2015シーズンのF1(FIAフォーミュラ・ワン世界選手権)開幕を約1カ月後に控え、本田技研工業(ホンダ)が記者発表会を行った。会場となった東京・青山のホンダ本社に新型マシン、マクラーレン・ホンダ「MP4-30」が展示され、ドライバーのフェルナンド・アロンソ選手、ジェンソン・バトン選手も出席した。
英国マクラーレンとのジョイントプロジェクトの下、パワーユニットサプライヤーとして今シーズンからF1に復帰するホンダ。1988年から4年連続でドライバーとコンストラクターのダブルタイトルを獲得した栄光のマクラーレン・ホンダは、再び黄金時代を築くことができるのか? 今季開幕を前に行われた記者発表会には、ドライバーのほか、ホンダとマクラーレンの両首脳も参加し、新型マシン「MP4-30」をバックにその意気込みが語られた。
本田技研工業代表取締役社長執行役員、伊東孝紳氏は、「四輪最高峰レースであるF1に、新しく環境技術が導入され、ホンダにとって真価を発揮するチャンスがやって来ました。F1という極限の世界で培われた技術や人材を通じ、ホンダはイノベーションを起こしたい。そしてさらなる高次元をめざし、勝ち続けることでホンダへの期待に応えたい」と、今回のF1復帰の意義について説明した。最前線で戦うために突き詰めていくエネルギーマネジメント技術を、将来的には市販車へ反映していきたい、という文脈だろう。
かつてのマクラーレン・ホンダ黄金時代のチーム監督で、現在はマクラーレン・テクノロジー・グループCEOのロン・デニス氏は、「今シーズン、マクラーレンとホンダがともに直面しているチャレンジは大きなもの。競合チームは1年先を行っているし、レギュレーションはかつてないほど複雑です」とコメントした。
昨シーズンからエンジンの規定が大幅に変わったことで、実戦の場で開発と熟成を進めているライバルと争うことの難しさを前置きした上で、ロン・デニス氏は、「私たちは必ず成功します。F1の歴史で、ホンダはいつも成功してきました。1980年代のホンダとマクラーレンのパートナーシップを再現したいと思っています。まず、1勝をあげるところからスタートしたい」と抱負を述べた。
ところで、2月初旬にはスペインのヘレスサーキットにて、公式のF1合同テストが行われたが、「MP4-30」はトラブルを抱え、満足に走れなかったと伝えられている。今季、フェラーリから移籍したワールドチャンピオンのフェルナンド・アロンソ選手は、テストを振り返り、「なかなかチャレンジング。このプロジェクトで成功を収めるのは大変だけど、ホンダファミリーの一員となれたことにエキサイトしています」とコメントした。
同じくワールドチャンピオンで、かつて(B・A・R)ホンダに、また2010年からマクラーレンに在籍しているジェンソン・バトン選手は、「テストというのは改善のためのもの。最初のテストはまさにそういう場でした。車体とエンジンのパッケージがめざす方向性において、改善点も見つかったと思います。今後のテストでさらなる改善を図り、準備万端で開幕戦に臨み、最良の結果を出したい」と語り、「タノシミデス」と日本語で付け加えた。
本田技術研究所のF1プロジェクト総責任者、新井康久氏はテストでのトラブルに関して、「ひとつは熱害。タイトなパッケージなので、冷却系の問題は予想されていました。もうひとつはERS(エネルギー回生システム)の冷却系の問題。熱害ではなく、熱のマネージメントをどうするかという過程で問題が起き、安全を取ってクルマを止めました。原因はもう把握していて、さくら研究所(栃木)で現在エンジンを作り上げているところです」と述べた。
この日、ホンダ本社前には歴代のF1マシンが勢ぞろい。1965年にメキシコGPで初優勝したホンダワークスのRA272、黄金時代のマクラーレン・ホンダMP4/4から4/7、2006年にバトン選手が初優勝を果たしたホンダワークスRA106、そして昨年、ホンダのパワーユニットを載せてアブダビテストを走ったマクラーレンMP4-29H/1X1がずらりと並んだ。
これらのマシンを前に、多くの人々が足を止め、間近で見られるF1マシンに興奮し、写真も撮るなど大にぎわい。チーム、ドライバー、スポンサーともに、F1から日本の存在感が薄れて久しく、国内での人気も陰りを見せていたが、一瞬にして大勢の興味を引き付ける華やかさは昔も今も変わらない。6シーズンぶりのホンダのF1復帰に、期待が高まった。