今回はベトナム・ハノイ市に暮らすご夫婦です。イギリス人夫のショーンさん(40歳)とベトナム人妻のオアインさん(30歳)が暮らすのは、西洋と東洋がうまくミックスされた素敵なお部屋。お住まい同様、お二人の生活も異文化が良い形でミックスされています。

夫のSion Morton(ショーン・マートン)さん(イギリス・ウェールズ、40歳、EUの外交官)と妻のLuu Thi Tuan Oanh(ルー・チ・トアン・オアイン)さん(ベトナム、30歳、サービスアパートのマネージャー)

■お二人のなれそめと、第一印象を教えてください。

私(妻)の職場だったサービスアパートに夫が住んでいました。たまたまアパートの住人で私が親しくしていた女性と彼が同じ職場で、彼女を通じて彼を紹介されました。全くハノイ市内を観光したことがないという彼に市内観光のガイド役を頼まれて、観光の合間にカフェで話をするうちにいろいろな共通点が見えてきたんです。少しずつ少しずつ親しくなり、出会ってから3年後の2012年10月に結婚しました。

出会ってから3年後に結婚

■プロポーズの言葉は?

妻: 実はプロポーズの言葉はなかったんです。出会った頃、すでにお互い若くはなかったので、強いて言えばお互いの家族からのプレッシャーが結婚のきっかけでしょうか。その代わりと言っては何ですが、彼の故郷であるウェールズで結婚の際に渡される伝統工芸の「ラブ・スプーン」をもらいました。ヨーロッパの男性だと、ロマンチックにひざまずいてプロポーズをするとよく聞くけれど……。

夫: 僕は足が悪いんだ(笑)

■日本の結婚と比べ、特別で驚くようなことや、独特な風習はありますか?

僕が驚いたのは、妻の実家で行った婚約式。大体の流れは聞かされていたけれど、妻は準備があるからと先にハノイを離れてしまいました。当日はたくさんの親戚に囲まれて、当然みんなベトナム語しか話しません。司会の人が何か話すと全員が僕の方を一斉に向きますが、僕は何をすれば良いのかサッパリ。英語のできる友人が「次はこれをするんです」と、そっと耳打ちをしてくれて本当に助かりました。

ベトナム、妻の実家で行った婚約式

ベトナムでは勧められたお酒を飲み干すのが、その人に対する敬意の証。僕は言葉も話せないから、式の後の食事会ではひたすら飲んで飲んで飲みまくりました。

■もしさしつかえなければ、世帯年収やその内訳を教えてください。

僕は欧州でスタンダードの給料をもらっていて、彼女はローカルスタンダードなので、おのずと僕の方が割合は高くなります。

■海外旅行などには頻繁に行かれますか?

お互い旅行好きなので、年に何度かアジアの国々を訪れていますね。一昨年は僕の両親と一緒に日本を訪れました。僕の母親がホテルにスーツケースを忘れたまま電車に乗ってしまい、僕が慌てて引き返したのですが、なんと日本人の駅員さんは切符を再購入せずに中に入れてくれたんです。日本人の親切心にみんな心をうたれていました。

家に飾っているオブジェや絵画は旅行の際に買ったものが多いです。ブータンで買ったオブジェの中にスイスで買ったカウベル(牛鈴)を入れて飾ったり、家の中はいろいろな文化がミックスされていますね。

■家計はどちらが管理していますか? 何かうまくやりくりするコツは?

どちらが管理するということではなく、日用品などの買い物は共同口座から出します。少し大きな買い物をする時は、2人で話し合いますね。話し合いで決着しない時はさらに話し合いを続け、議論して議論して議論した後に、最終的には妻が正しいと僕が納得する形で終わります(笑)。

■どんな家に住んでいますか?

外国人が多く住むサービスアパートに住んでいます。2ベッドルームで広さは約120平方メートル。市内の真ん中にあるのでどこに行くにも便利です。交際するようになってから、職場であるアパートの住人と個人的に親しい間柄であるのは気が引けると、妻は仕事を変えました。彼女はとても真面目なので、その時は住人の日本人が非常に悲しがりましたよ。

結婚後もしばらくは他の仕事をしていましたが、アパートのオーナーが新しく大型アパートをオープンさせたので、彼女に再度、働いてくれとオファーがあったんです。今は同系列のアパートでサービスチームのリーダーとして働いています。

■家事はどのように分担していますか?

お互い料理もするし、洗濯もします。掃除は有り難いことにサービスでついているのでとても助かりますね。料理に関しては、基本的にできる方がするという形です。妻はシフト制で働いていて勤務時間が不規則なため、帰りが遅くなる時は僕がすることが多いです。2人とも家に居る時は、妻がマスターシェフ、僕がセカンドシェフとなって料理をします。

■ちなみに、昨日の晩ご飯は?

昨日は妻の帰りが遅くなることが分かっていたので、メイン料理のシチューは僕が作りました。ドイツ風シチューとゆで野菜、それに妻が作ったベトナム風スープにデザートはパパイヤです。

夫のSion Mortonさんが作ったシチューと妻のLuu Thi Tuan Oanhさんが作ったベトナム風スープとパパイヤなど

結婚当初は西洋料理の日、ベトナム料理の日と分けていましたが、最近は同じ日に2つの地域の料理が並ぶことの方が多いです。でも、どちらかと言うとベトナム料理の比率が高いかな。

朝食は全く別です。妻は近くの屋台などでベトナム料理を食べるし、僕はトーストを焼いたり、シリアルを食べたりします。朝からベトナム料理というのは、僕の胃が受け付けないんです。

■夫の好きなところは? 妻の好きなところは?

夫: 思いやりがあるところ。それに明るいところですね。仕事から疲れて帰って来ると、彼女の明るさに救われます。

妻: おおらかなところ。私は少し完璧主義なところがあるので「そんなに大したことじゃないよ」と言ってくれるとホッとします。

■逆に夫の嫌いなところは? 妻の嫌いなところは?

夫: 彼女が悪いというわけではないのですが、ベトナムの古い習慣には時々驚かされることがあります。特別な理由もないのに「この日のこの時間にこれを絶対にしなければならない」といったことが多いので「明日でも来週でもいいじゃないか」と口論になってしまう時もありますね。

妻: 感情をあまり表に出さないところ。欧州の男性はそのように教育されて育っているのかもしれませんが、ベトナム人の女性からすると、感情を見せないことはその事柄に関心がないと映ってしまいます。

■結婚生活が長続きする三カ条を教えてください。

家事を分担すること、お互いを理解し、尊敬すること、どんなに深刻な問題でも、楽しい面を見るようにすること。

それと、国際結婚である私たちは自分自身を相手に分かってもらうために普通以上に相手に自分の気持ちを伝える努力が必要だと思っています。

■将来の家族の夢は?

夫の仕事柄、さまざまな国を転々とすることが多いので、その異文化体験生活を楽しめたらいいなと思っています。長いスパンでは、家を買ってそこで家族そろって楽しく暮らすことかな。ただ、肝心の「どこに」家を建てるかはまだ2人で意見が一致していないんです。

でもきっと、今後子供を授かったら彼らの学校の問題や、両親の世話など、外的な要因がその場所を決めてくれるのではないかと思っています。自分たちで決めなくて良いから、その方が楽でいいかもしれませんよね(笑)。