した9チーム中では66.7%)

なお、2013年CS大会までは競技部門とモデル部門の両方が発表されていたが、2014年CS大会からAクラスが設けられたので、Pクラスのモデル部門は表彰されない形となり、競技結果=総合結果となった。リザルトで1位のいずみんの総合優勝である。

競技部門(総合)(リザルトタイムのインとアウトの合計)

  • 優勝:-54.3秒 いずみん(画像10)
  • 準優勝:-42.8秒 Team HARUYAMA(画像11・12)
  • 3位:-42.0秒 HORIZ-ONE(画像13・14)
  • -- -- -- -- -- -- -- -- -- -- -- --
  • 4位:-39.5秒 Team JISC
  • 5位:-38.3秒 ひよっこむ
  • 6位:-30.7秒 チームCIC2014
  • 7位:-26.7秒 TYM
  • 8位:-19.6秒 EED
  • 9位:-10.0秒 壺川モーターズ
  • 10位:0.8秒 ノースドラゴン

画像10。優勝したいずみんのメンバー。男の子はチームのマスコットで、リーダーのお子さん。チーム名もこの子の名前に由来しているそうである

画像11(左):Team HARUYAMAの第2走のフィニッシュ。きっちりガレージインも決めた。地区大会の結果で成績のいいチームほど出走順が遅くなるので、いずみんと共に最終出走となり、その期待に応えて準優勝を果たした。画像12(右):Team HARUYAMAのメンバー。チーム名の由来は、メンバーの多数が住んでいるという社員寮の春山寮にちなんでいるとのこと。ETロボコンは、研修の一環として活用されているそうである

画像13(左):南関東を代表して闘ったHORIZ-ONEのメンバー。日立系の参加チームは実に多く、CS大会のPクラスだけでも3チームで、Aクラスにも2チーム。ETロボコンの一大派閥である。画像14(右):HORIZ-ONEのメンバー。ちなみにチーム名は「ホライズン」と読む。横浜、小田原、川崎と3拠点にまたがる7人のメンバーが、拠点を越えて横のつながりを強めて1つのチームになり、1番を目指すという想いが込められているそうである