愛知県、岐阜県で産婦人科や不妊治療施設を運営する医療法人葵鐘会はこのほど、京都大学大学院医学研究科人間健康科学系専攻(青山朋樹准教授)とともに、妊娠初期の急激な運動量増大は腰痛の悪化を引き起こすことを明らかにした。
腰痛は、出産前後における妊婦の心身を疲弊させる大きな要因だが、胎児への影響を考慮して満足できる処置がなされていないのが現状だという。一方で妊娠中の運動は、妊娠性糖尿病などの病気の予防につながるのみでなく、マタニティーブルーズ(妊娠性うつ)の改善や、腰痛改善にも効果的であることから注目されている。そこで、これまで同研究グループは、妊婦における腰痛と運動量に焦点をあてた調査を行ってきた。
今回の調査では、妊婦の日常の歩行量と腰痛の関連性を検討するために、腰痛持ちの妊婦35名に歩数計を配布し、妊娠期間を通して日常の歩行量および腰痛症状について記録紙を用いて調査した。
調査終了時、腰痛が生じた妊婦は、妊娠初期に歩行量が平均3,600歩から4,800歩へと大きく増えたが、妊娠後期に近づくと平均3,300歩まで減っていたことがわかった。一方、腰痛が生じなかった妊婦は、安定期に入った妊娠期中頃に歩行量が平均3,400歩から3,700歩へと徐々に増え、その後も4,800歩を経て4,400歩を維持しながら活動できていた。これらのことから、妊娠初期に急激に活動量を増加させることは腰痛に悪影響であることが明らかとなった。
同結果を受けて、「身体への負担が大きくなり始める妊娠初期には、負担の少ない動作を推奨する必要がある。具体的には1,000歩は約10分間の歩行に相当し、妊娠前の生活習慣も考慮しながら、これを目安に運動習慣を推奨するなどの指導を実施することが必要である」と同法人。今後は妊娠中の腰痛の原因となる骨盤のゆがみや姿勢の変化なども含めて、より包括的かつ詳細な調査を行う予定だという。