九州の中でも実は地理的に"侮れない"のが佐賀県だ。特に県西部は大都市・福岡へのアクセスも至便、特急列車を使えば通勤範囲に収まる。そのような九州における大都市圏ともいえる佐賀県で、駅近ビジネスホテルの無料モーニングを体験してきた。
この企画では全国チェーンよりも、独立系・小規模チェーンのビジネスホテルで無料朝食サービスを展開しているホテルに注目し、別途料金が発生する「有料朝食」との対比で「無料朝食」と定義している。
太陽のように明るい会場で"おふくろの朝食"を
佐賀県東部の都市として思い浮かぶのが鳥栖市である。鳥栖駅から博多までは特急列車で30分ほどで、通勤定期を利用する人も多いという。なるほど、駅にいると常に多くの列車が行き交う光景が見られる。そんな鳥栖駅近くのビジネスホテル無料モーニングとして注目なのが「サンホテル鳥栖」だ。駅から徒歩1分とあって多くのビジネスマンの支持を集める。
そんなサンホテル鳥栖の自慢が"愛情いっぱいのおふくろの朝食"をうたった無料モーニング。ホテル1階の「ソレイユルーム」が会場だ。フランス語で"太陽"を意味するその名の通り、明るく開放的な空間だ。
料理は和食・洋食メニューをバイキング形式で提供している。洋食メニューでは、ロールパンにグリーンサラダ、ゆで卵など、和食メニューには、ご飯、味噌汁をはじめ、魚、ミートボール、漬物などが並ぶ。つい迷ってしまいそうなラインナップであるが、利用時間は朝6時30分からと時間に余裕があるのもうれしい。早めの出発にも助かる。
良質なディナーブッフェ880円も提供
ビジネスホテルは都市部や駅の近くにあるのが常識であるが、地方へ出向くとロードサイドに特化して出店されているチェーンも見られる。最近では都市部や駅近にも多い大規模チェーンの「ルートイン」はその名の通り、そもそもロードサイドへ特化したチェーンであったし、B&Bスタイルの「旅籠屋」もロードサイドに展開する人気チェーンだ。
そのようなロードサイドへの出店に特化したチェーンのひとつに「HOTEL AZ」がある。九州を中心に全国へ展開する人気ビジネスホテルチェーンである。鳥栖駅に近い「HOTEL AZ 佐賀鳥栖店」は駅から徒歩10分ほど。ロードサイドとしては異色の駅からも歩いてアクセスできるホテルだ。駅近ホテルが満室でも、ロードサイドホテルは意外にリザーブできるケースも多く利用価値が高そう。
ところが、ホテルの周辺には飲食店をはじめコンビニエンスストアもない。特に夕食を済ませていない夜の到着には心配であるが、こちらのホテルには併設されているバイキングレストラン「志高」でお得感の高いディナーブッフェを提供しているので安心。18時から22時までの間でなんと大人880円で楽しめるのだ。
ディナーブッフェが880円とは驚きであるが、安かろう悪かろうと思いきやその充実した内容に度肝を抜かれる。煮物、揚げ物、焼き物、和食に中華にデザート、よりどりみどり。チェックイン時には生ビール半額券も配られる。飲み放題メニューなどもあり、居酒屋的な使い方もできそうだ。
そんな充実した夕食が提供されるお店での無料モーニング、期待して出向くと、夕食に負けず劣らずのラインナップ。夕食時に提供されていた中華料理はさすがにないが、焼魚、ソーセージといった定番メニューはもちろん、パンにサラダ、デザートにはオレンジまで提供されている。何より明るく居心地が良い。導線がよく考えられたスペースには感心させられる。
地方で規模の大きなビジネスホテルへ出向くと、ホテル内に居酒屋や気軽なレストランが併設されているのを時々見かける。一般利用者はもちろんいるが、ホテル宿泊者にはお得な割引券を配るケースもあり利用価値は高い。無料モーニングもそのような店で提供されているケースが多く、クオリティーの高い朝食が楽しめるので要チェックだ。
※記事中の情報は2014年12月取材時のもの
筆者プロフィール: 瀧澤 信秋(たきざわ のぶあき)
ホテル評論家、旅行作家。オールアバウト公式ホテルガイド、ホテル情報専門メディアホテラーズ編集長、日本旅行作家協会正会員。ホテル評論家として宿泊者・利用者の立場から徹底した現場取材によりホテルや旅館を評論し、ホテルや旅に関するエッセイなども多数発表。テレビやラジオへの出演や雑誌などへの寄稿・連載など多数手がけている。2014年は365日365泊、全て異なるホテルを利用するという企画も実践。著書に『365日365ホテル 上』(マガジンハウス)、『ホテルに騙されるな! プロが教える絶対失敗しない選び方』(光文社新書)などがある。
「ホテル評論家 瀧澤信秋 オフィシャルサイト」