初詣とともに、新年に欠かせない行事のひとつである初日の出。この初日の出を「城」から眺められることはご存知だろうか。城によっては、その象徴でもある天守から日の出の瞬間を迎えることもできる。そんな、2015年の初日の出におすすめの城スポットを紹介しよう。

和歌山城からのぞこうとする初日の出。この瞬間が待ち遠しい!

雰囲気抜群の城で初日の出を眺める

その年最初に昇る太陽を拝み、一年の幸運を祈る初日の出。近年は、城が初日の出スポットとして人気を集めている。

城は初日の出を眺めるのに適した高台や山頂に建てられていることが多い。これは、有事の際の物見として、あるいは権威の象徴を目的として建設されたためで、周囲に遮るものがなく、かつ、見晴らしのいい場所に位置している。また、観光地として整備されているので標高が高くてもロープウェイを利用できるなど、訪れやすいのも魅力だ。

何より人々を惹きつけるのは城の建造物。特に城のシンボルである天守には、てっぺんから初日の出を見ようと多くの人が押し寄せる。ただし、入場制限が設けられたり、初日の出の時間は天守に登れない場合もあったりするので注意したい。また、初日の出に照らされた城の様子は、ぜひとも写真に収めたいところだ。

松山城に差し込む初日の出。独自の建築様式を持つ城は、逆光になってもその姿が映える

信長もここから初日の出を拝んだ!?

標高が高ければ高いほど、日の出が美しく見えるのは間違いないだろう。きれいな初日の出を見るなら、高所にある城へ行くのがおすすめだ。普段は日の出前に動くことのないロープウェイも、元旦は特別営業として5時~6時から運行している。

標高329mと全国の城の中でも有数の高さに位置するのが岐阜城(岐阜県岐阜市)だ。織田信長が拠点としていた城のひとつで、かの有名な「天下布武」の印を用いるようになったのは岐阜城にいた時だと言われている。ただし、信長の時代に天守があったかどうかははっきりしていない。

金華山ロープウェイは5時から運行開始され、「初乗り」の乗客にはプレゼントがある。岐阜城のある金華山は夜景がきれいなことでも知られており、初日の出までは岐阜市内の「オーロラビュー」と称される夜景を楽しめる。岐阜城天守は6時30分から開門され、別途入城料が必要(大人200円、16歳未満100円)。長野県との県境にある恵那山など、雄大な山々の向こうから昇る初日の出を拝める。なお、岐阜城の日の出時刻は7時頃である。

麓から見上げると、急峻な山の頂に建っていることが分かる

もともと岐阜城は信長の妻・濃姫の父である斎藤道三の居城で、難攻不落の城と言われていた

恵那山などの山々からのぞく初日の出。信長もこの光景を楽しんでいたかもしれない

現存天守を持つ城から拝む初日の出

夏目漱石の小説『坊ちゃん』の舞台である松山市内のどこからでもその姿を見ることができる松山城(愛媛県松山市)は、全国に12城しかない現存天守のひとつ。ロープウェイの営業は6時から、山頂本丸への入場は5時30分から可能。ただし、天守への登閣は9時からなので、隠門から太鼓門付近から初日の出を眺めることになるが、現存の建造物に囲まれて見ることができる貴重な機会だ。

標高約132mに位置する松山城からは市内を一望でき、初日の出の光が松山市全体を包み込んでいく様子を眺められる。松山城はイベントが盛りだくさんで、若水汲(く)み、鏡開き、獅子舞をはじめ、限定300人に豚汁が振る舞われる。下山後は道後温泉で身体を温めるといいだろう。なお、松山城の日の出時刻は7時10分頃である。

標高132mに位置し、天候がよければ瀬戸内海も見渡せる

松山市のシンボルとなっている松山城。天守は重要文化財に指定されている

鏡開きの中身はポンジュースと、地元ならではのイベントとなっている

錦帯橋とともに初日の出を

岩国城(山口県岩国市)周辺には、山麓を流れる錦川にかかる「錦帯橋」がある。この橋は5連のアーチが連なる特徴的な構造をしており、日本三名橋のひとつに数えられる。錦帯橋と岩国城のセットは、ぜひ撮影しておきたいところだ。

この橋を渡るとロープウェイ乗り場があり、6時30分から運行を開始する(往復で大人550円、小学生250円)。真ん中部分がせり出した独特の風貌を持つ岩国城には6時45分から入ることができる(別途料金、大人260円、小学生120円)。錦帯橋をはじめ、市内はもちろん瀬戸内海の島々や四国まで見渡すことができる。全国屈指の眺望と初日の出のコラボは、まさしく絶景と言えるだろう。なお、岩国城の日の出時刻は7時20分頃である。

錦帯橋と岩国城。天守を再建する際、麓からよく見えるよう元の位置からずらして建てられた

岩国城の眼下には錦川が流れ、遠く瀬戸内海まで見渡せる

真ん中が張り出した模擬天守。色が黒・白・黒と交互になっているのも特徴

巨大な天守から初日の出を眺める

初日の出スポットとして特に人気のある城のひとつが熊本城(熊本県熊本市)だ。築城名人と呼ばれた加藤清正が建てた城で、復元された巨大な天守は圧巻。急勾配の石垣と合わせて、見る者を圧倒させる迫力を持つ。眼下に広がる城下町とそこに差し込む初日の出が、まるで殿様になった気分を味わわせてくれる。

全国的にも有名な熊本城の天守から初日の出を拝めるというだけあって、元日だけで毎年1万人以上の人出でにぎわう。6時に大太鼓の音と同時に開園し、6時30分より天守へと登閣できる(8時30分までは頬当御門のみ開門。入場制限がかかる場合あり)。元日は入園無料で、獅子舞や太鼓の演奏などのイベントも催される。なお、熊本城の日の出時刻は7時15分頃である。

黒くそびえる熊本城天守。全国にファンが多い城のひとつだ

白んできた空に浮かぶ熊本城。初日の出に照らされる天守も撮影したい

秀吉も絶賛した眺望

豊臣秀吉が古くからの景勝地・和歌浦にも匹敵する景観だと感激したことから名付けられたという和歌山。この和歌山市内に建つのが和歌山城(和歌山県和歌山市)で、江戸幕府8代将軍・徳川吉宗が誕生した城としても知られる。天守から一望できる和歌山市内に昇る初日の出は、秀吉も絶賛した眺望とともに楽しめる。

6時から9時までは天守への入場が無料で、この時間内に訪れた先着1,000人に、かわらけ(素焼きの杯)がプレゼントされる。なお、和歌山城の日の出時刻は7時5分頃である。

復元された天守。手前にあるのは、壁と屋根が付けられた藩主専用の御橋廊下

山あいから覗く初日の出が、市街へと差し込む

雪景色に浮かぶ天守と初日の出

伊達政宗の右腕だった片倉小十郎が居城としていたことで知られる白石城(宮城県白石市)は、全国でも数少ない木造で復元された天守。熊本城や和歌山城に比べるとこじんまりしているが、城下を見下ろした時の眺めは抜群だ。

6時30分から7時30分までの1時間、無料で開放される。入場規制がかかる場合があるので、早めに訪れよう。天気によっては、一面銀世界となった白石市内に昇る幻想的な初日の出を拝むことができる。寒い地方なので、防寒対策は忘れずに。なお、白石城の日の出時刻は6時50分頃である。

白石城は一国一城令が出されたあとも、仙台城の支城として存続を許された数少ない城のひとつ

こぢんまりとした天守内から、待ち望んだ初日の出の瞬間

(文・かみゆ歴史編集部 二川智南美)

筆者プロフィール : かみゆ歴史編集部

歴史関連の書籍や雑誌、デジタル媒体の編集制作を行う。ジャンルは日本史全般、世界史、美術・アート、日本文化、宗教・神話、観光ガイドなど。おもな編集制作物に『一度は行きたい日本の美城』(学研パブリッシング)、『日本史1000城』(世界文化社)、『廃城をゆく』シリーズ、『国分寺を歩く』(ともにイカロス出版)、『日本の神社完全名鑑』(廣済堂出版)、『新版 大江戸今昔マップ』(KADOKAWA)など多数。また、トークショーや城ツアーを行うお城プロジェクト「城フェス」を共催。
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