スタンダード&プアーズ・レーティングズ・サービシズ(以下「S&P」)は27日、丸紅の長期会社格付けのアウトルックを「安定的」から「ネガティブ」に変更した。長期会社格付けと長期優先債券の格付けは「BBB」に据え置いた。
S&Pによると、丸紅は26日、今2015年3月期の最終利益予想を従来の2,200億円から1,100億円に引き下げると発表。石油、ガス、銅、石炭などの資源価格の市況下落や、非資源の米穀物会社ガビロン社への投資に関する利益見通しの下方修正を受けて、総額で約1,200億円の減損損失を計上することが主因。S&Pは従来、今期の最終利益が従来の会社計画並みとなり、リスク資産と株主資本とのバランスが今後1-2年間、着実に改善すると想定していた。
S&Pは、今回の減損対象以外の資源プロジェクトの業績が大きく悪化することは、現時点で想定しておらず、また非資源事業では今期と来2016年3月期に安定的な利益水準が維持されるとの見方に変わりはないとしている。そのため来期以降は、業績が回復して、リスク資産と株主資本とのバランスが従来の想定より緩やかながらも改善するとの見方から、格付けは据え置いた。
ただし、S&Pでは、(1)同社の資源投資には、大口の資源権益や企業への出資のほか、カントリーリスクの高い地域への投資が含まれる、(2)石油、ガス、石炭、鉄鉱石などの市況が今後も軟調に推移する見通しである、ことなどを踏まえると、資源投資の業績見通しがさらに悪化するリスクもあるとみている。株主資本の積み上がりペースが遅れ、リスク資産と株主資本とのバランスは今期末時点で、前期末比での改善がS&Pの従来の想定よりも小幅なものとなり、来期以降の改善ペースも従来の想定より遅れる可能性が高まったと判断した。
S&Pでは、同社は今後、資源投資戦略の抜本的見直しを加速し、資産売却を増加させたり、新規の大型資源投資を抑制したりするとみているが、来期の最終利益を会社計画の2,000億円程度の水準まで改善するのは容易ではないと考えている。また、投資案件の売却が進捗し、フリーキャッシュフローが黒字に回復するには、なお時間がかかるとみている。「大口案件をはじめとする投融資において資産の質がさらに劣化したり、追加的な資金負担が発生したりしないことに加えて、フリーキャッシュフローの管理、財務方針における財務規律の維持などが、信用力を維持するうえでのカギになると考える」(S&P)。
S&Pでは、今後、(1)資源価格の下落など外部環境の悪化、米穀物会社ガビロン社の業績見通しの悪化などにより、今期の最終利益の水準がさらに低下する、(2)来期以降の最終利益が1,500億円を下回る水準にとどまる見通しが強まる、などして、リスク資産と株主資本とのバランスの改善ペースがさらに遅れる見通しが強まったと判断した場合や、あるいは資源投資戦略の抜本的見直しや資産売却計画が進捗してもフリーキャッシュフローの大幅改善が実現しない見通しが強まったと判断した場合には、格下げとなる可能性があるとしている。
一方、来期以降の最終利益の水準がS&Pの想定を上回り、リスク資産と株主資本とのバランスが大幅に改善すると判断した場合には、アウトルックを「安定的」に上方修正することを検討するという。