沖縄名物・ちんすこうは、現地に旅行したことがないという人でも、お土産などで一度は口にしたことがあるのではないだろうか? さっくりとした口当たりとやさしい甘さは、クッキーなどの洋菓子とも似通ってはいるもののどこか独特。日本の他地域では作られていない、唯一無二の存在だ。それにしても気になるのがその誕生経緯。ちんすこうは、いつ、どのようにして生まれたお菓子なのだろう?

新垣菓子店のちんすこう

琉球王朝時代から伝わる伝統の味

その疑問に答えてくれたのは、県内に店を構える新垣菓子店の研究開発部・大城裕子さん。昭和7年(1932)創業という長い歴史を持つ同社は、ちんすこうをはじめとした数々の銘菓を生み出し続けている名店だ。

「ちんすこうは、琉球王朝時代から伝わる非常に歴史の長いお菓子です。由来から製造方法まで記された書物もあったのですが、残念ながら戦争によってほとんどの資料が焼失してるんです」。

大城さんによると、ちんすこうはもともと、菊の花の型を使って職人が一つひとつ手作りしていたという。しかし戦後、同社創業者である新垣淑扶(しゅくふ)氏によって、焼き型の形状が、現状のギザギザした細長い型へと改良。このことによって食べやすさがアップし、大量生産されるようになり、みるみる人気菓子へと成長した。

ちんすこう(10個入り・税込648円)

以前のちんすこうに使用していたのは菊の花型

ちんすこうは、漢字表記すると「金楚こう(※こうは常用外)」となり、三文字それぞれは、「金=黄金色に輝く」「楚=ほどけるような口当たり」「こう=焼き菓子」の意味を持つという。もちろん、新垣菓子店でもその味を守るため、昔ながらのレシピにのっとりながら、現代の嗜好(しこう)も踏まえて改良を重ねるスタイルを貫いている。

「原材料においてもシンプルに、砂糖、ラード、小麦粉を基本としながら、現代の人たちにも喜んでもらえる様々なフレーバーを考えています。頻繁ではないにしろ、沖縄に暮らす人たちもちんすこうを食べますよ」。

紅イモ、チョコ、黒糖、海塩、ゴマ塩、プレーンの6種類の味が楽しめる「小亀6色詰め合わせ」(24個入り/税込648円)などの現代的なちんすこうも!

そばにはやっぱり"さんぴん茶"

そこで、沖縄ならではのおいしい食べ方を尋ねてみたところ、「合わせるとおいしいのは断然"さんぴん茶"ですね」とのお答え。「さんぴん茶も、中国との交易が盛んな時代から伝わるお茶で、お菓子との相性も抜群です。それと、ちんすこうの油分をさっと流してくれる成分を有した紅茶とも相性がいいですね」。

また、一風変わったちんすこうを楽しみたい人には、同店で販売中の「新垣ちんすこうアイス」がおすすめだとか。塩の風味がほんのり効いたバニラアイスの中にクラッシュしたちんすこうが入ったアイスで、一年を通して大人気だそう。残念ながら通販での販売はないそうなので、現地を訪れた際にぜひお店に立ち寄ってみてほしい。

直営店舗と空港内一部ショップのみで販売されている新商品「きんそこう」(8枚入り・税別1,200円)もぜひお試しを!

「琉球王朝時代より受け継ぐ『包丁人』という志のもと、伝統の味を守ると同時に、日々、新しい挑戦も続けています。今後もみなさんに喜んでもらえる商品を開発して参りますので、沖縄にお越しの際にはぜひ遊びにきてくださいね」と大城さんも自慢のちんすこうをアピール。新しい年の旅行先をまだ決定していないという人は、いち早く春が来る沖縄で、うららかな天気とおいしいちんすこうに酔いしれるのもいいかも!

※記事中の価格・情報は2014年12月取材時のもの