ネット家電ベンチャーのCerevoは、アメリカ・ラスベガスで6日(日本時間7日未明)開幕した展示会「2015 International CES」で、スマートフォン連携型スノーボード用品「XON(エクスオン) SNOW-1」の試作機などを展示している。
SNOW-1は、スノーボードとブーツを固定する「バインディング」と呼ばれる器具にセンサーやBluetooth通信機能を搭載し、滑走中のボードのしなりや荷重のかかり方、ルートなどを記録できるもの。既報の通り、CESの直前イベント「Unveiled」にも出展され、開幕前から各国の取材陣の間で話題となっていた製品だ。
Cerevoはこれまで、PCのない環境でもインターネットに映像を配信できる機器「LiveShell」や、モバイルガジェット用の周辺機器などを開発・販売してきた。スポーツ向けの製品はSNOW-1が初となるが、同社代表取締役CEOの岩佐琢磨氏は「Cerevoは『コネクテッド・ハードウェアで生活をもっと便利に・豊かにする』をスローガンにしており、そこから生まれたのがたまたま映像機器などだっただけなんです」と話し、製品カテゴリとしては新しいものの、従来と異なる事業分野への進出という感覚はないという。
最近のデジタルガジェット市場では、インターネットやモバイル機器と連携するスポーツ用品はひとつのブームとなっており、今回のCESでも大手メーカーからスタートアップまで多くの企業が新製品の提案を行っている。その中でCerevoが第1弾としてスノーボードを選んだ理由は、「適度にニッチ」(岩佐氏)なスポーツだからだという。
例えばテニスのように世界のプレイヤー人口がもっと多いスポーツの市場では、いずれ大手メーカーとの戦いになってしまい、特に価格面ではCerevoのようなベンチャーが競争力を維持するのが難しくなる。対してスノーボードは、誰もが楽しむスポーツではないものの、世界全体で見れば多くのプレイヤーが存在する。多くはないが確実にユーザーが存在する「グローバル・ニッチ」市場をターゲットにするのは、これまでの映像配信機器などと共通する戦略だ。
また、同社ではこのSNOW-1をあくまで「スノーボードに新しい体験を提供し、もっと楽しく滑るための製品」として提案しており、スノーボーディングの指導・教育用機器ではないというスタンス。もちろん、インストラクターが生徒により正確なアドバイスをするために使うことも可能だが、用途を指導用と想定して機能を設計すると、かえって楽しみ方やユーザー層を狭めてしまうことになりかねない。まずはこれまで感覚でしか得られなかった自分の滑りをデータとして振り返ることができることを楽しんでもらい、そのデータをどのようにして上達に役立てるかはユーザーに任せるという考え方だ。
搭載する通信モジュールやセンサーなどのデバイスはこれまでの研究開発で扱ってきた種のもので、いまのところ特別に高い技術的な課題はないという。年内の発売を予定しており、価格は400~600米ドルを想定している。
また、同社ブースではインターネット配信機能搭載の映像スイッチャー「LiveWedge」の実機を展示。最大で1080/59.94pに対応した4系統のHDMI入力を備えており、フェード、ワイプ、クロマキー、PinPなどによる映像の切り替えや合成が可能。また、H.264エンコーダーを内蔵しており、最大720/30p・10Mbpsでのライブ配信、1080/30p・15MbpsでのSDカードへの録画が可能。本体だけでも動作可能だが、iPad用アプリを利用することでより細かいコントロールができるようになっている。
フルHD4系統搭載、PinPやライブ配信機能を備えたスイッチャーとしては破格の999ドルという低価格を実現。CES出展内容の中から特に革新的で優れた要素を持つ製品に贈られる「2015 CES Innovation Awards」を受賞している(Home Audio/Video Components and Accessories部門)。品質向上やHDMIの規格認証取得に時間がかかったことから当初予定より約1年にわたり発売が延期されていたが、ようやく量産に入ることができ、既予約ユーザーに向けては1月末までに出荷が完了するとしている。