経済協力開発機構(以下、OECD)はこのほど、多国籍企業による税源浸食および利益移転(BEPS)に関するG20との共同プロジェクトの最新状況を発表した。多国籍企業の課税逃れを防ぐため、2016年1月以降、一定規模以上の企業グループに対し、国別の収益などの情報を親会社の本籍がある国の税務当局に報告するよう義務付けることを求めていく。
OECD・G20諸国は、BEPSプロジェクトを実現するため、「租税条約に関連するBEPS対応策の実施を効率的に行うための多国間協定に関する交渉を開始するマンデート」などの3点について合意。同プロジェクトは、各国政府が課税ベースを守ることを可能にすること、ならびに納税者に一層の確実性と予測可能性をもたらすことを目的としている。同時に、新たな国内法の整備が、二重課税や過度のコンプライアンス負担、合法的な越境取引の障害を生じさせないことを狙うという。
課税逃れ防止策の対象は、年間収益7億5,000万ユーロ(日本円:約1,000億円)以上の多国籍企業。企業から税務当局に対して収益、利益、税額(発生額、支払額ベース)、主な経済活動に関する情報の提供を求める国別報告書テンプレートの利用をはじめ、移転価格文書化基準の改善を通じた透明性の向上を図る。各税務当局は、2017年に最初の国別報告書の交換を開始する予定。