ビジネスを通して社会課題の解決を目指すビジネスコンテスト「集まれ! よよよい仲間たち」の日本での最終プレゼンテーションが行われた。同コンテストは、アイスクリームブランド「BEN & JERRY'S」が主催となり、世界11カ国で開催されたもの。創業者のジェリー・グリーンフィールド氏は「良いことの連鎖を通じて社会に利益を還元」を実施している、ソーシャルビジネスの先駆け的存在だ。「よよよい」とは優れたビジネスアイデアによって、社会に「好影響」の連鎖を起こすという意味だそう。

最終プレゼンテーション会場の目白庭園「赤鳥庵」

審査員は「BEN & JERRY'S」創設者や起業家たち

和の趣あふれる目白庭園の数寄屋建築「赤鳥庵」で実施された最終プレゼンテーションの参加者は、「HUBchari」の川口加奈さん、「e-Education」の三輪開人さん、「土佐山アカデミー」の山本堪さん、「EDAYA」の山下彩香さん、「産休! Thank you! プロジェクト」の堀江由香里さん。この5名は、全国の応募者の中から選出された若手起業家なのだ。

審査はジェリー・グリーンフィールド氏や日本を代表する起業家たち。参加者や審査員は、アイスクリームを片手に、プレゼンテーションに耳を傾けた。マイナビニュースでは、ファイナリストの中から企業と産休・育児中の女性双方にサポートプログラムを提供しているNPO法人 Arrow Arrow 代表理事 堀江由香里さんの取り組みを紹介する。

子供を産んだ女性の職場復帰率はわずか38%!

NPO法人 Arrow Arrow 代表理事 堀江由香里さん

2010年の時点で、日本における子供を出産した女性の職場復帰率はわずか38%。62%は出産を機に退職している(内閣府男女共同参画局 男女共同参画白書 平成22年版より)。堀江さんは、「働き続けたいのに、働くことができない」「子育てか仕事かを選ばざるをえない」という女性の状況を変えるべく、Arrow Arrowを設立したのだという。

堀江さん「出産後の女性が短時間勤務で復職したいと考えていても、認可されない、あるいは短時間勤務はできても、仕事を正当に評価されづらいという現実があります。そのため、女性はキャリアに対して消極的になってしまうのです。この現状を打破するために、Arrow Arrowでは様々なプロジェクトを行っています」

その中の1つが中小企業で働く女性が、妊娠・出産後も活躍できる働き方を支援するコンサルティングプログラム「産休! Thank you! プロジェクト」だ。

堀江さん「『産休! Thank you! プロジェクト』は、女性社員の妊娠が発覚した時から、産育休中及び復帰後までをサポートしています。産休前は子育てと仕事を両立する試作や課題の洗い出し、産休取得予定者の業務に関するマニュアルの作成や面談を行います。産休明けは、時短勤務のための仕事効率化や面談を実施します。また、育児休業制度を導入することで会社が受け取れる助成金取得のアドバイスなどを通して、女性社員と企業支援もしています」

プロジェクトの特徴は、企業側のサポートも行っていること。産休制度が整っていない中小企業では、ハイパフォーマーが妊娠・出産を機に退職してしまうということが多くあるという。優秀な人材に働き続けてもらうために、Arrow Arrowにコンサルティングを依頼する企業も多いのだそう。

制度が整っていない中小企業を中心にサポート

プロジェクトでは、厚生労働省が事業主向けに実施している「中小企業両立支援助成金」「子育て期短時間勤務支援助成金」等の助成金取得をサポート。企業側の負担を軽減することで、産休取得を推進しやすくする環境づくりにも取り組んでいる。

堀江さん「プログラムでは、『子育てをしているから短時間勤務は当然』と思うのではなく、『短時間勤務でもこのような仕事ができます』と会社側に提案できる人たちを育てることを目的としています。サービスのポイントは『中小企業向け』。日本の企業の大部分は中小企業ですが、産休・育休の制度が整っていない企業も多くあります。ですから、女性の成功事例を見せることが重要なのです。それにより、会社は産育休制度の充実に向けて、積極的に動くことができます。規模が小さいからこそやる意義があるのです」

短時間勤務でも、今まで以上のパフォーマンスをすることができるという自信を持つことが重要だという堀江さん。また、育児のため時短勤務をする女性社員を見て、男性社員が育休取得を目指したり、仕事の効率を上げて労働時間を短縮し、子育てに関わろうとする人が増えるという波及効果も見受けられたそう。

同団体は「産休! Thank you! プロジェクト」以外にも「社員! Shine!」「中小企業ワークスタイル研究会」などを実施中。堀江さんは「女性の働き方が変わることで、日本の企業も変わります」とし、今後も支援プロジェクトに力を入れていきたいと熱弁した。

海外と比べて、起業する人が少ないと言われる日本。しかしながら、プレゼンターのように、社会的使命をもって起業し、ビジネスに取り組んでいる若者も存在している。彼らの熱意が日本を動かし、より良い社会を作り出す日はそう遠くはないかもしれない。