本田技研工業(ホンダ)がこのほど発売した、「N」シリーズ第5弾となる新型軽ワゴン「N-BOX SLASH(エヌボックス スラッシュ)」。都内で開催された発表会にて、開発責任者から同車のコンセプトや開発秘話などが明かされた。

ホンダ新型軽ワゴン「N-BOX SLASH」

屋根を削ぎ取った「N-BOX」のスケッチがきっかけ

発表会では、ナビゲーター役のパパイヤ鈴木さんから、「車名の『スラッシュ』って、どういう意味なんですか?」と質問が。本田技術研究所四輪R&Dセンターの開発責任者、浅木泰昭氏によれば、「スラッシュ」に「削ぎ取る」の意味が込められているという。

「N」シリーズ第5弾の開発が決まり、既存の4車種とどう差別化するか模索していたとき、浅木氏の目に留まったのはデザイン室に貼られた1枚のスケッチだった。そこには、「N-BOX」のルーフを削ぎ取ってチョップトップとし、2ドアのクーペスタイルに仕上げたクルマが描かれていた。「おそらく遊び(で描いたの)だと思う」(浅木氏)というこのスケッチが、「N-BOX SLASH」開発のきっかけとなったそうだ。

記者発表会のナビゲーターを務めたパパイヤ鈴木さん

「N-BOX SLASH」は「N-BOX」より屋根が100mm低い

窓枠に溶け込んだリヤのドアノブ

「X」グレードにはディッシュホイールを採用

チョップトップとは、古き良きアメリカで流行した、ピラーを詰めて屋根を低くするカスタム手法。これをイメージし、「N-BOX SLASH」は「N-BOX」から4インチ低いスタイルにしたという。また、スケッチでは2ドアだったが、ユーザーの使いやすさを考慮して後席にドアを設けるにあたり、リアを「隠し扉」とすることでクーペ風のスタイルを守ったのだとか。なるほど、金属調のドアノブが存在感を主張するフロントドアに対し、ドアノブの目立たないリヤは一見、ドアそのものがないように錯覚させられる。

実車を見ながら、チョップトップとクーペスタイル以外にも、「N-BOX」よりローダウンされていること、ルーフモールやフューエルリッドなど金属調の加飾が多く施されていること、ディッシュホイールが採用されている(「X」グレード)ことなどが印象に残った。どの要素からも共通して感じられたのは、カスタムテイスト、そしてアメリカだ。

個性的な外観、臨場感あるサウンドが響く室内空間

「N-BOX SLASH」の室内について、「かっこよく仕上がったエクステリアに合わせ、わくわくするインテリアをめざした」と浅木氏。とくに力を入れたのが、古き良きアメリカの世界観を表現したカラーだという。

「ダイナー スタイル」

「グライド スタイル」

「セッション スタイル」

中でもメーカーオプションとなる3種類の「インテリアカラーパッケージ」は個性的だった。カリフォルニアのロードサイドレストランをイメージした「ダイナー スタイル」は、赤を基調にチェッカーフラッグをあしらったカラーリングで、若者の集うカジュアルな空間を再現。ハワイのサーフテイストを取り入れた「グライド スタイル」は、白い砂と青い海を連想させるさわやかな色使いに。テネシーの古いライブハウスをモチーフとした「セッションスタイル」は、渋めのブラウンや木目調の意匠で、使い込まれたカウンターや革ソファーの雰囲気を表現し、落ち着いた空間に仕上がっている。

さらに、心地良いプライベート空間をめざして採用されたのが、新開発の「サウンドマッピングシステム」(「X」「X・ターボ」グレードに装備)だ。室内の隙間を利用し、メガホン効果で重低音を発生させる「バックロードホーン型サブウーファー」を専用開発。これをインパネ下部中央に設置し、さらに8つのスピーカーを前席・後席左右に配置することで、軽自動車とは思えないほどの重低音と臨場感を実現しているという。

17cmバックロードホーン型サブウーファーと17cmケブラーコーンスピーカー

リヤの12cmケブラーコーンスピーカーとアルミドームツィーター

最後に浅木氏は、「みんなで一致団結して、『突き抜けたクルマを作るんだ』と開発を進めてきました。突き抜けたデザイン、突き抜けたサウンド。お気に入りのCDを1枚持って、販売店で確認していただけたら、きっと笑顔になるんじゃないかと思っています」と結んだ。そのコメントの通り、ルックスも室内も趣味性の高さが感じられ、ファミリーのためではなく、自分のために選ぶ軽ワゴンと感じさせる1台だった。