2013年8月にWindows 8が登場、2013年10月にWindows 8.1がリリースされて以降、2014年の1年間は、OSには大きな進化がなかったのが、Windows 8搭載PCを取り巻く状況だったといえる。ラピッドリリースを標榜したマイクロソフトだけに、その点では、やや肩すかしを食った感があったともいえるだろう。

その一方で、Windows XPのサポート終了を2014年4月に迎え、空前ともいえる買い換え需要が発生したのも、2014年の大きな特徴。さらに、ソニーがPC事業を売却し、VAIO株式会社が設立され、東芝や富士通がPC事業のBtoB分野へのシフトを鮮明に打ち出すなど、PC事業の変革が相次いだ1年でもあった。

そうしたなか、2in1 PCが各社から登場したこと、Windowsタブレットのラインアップが拡大したことなどは、ユーザーの関心を高める動きだったといえるだろう。

では、2015年のWindows搭載PCは、どんな1年になるのだろうか。

2015年の鍵は「Windows 10」!

Windows 10

最大のトピックは、2015年後半の発売が予定されているWindows 10であるのは間違いない。

米マイクロソフトの公式発表では「2015年後半」という表現になっているが、米マイクロソフトのケビン・ターナーCOOが「2015年秋」という表現を用いていることから、年末商戦には間に合う形で投入される公算が強い。

もちろん、米国時間の1月21日に公開されるとみられるコンシューマプレビュー版、4月29日に開催される開発者向けイベント「Build 2015」で公開されるデベロッパープレビューなどのフィードバック次第では、「秋」の発売がずれ込む可能性もある。

だが、販売、マーケティングを統括するターナーCOOからの「秋」とした発言は、マイクロソフトの販売/マーケティング戦略がそこに向けて動き始めていることの証だ。

Windows 10では、PC、タブレット、スマホ、Xboxのほか、IoTといった様々なデバイスにひとつのOSで対応。異なるデバイスでも同じ操作環境を実現する「One UI」、ひとつのアプリ開発で様々なデバイスで動作できる「One API」、どんなデバイスでも、ひとつのマーケットプレイスからアプリをダウンロードできる「One Store」を実現する点でも注目が集まる。

Windows 10は、タブレットからデスクトップPCまで、さまざまなデバイスに対応する

気になるのは、Windows 10の発表リリースのなかに触れられていた一文だ。ここでは、「いくつかの新たなデバイスを投入する」とされているが、これがマイクロソフトブランドの製品なのか、サードパーティーの製品なのか、あるいは既存の形状のPCなのか、ウェアラブルデバイスなのか、まったく真相がわからない。

仮にマイクロソフトブランドで投入される場合、開発を担当しているのは、前ノキアCEOであるステファン・エロップ氏が率いるデバイスグループになるはずだ。この組織では、タブレットPCのSurfaceや、スマートフォンのLumia、大型マルチタッチディスプレイ製品などを開発。10月から米国で発売したウェアラブルデバイス「Microsoft Band」もこの部門で開発している。買収したノキアの開発者なども多く抱えており、開発体制は万全だ。2015年は、Windows 10の投入とともに、このタイミングにどんな製品が投入されるのかにも注目しておきたい。

広がる2-in-1 PCの世界

2015年も引き続き注目したいのが、2-in-1 PCの広がりだ。

すでにパナソニックが主力機種のすべてを2in1 PCにする方針を打ち出しているほか、ソニーから独立したVAIOも、公開している試作品の「VAIO Prototype Tablet PC」を2in1形状で提案。主要各社も2in1 PCのラインアップを強化している。2015年もその勢いは加速することになりそうだ。

2in1 PCの形状も各社各様であり、各社の提案にも注目しておきたい。

VAIO Prototype Tablet PC

そして、もうひとつ注目しておきたいのが、Windows搭載タブレットの広がりだ。

Windows搭載タブレットは、8型液晶ディスプレイ搭載モデルが人気を集める一方、7型液晶ディスプレイ搭載モデルによる低価格製品も登場するなど、Windows搭載タブレットの存在感はますます高まりそうだ。

9型未満の液晶ディスプレイを搭載した製品に対して、Windowsを無償で提供する「$0 Windows」ブログラムの広がりも、低価格タブレットのラインアップ拡大に貢献することになりそうだ。

低価格タブレットが浸透する?

もうひとつ、2015年の動きで見逃せないのが、静かに進行している「チャイナ・テクノロジー・エコシステム(China Technology Ecosystem)」の動きだ。

CTEと呼ばれるこの取り組みは、マイクロソフトが全世界で展開する新たな施策で、中国の生産拠点を通じて、3万円を切るような低価格Windows搭載PCおよびタブレットを市場投入することができるブログラムだ。

この施策を活用した日本への製品投入は現時点では未定だが、日本上陸の可能性は捨てきれない。

2014年12月17日に発表された「Stream 11-d000」

すでに、低価格ノートPCとしては、日本ヒューレット・パッカードが税別25,800円の「Stream 11-d000」を発売するといった動きがあり、低価格化の流れが動きはじめているなかで、CTEの動きが加わり、Windows搭載PCやタブレットの販売価格を一気に引き下げる可能性がある。

海外からの部品調達や海外生産が中心となるPCやタブレットでは、円安の影響をあけて、価格上昇の流れがあるが、Windows搭載PCおよびタブレットに関しては、新たな施策の実施によって、価格下落が進展する可能性がある1年ともなりそうだ。

SurfaceとWindows Phoneの投入タイミング

ところで、マイクロソフトブランドのタブレットPCである「Surface」と、国内投入が遅れているWindows Phoneは、2015年にはどうなるのだろうか。

いずれもポイントは、Windows 10ということになりそうだ。

Surface Pro 3

現行モデルのSurface Pro 3は、2014年7月に発売。1年に一度の発売サイクルであることを考えると、夏に発売となる公算が高いが、秋にWindows 10が発売されることを考えると、そのタイミングにまで発売がずれ込む可能性も捨てきれない。そして、Windows Phoneについても、ここまで日本での投入が遅れていることを考えると、Windows 10の発売前に、慌てて現行モデルを国内市場に投入することも考えにくい。

つまり、Windows 10の発売タイミングが、この2つの製品の投入時期に関わってくることになる。

その点では、CTEや$0 Windowsといったプログラムについても、Windows 10になって継続されることになるのか、あるいは変更があるのかといったことも気になるところだ。いずれにしろ、Windows 10の発売によって、Windows搭載PCの行方が左右される1年になることは間違いない。