小田すずか |
ワコムは6日、液晶ペンタブレット「Cintiq」シリーズに、これまでのラインナップの最上位にあたるモデル「Cintiq 27QHD」および「Cintiq 27QHD touch」を追加することを発表した。
シリーズ最大となる27型の画面サイズもさることながら、最大の特長と言えるのが、これまで本体画面わきに搭載されていたファンクションキーが着脱式の「ExpressKey Remote」となった点。これによりキー自体の数も増え、描画中のポジションもユーザーが自在に決められるようになった。この変化を、液晶ペンタブレットを使い込んだクリエイターはどのようにとらえたのだろうか。
今回は、歴代の「Cintiq」シリーズを使い込んで作品制作を行ってきた漫画家・小田すずか氏に、ワコム本社にて「Cintiq 27QHD」の発表前タッチ&トライを行っていただき、その中で伺った所感をお届けする。
小田すずか氏は、液晶ペンタブレット「Cintiq」シリーズを初期から愛用し、仕事に取り入れている。このたび発表された「Cintiq 27QHD」は、同氏が現在メインで使用している「Cintiq 24HD」と筐体の大きさは同一ながら、画面領域はシリーズ最大となり、解像度もQHD(最大表示解像度2560×1440)まで向上した。小田氏も、「(現在導入している)Cintiq 24HDに比べて、解像度が上がっているのがよく分かりますね」と語った。
解像度の差異もさることながら、この新機種を目にした小田氏の「本体」への第一印象は「スマート」だという。フルフラットのガラス張りになったため、「インテリアになじみそうな"スマート"なデザイン」になり、そして実際に扱う際も手応えが薄くなったように感じたという(実際、スペック上でも厚みはCintiq 27QHDの方が薄くなっている)。また、「溝がなくなって、掃除など日々の手入れもしやすくなりそうです」と、ヘビーユーザーならではの着眼点でコメントした。
また、「Cintiq 27QHD」は、大型の液晶ペンタブレットではデフォルト搭載となっていたスタンドが別売となり、本体だけで購入・使用できるようになった。この変更についても小田氏は好印象を受けたということで、「もし導入するなら、これまでと同様に使えるスタンドが欲しいと思っています。ですが、本体についている足も、実際に使ってみたら想像以上に角度も強度もちょうどよく、十分使えると感じました」という。
外部キーを集約した「ExpressKey Remote」
そして、「Cintiq 27QHD」最大の変更点である「ExpressKey Remote」。従来、「Cintiq」シリーズのファンクションキーは左利き・右利きの両方に対応できるよう、両脇についていた。この点について、小田氏は「(利き手によって使い分けるものとは理解しているものの)使わない方のキーをムダにしている感覚がありましたが、この「ExpressKey Remote」であればより効率よく機能を活用できそうです」と語った。というのも、小田氏は前々から(Cintiqシリーズの)ファンクションキーを増やしてほしいという希望は持っていたものの、それをデバイスとして独立させる発想に驚いたということで、興味深そうに眺めていた。
その後、「ExpressKey Remote」を用いて作画を進めていった小田氏。持っている感覚は「スマホを扱う感覚に近い」とのことで、手が比較的小さい方だという同氏でも使いやすく感じたという。「手に持ちながら扱えるので、視線をペン先から逸らさなくて済むのはとてもいいですね」とコメントしたほか、「思った以上に手になじんでくれたので、マウスを持つよりも良さそうです」と太鼓判を押した。
最後に、作画が終わった後に「試しに漫画原稿を開いてみたい」という小田氏。ネームはこれまでアナログで行うことが多かったという小田氏だが、実は以前より完全デジタル化を検討していたとのこと。「Cintiq 27QHD」で完成原稿(吹き出し内は手描き文字)を開いてみたところ、見開きで表示できるので左右のバランスを考えながら作画できるメリットを挙げた上で、手描き文字が大画面でも潰れることなく読める状態で表示できたことに注目し、「これならネームからデジタルに移行できそうです」と微笑んでいた。
本格的な作画を行う人にとって、今回の「Cintiq 27QHD」は、画面サイズや解像度の向上もさることながら、ユーザーの選択肢を増やすような仕様変更がなされていると言えそうだ。すでに液晶ペンタブレットで作業を行っている人も、あるいは検討段階という人も、一度実機に触れてその仕上がりを体感してみてほしい。