18作品がそろった2015年の冬ドラマ。今回もドラマ解説者の木村隆志が、全作品の初回放送をウォッチ。俳優名や視聴率など「業界のしがらみを無視!」したガチンコでオススメ作品を探っていきます。

別記事(「続編&刑事モノが激減し、"働く女"たちが大活躍! 2015年冬ドラマの傾向を徹底分析」)において、冬ドラマの主な傾向を、[1]続編&刑事モノが激減 [2]ドラマ界最高峰の脚本家がズラリ [3]"働く女"たちが大活躍 [4]恋愛と夫婦モノへの回帰 [5]悲壮感ただよう復讐劇 の5つと分析。

オススメドラマを第1位『デート』、第2位『怪奇恋愛作戦』、第3位『流星ワゴン』、第4位『問題のあるレストラン』、第5位『ゴーストライター』と発表しました。

本記事では、それらの作品を含む、今クール全作品のひと言コメントと採点(3点満点)を紹介していきます。

『デート』主演の杏(左)、『ゴーストライター』主演の中谷美紀

『警部補・杉山真太郎~吉祥寺署事件ファイル』(TBS系月曜20時~)

出演者:谷原章介、要潤、本田望結ほか
寸評:貴重なバイプレーヤーだった谷原が主演を張り、ヘタレ悪役がすっかり板についた要とバディを組む、ある意味意外性のある刑事ドラマ。『はぐれ刑事』シリーズの東映製作らしく、人情寄りの作品にうまくまとめていた。谷原が私生活さながらの子育て刑事を演じるのも、「変人でも超人でもなく一般人」という設定にも好感が持てる。
採点:【脚本☆ 演出☆☆ キャスト☆☆ 期待度☆】

『デート~恋とはどんなものかしら~』(フジテレビ系月曜21時~)

出演者:杏、長谷川博己、国仲涼子ほか
寸評:「ラブコメの変化球」は月9の十八番だが、今回はかなりエグイ曲がり方。違和感だらけの物語は、いかにも一筋縄ではいかない古沢良太脚本で、「アヒル口の決め顔」「高等遊民」らのキーワードも効いていた。婚活の影や少子化などの社会問題を突くブラックさも含め、とにかく楽しませてくれる。杏と国仲の新婚女優2人が早くも大活躍。
採点:【脚本☆☆☆ 演出☆☆☆ キャスト☆☆☆ 期待度☆☆☆】

『ゴーストライター』(フジテレビ系火曜21時~)

出演者:中谷美紀、水川あさみ、田中哲司ほか
寸評:女性好感度の高いダブルヒロインに加え、人間の苦悩を描くのが上手い脚本家・橋部敦子を迎えた万全の体制。オープニングから2人の激しい対決色を打ち出すなど、サスペンス要素もしっかり見せた。ポイントは、言わばヒール役になる中谷のキャラをどう魅力的に見せ、成長や希望を含めて描くか。狙いすぎたタイトルで損をした感も。
採点:【脚本☆☆ 演出☆☆☆ キャスト☆☆☆ 期待度☆☆☆】

『銭の戦争』(フジテレビ系火曜22時~)

出演者:草なぎ剛、大島優子、木村文乃ほか
寸評:韓国ドラマ原作らしく、わかりやすさ重視。エリートが職と婚約者を失い、ホームレスに転落し、復讐を誓う……前時代的な設定だけに、現代風の味つけを加えなければ視聴者の心はつかめない。もう1つの焦点は、熱量が伝わりにくい演技の草なぎがどう役をつかんでいくか。恋愛の三角関係も含め、あまり考えずにサラッと見たい作品。
採点:【脚本☆ 演出☆☆ キャスト☆ 期待度☆】

『まっしろ』(TBS系火曜22時~)

出演者:堀北真希、志田未来、高梨臨ほか
寸評:「セレブ病院で玉の輿狙い」「白い大奥」などコンセプト作りの上手さは、植田博樹プロデューサーの真骨頂。ただ、看護師に華のある女優をそろえたためか、バトルというより群像劇の様相に。朝ドラも経験した堀北だが、『野ブタ』『イケパラ』時代の軽い演技に戻っていたのはやや残念。今後、木村多江の決めゼリフ「お暇」が炸裂しそう。
採点:【脚本☆☆ 演出☆☆ キャスト☆☆ 期待度☆☆】

『まっしろ』主演の堀北真希(左)、『○○妻』主演の柴咲コウ

『全力離婚相談』(NHK火曜22時~)

出演者:真矢みき、上地雄輔、舘ひろしほか
寸評:人間ドラマが詰まった離婚というテーマに加え、真矢の男前ヒロインぶりがハートフル感を否応なしに高める。ただ、「元宝塚プラス離婚」の図式は天海祐希のヒット作『離婚弁護士』と酷似。今作はNHKらしく、コミカルさを排除したシリアス路線だけにむしろハードルは高い。名古屋製作であり、風情ある商店街の景色はいい味わいに。
採点:【脚本☆☆ 演出☆ キャスト☆ 期待度☆】

『○○妻』(日本テレビ系水曜22時~)

出演者:柴咲コウ、東山紀之、黒木瞳ほか
寸評:「"新しい夫婦のカタチ"を描く究極のラブストーリー」と大風呂敷を広げたのは、『家政婦のミタ』チーム再集結の自信か。しかし極端なキャラのヒロイン、過去の秘密を思わせる演出、脅迫という強硬な解決策は、「続編」という雰囲気。初回はキャストが役をつかんでいないのが気になった。驚かせる飛び道具を必ず用意しているはずだ。
採点:【脚本☆☆ 演出☆☆ キャスト☆ 期待度☆☆】

『残念な夫。』(フジテレビ系水曜22時~)

出演者:玉木宏、倉科カナ、岸谷五朗ほか
寸評:同局の名作『アットホームダッド』に、現代の産後危機を加えてアレンジ。まだそれほど残念な夫でもモンスター妻でもないだけに、今後どれだけ「あるある」を詰め込めるか、その中でどうほっこりさせるかがカギを握る。初回ラストで離婚届を見つけて挙動不審になっていた玉木の顔が秀逸。この残念キャラが増えるほど面白くなりそう。
採点:【脚本☆ 演出☆☆ キャスト☆☆ 期待度☆☆】

『出入り禁止の女~事件記者クロガネ~』(テレビ朝日系木曜20時~)

出演者:観月ありさ、財前直見、小林稔侍ほか
寸評:24年連続主演の観月が今度は新聞記者に。役作りでブレないのはさすがだが、中学生の息子を持つシングルマザーの設定は微妙。また、初回は部下の宅間孝行を潜入取材させただけで、肝となる観月のしつこさは不発だった。事件や謎解きのひねりもなかっただけに、今後は脚本が出来を左右しそう。財前演じるデスクとのバトルにも期待。
採点:【脚本☆ 演出☆ キャスト☆ 期待度☆】

『風の峠~銀漢の賦~』(NHK木曜20時~)

出演者:中村雅俊、桜庭ななみ、柴田恭兵ほか
寸評:「男五十 今、この命使い切る」のコピー通り、大ベテランの中村と柴田が渾身の演技を見せていた。時代劇のカギを握るカット割りや美術なども、NHKらしくこなれている。目を引く演出や伏線に頼らない点も含め、「時代劇を誠実に作ろう」という姿勢がハッキリ。初回は平幹二郎と渡辺謙の二世共演も含め、見どころ十分だった。
【脚本☆☆☆ 演出☆☆ キャスト☆☆ 期待度☆☆】

『美しき罠~残花繚乱』(TBS系木曜21時~)

出演者:田中麗奈、若村麻由美、青柳翔ほか
寸評:一見、不倫がテーマのように感じるが、テイストとしては『昼顔』よりも第1期『ファーストクラス』に近い。つまりヒロインに周囲の女たちが総攻撃を仕掛ける図式だ。ただ、不倫をしていたあげく、妻に逆ギレする田中への感情移入は難しく、昼ドラのような興味本位な目線がオススメ。隠れた見どころは、青柳と村上弘明のヌード。
採点:【脚本☆ 演出☆ キャスト☆☆ 期待度☆】

『DOCTORS3~最強の名医~』(テレビ朝日系木曜21時~)

出演者:沢村一樹、高嶋政伸、比嘉愛未ほか
寸評:わかりやすさとエンタメ性を兼ね備えた秀作は健在。今回もハマリ役の沢村と高嶋は伸び伸びと演じている。常に何か企んでいる沢村と、怒りで顔面がプルプル震える高嶋。どちらを目当てで見ても楽しいのがこのドラマの強みだ。3作目のテーマはこれと言ってないが、各話きっちり楽しませてくれる上に、親子で見られるのも貴重。
採点:【脚本☆☆ 演出☆☆☆ キャスト☆☆☆ 期待度☆☆】

『ウロボロス』主演の小栗旬(左)、『流星ワゴン』主演の西島秀俊

『問題のあるレストラン』(フジテレビ系木曜22時~)

出演者:真木よう子、東出昌大、二階堂ふみほか
寸評:『最高の離婚』スタッフだけに疑いなき品質保証。セリフ名人・坂元裕二の脚本に注目が集まる。女性支持の高い真木に加え、二階堂、高畑充希、松岡茉優、東出、菅田将暉と若手注目株がズラリ。セクハラ、パワハラの描写は引くほどだったが、それが終盤の爽快感や笑い泣きにつなげてくれそう。ゲイ役の安田顕がまたも怪演を見せている。
採点:【脚本☆☆☆ 演出☆☆ キャスト☆☆☆ 期待度☆☆☆】

『保育探偵25時~花咲慎一郎は眠れない!!~』(テレビ東京系金曜20時~)

出演者:山口智充、黒谷友香、鹿賀丈史ほか
寸評:「1日中明かりの消えない保育園」が舞台だけに、育児放棄、シングルマザーの貧困、待機児童、モンスターペアレンツなどネタは豊富。そこに探偵業も絡んで、物語は終始にぎやか。笑い泣き、喜び怒り、歌って踊る、ぐっさんのキャラクターそのもので、すっかり減った20時代ドラマの役割を全う。真剣佑の存在はやはり気になる。
採点:【脚本☆ 演出☆☆ キャスト☆ 期待度☆】

『ウロボロス~この愛こそ、正義。』(TBS系金曜22時~)

出演者:生田斗真、小栗旬、上野樹里ほか
寸評:脇役に吉田鋼太郎、滝藤賢一、吉田羊らをそろえた今クール最高の豪華キャスト。刑事と暴力団のコラボは新鮮だが、警察の暗部を暴く物語は既視感が強く、同枠は暗いトーンの作品で苦戦を続けているだけに不安が残る。出来を左右しそうなのは、「圧倒的な身体能力を持つ」「二重人格のように豹変してキレる」設定を生田がどう演じるか。
採点:【脚本☆ 演出☆☆ キャスト☆☆ 期待度☆☆】

『怪奇恋愛作戦』(テレビ東京系金曜24時12時~)

出演者:麻生久美子、坂井真紀、仲村トオルほか
寸評:演劇界の鬼才・ケラが本気で脚本・演出を手がけるだけに、こだわりがスゴイ。オープニングから小ネタを散りばめ、セリフにひねりを入れ、遊び心を詰めまくっている。笑いと怪奇のバランスも絶妙で、深夜の静かなトーンに合わせつつ、これほど笑える作品も珍しい。ハンパなき、やさぐれ感のコメディエンヌ3人が魅力的で目が離せない。
採点:【脚本☆☆☆ 演出☆☆☆ キャスト☆☆☆ 期待度☆☆☆】

『学校のカイダン』(日本テレビ系土曜21時~)

出演者:広瀬すず、神木隆之介、浅野温子ほか
寸評:意欲的な作品に違いないが、貧富の差をベースにしたカーストは、誰もが『花より男子』を思い出す古い手法。肝となるスピーチも説得力が今ひとつで、名言は生まれなかった。大抜擢ヒロイン・広瀬の敵役に杉咲花や石橋杏奈ら実力派をそろえただけに、それぞれの見せ場に期待がかかる。クセの強い大人キャストは、学園モノならでは。
採点:【脚本☆ 演出☆ キャスト☆☆ 期待度☆】

『流星ワゴン』(TBS系日曜21時~)

出演者:西島秀俊、香川照之、井川遥ほか
寸評:ワゴンの設定と映像手法に賛否両論あるが、親子と夫婦の揺れ動く心理を描いた物語に疑いなし。日曜劇場らしく、毎週ラストはきっちりホロリとさせてくれるだろう。戸惑ってばかりの西島と、破天荒な香川の対比は、いかにも『半沢直樹』チームらしい演出。妻の浮気相手、ワゴン運転手の事故などのミステリーも楽しませてくれそう。
採点:【脚本☆☆☆ 演出☆☆ キャスト☆☆☆ 期待度☆☆☆】

■木村隆志
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者、タレントインタビュアー。1日のテレビ視聴は20時間(同時視聴含む)を超え、ドラマも毎クール全作品を視聴する重度のウォッチャー。雑誌やウェブにコラムを提供するほか、取材歴1000人超のタレント専門インタビュアーでもある。著書は『トップ・インタビュアーの聴き技84』など。