国土交通省はこのほど、JR九州完全民営化に向けた課題や対応などをまとめたレポートを公表し、2016年度中の完全民営化をめざすべきとの見方を示した。
このレポートは、鉄道局長をはじめとする関係者で構成する「JR九州完全民営化プロジェクトチーム」が、関係者からのヒアリングなどをもとに検討し、まとめたもの。国鉄分割・民営化によって誕生したJR7社のうち、JR東日本・JR東海・JR西日本の本州3社はすでに完全民営化したが、JR九州はJR北海道・JR四国とともに鉄道・運輸機構が株式を100%保有する特殊会社で、完全民営化されていない。
今回公表されたレポートでは、九州新幹線や「ななつ星 in 九州」など観光列車の運行、不動産・流通・外食・ホテルをはじめ各種事業展開を踏まえ、JR九州は「人々の生活や経済活動に深く密着し、基幹的輸送機関として必要不可欠な存在」で、観光振興と地域活性化に多大な役割を果たしていると評価。
経営状況も、連結決算でおおむね200億円規模の安定した経常利益を計上していることから、一般的な民間会社と比べても遜色ない水準であると判断。2016年度中には鉄道・運輸機構が保有するJR九州の全株式を売却し、完全民営化を達成すべきとしている。あわせて経営上の重要な決定に際して、国土交通大臣の認可を必要としているJR会社法の適用を除外するべく、今年の通常国会にJR会社法改正案を提出し、成立を図る必要があるとした。
3,877億円にのぼる経営安定基金の取扱いについては、鉄道・運輸機構に支払う九州新幹線貸付料の一括前払い(2,205億円)、鉄道資産取得のために鉄道・運輸機構から借り入れた無利子借入金一括償還(800億円)、鉄道ネットワークの維持・向上に必要な鉄道資産への投資(827億円)に充てるのが相応だとしている。