WOWOWで1月18日からスタートする連続ドラマ『翳りゆく夏』は、20年前に起きた新生児誘拐事件を発端に、誘拐犯の娘が大手新聞社に内定することから展開するノンストップ・サスペンス。渡部篤郎は誘拐事件の再調査を進めていくうちに、衝撃的な真実へとたどり着く大手新聞社の元敏腕記者・梶秀和を演じている。主役としての心がまえ、役者としてのこだわりについて渡部に話を聞いた。

渡部篤郎
1968年5月5日生まれ。東京都出身

――まずは今回演じられた梶という役への取り組み方をお聞かせ下さい。

「僕がどうこう思うのではなく、まず台本に書かれていることをイメージすること、そこが一番大事だと思っています。ここでこんなことやってみよう、とかではなく、キチンと伝えるということを、しっかり作らないと、大半のお客様には伝わらないんじゃないかなと思います。その次にするのはプロデューサーや監督と話をして、お互いに感じていることをすり合わせる作業です」

――その作業は、かなり時間をかけて行われるものですか?

「10分くらいだけど(笑)。たぶん、プロはそういうところに時間をかけないと思う。監督も『こういう人物で』という考えは明確に持っているだろうし。その10分で具体的な衣装についても話し合います。自分がせっかちなので(笑)」

――ではストーリーに関して、渡部さんが最も心をつかまれた部分はどこでしょう。

「詳しくは言えないけど、やっぱり結末ですよね。そのときの、とある人物の心情というか、その人物が何を語るか、ということでしょうね。簡単に言えばミステリーだけど、人間の心の奥底にも哀しみも描かれている。たとえば韓国映画に近いような、誰が出ているということよりもストーリーありきで楽しめる作品だと思います。でも、自分はまずドラマを成功させることしか考えてないですから。時任三郎さんや橋爪功さんをはじめ、共演する方々と良いコラボレーションを生みながら、与えられた役をやり切るしかないですね」

――それはけっこう若い頃から心に抱いているポリシーなんですか?

「ポリシーと言うほど強くないですけど(笑)、ずっとそうですね」

――「せっかちである」という言葉からは、ともすると芝居に対して淡白な印象を受けますが……。

「自分がどうというよりも、周りのスタッフに対する気持ちですよね。基本的にスタッフは役者である僕らよりも早く現場に来て、遅く現場を去るじゃないですか。あくまでも僕の経験上ですけど、現場が早く終われば、それだけスタッフのモチベーションや体力は維持し続けられるし、それによって作品の質も維持される。もちろん、ケースバイケースだと思うし、自分も現場によって適応出来ますけど、そのスタンスは昔から変わってません」

――では、渡部さん自身の役作りや芝居についての考え方をもう少し聞かせて下さい。

「意気込みや思いって、あまり必要じゃないかなと思うんですよ。空回りしたら嫌ですし。ナチュラルな気持ちで現場に立って、そこで様々な思いを感じ取る。役者としてのスキルってそういうことだと思うんです。求められた時間に対してどれだけのものを出せるか。過去の経験値に頼らず、今の自分のスキルはそこに出せると思っていますね」

――われわれ一般人には芝居の世界は到底想像がつかないのですが、例えるならどんな感覚に近いのでしょうか。

「人それぞれの好み、だと思います。自然な芝居が好きな人もいれば、もっと劇的な芝居が好きな人もいる。20年芝居をしてますが、どんどん難しくなるし、まだまだ分かりませんね。若い頃は分かったような気になっていましたけど(笑)」

――逆に言えば、だからこそ面白いと。

「そうですね。細かいことですよ、きっと。こっちで間を取ることで相手の芝居が変わったりするような。それは監督に言われてやるものではないし、自分を含めそれぞれの役者が持っている芝居の力だと思います。芝居の上手い下手はよく分からないですね。まぁ、何も考えてないでやってる時が一番、楽しいですね。こうしなきゃああしなきゃとか、次の段取り考えたりしてるより、自然にやれるのが楽しい気がします」

――話は変わりますが、渡部さんが今やりたいことや、2015年の抱負は何ですか?

「全然ないですね(笑)。よく『何をやりたいですか?』って聞かれるのですが、来たものをやりたいタイプなので。もちろん、あんな役をやりたい、こういう作品に出たいと夢を持って取り組むのもいいと思いますが、僕に関しては昔からそういう気持ちはあんまりないですね」

――渡部さんは、あまりプライベートのことをインタビューで語っていないですよね。

「自分で言うのもなんですが、あてにならないですから(笑)。その時の気分で語っているだけですし。ただ、仕事に関しては、どんな現場でも常に『やばい』と思いながらやってます。毎回、現場で自分が一番出遅れてると思っていますから」

――渡部さんのキャリアにしても、まだそう思って現場に臨んでいるんですか?

「そう思えば誰よりも頑張れるじゃないですか。役者として、いろいろな現場で自分が先輩たちから教わったことを後輩たちに伝えていきたいと思うし、いい作品であればいい俳優も育つだろうし。それはどんな作品においても一つの願いとして常にありますね」

出演はほかに時任三郎、門脇麦、菅田将暉/岩松了、滝藤賢一、葵わかな、岩本多代、戸田昌宏、嶋田久作/前田敦子、森口瑤子、鶴田真由/木場勝己、中田喜子、佐藤B作、板谷由夏、橋爪功。連続ドラマW『翳りゆく夏』はWOWOWプライムにて2015年1月18日(毎週日曜 22:00~ 全5話 第1話は無料放送)スタート。