入店早々……なぜかマジック!

少し狭い路地の中にあるのだが、この大きな看板で見つけることは容易だ

東京都品川区の大井町駅から徒歩3分、世の中の食いしん坊たちを大満足させてきた洋食屋があると聞きつけ取材班が直ちに出動!! 大井東口商店街から一本路地に入ると、頭上にご立派な看板を発見。その名も「ブルドック」。鼻息荒く突撃だっ。

「いらっしゃい! じゃあ、さっそくコレ一枚引いて? 」。

トランプの束を筆者の前へおもむろに差し出す店主の鈴木謙さん。む、むむ!? コ、コレは同店の通過儀礼なのか?? しかし、引くしか選択肢はなさそうだ。

「数字覚えた? じゃあ、いくよ……ッホイ! 」。

せ、正解! すっげーー!! ってなんだコレ。鈴木さん、マジックじゃなくて、今日はオムライスとメンチカツを食べに来たんですけど。

「ハハハ! 冗談だよ。僕は学生のときに安くて旨くてデカいメンチカツを食べて幸せを感じてね、自身が大きなメンチカツを提供しているのはその影響もあるかな。ま、食べてごらん」。

一番手前の赤スカーフを巻く人物が店主の鈴木謙さん。勢いよく話していてもカメラを向けると少し照れる一面がチャーミング。料理だけではなく、マジックの腕も一流

店内には常にお客さんがいる人気店。1階約20席、2階は約20席

「ブルドック」の創業は1949年頃。先代店主のお父様から鈴木さんが引き継いだそうだ。なぜ、こんなユーモア溢れる人物がコック帽子をかぶるに至ったのかが気になる。「若い頃"プログレ"ってジャンルの音楽をやっててね、同時に絵画や舞台、映画も大好きだったんだ。ところでさ、ブライアン・デ・パルマ監督の『ファントム・オブ・パラダイス』って映画見たことある? あれが大好きでさー。それとねー……」。

以降約40分間、鈴木さんの芸術トークが繰り広げられるとは筆者は知らなかった……。つまり、結局色々やってみてコックに落ち着いたそうです……。

わらじばりにデカいメンチカツ、絶品デミソースのオムライス!

なぜかアートのお勉強をガッツリしたわけですが、ようやく本筋の実食タイムに入ります。

「あいよっ! 黒澤明もビックリなメンチカツとオムライスお待たせ!! 」。

「オムライス」(900円)。横のiPhoneと比べるとデカさが一目瞭然

甘めの特製ソースがかかった「メンチカツ」(770円)。見よ、この芸術的なデカさ! メンチカツの下にはナポリタンとキャベツの千切りが隠れているぞ

黒澤明が口にしたかどうかは不明だが、これはマジでデカい。通称"わらじメンチ"の異名は伊達じゃない。そして、存在感的には全く引けを取らない円盤型でこんもり盛りに盛られたオムライス。その二つが相まみえると、"阿形"と"吽形"よろしく、まるで金剛力士像のようなド迫力。ケチャップ文字で書かれた「福」の字が鈴木さんの人間性を物語っているゾ!

2つの料理が揃うと、その圧巻のいでたちから思わず生唾を飲んでしまった

そして、一口食べてみる。衣はサクサクと言うかザックザク! その後に追っかけてくるメンチカツの肉汁は口内で噴水状態!! 大口で食べても一切れ三口はかかる贅沢感が印象的だ。そして、あえて口の中にメンチカツが若干残ってる状況でオムライスをパクリ!

少し箸でつまんだだけで肉汁がしたたるほど出てくる。食欲を押さえ切れない

うん、こっちも美味ぃー! ケチャップライスを頰張るとほんのりバターの香りが。具の鶏肉とマッシュルームも大きくて食べ応え十分。甘辛のデミグラスソースがサイドにかかっているので、ケチャップとの味の違いを楽しめる。

しかし、食べても食べてもまーだまだオムライスはなくならない。しかし、メンチカツの肉汁と戯れるケチャップライスもこれまた最高。まさに圧倒的至福!

「僕の店で大切にしていることは、"記憶に残る料理"ということなんだ。色んな人が食べに来るけど、この味はなかなか忘れられないでしょ? 」。

猛烈なボリュームと幸せに包まれる料理を提供してくれる「ブルドック」に感謝。そう、食は爆発なのだ!

(文・A4studio東賢志)