国立感染症研究所は12月5日、2014-2015年シーズンのインフルエンザの定点当たり報告数が、流行開始の指標となる数値「1.00」を上回ったことを明らかにした。昨シーズンに比べて3週間早い流行期入りとなり、同研究所によると過去10年で2番目の早さだという。
日本でのインフルエンザの流行期は3月までが一般的とされており、今年は流行期がやや長くなる可能性がある。年末年始に感染してしまうと、クリスマスや忘年会、初詣でなど予定していた楽しいイベントがご破算になってしまうこともありうる。
ただ、インフルエンザはしっかりと対策を講じれば感染リスクを低減できる。そのためにはまず、"敵"のことを詳しく知っておかなければならない。
「どうやって感染するのか」「予防策は何なのか」「どんなインフルエンザ対策グッズがあるのか」「治療薬はあるのか」……。これらを学んでおくことで、インフルエンザへの恐怖もだいぶやわらぐはず。ぜひ、今冬はインフルエンザに悩まされないで過ごしてもらいたい。
インフルエンザの症状と感染経路
まず、そもそもインフルエンザを正しく理解できているだろうか。「風邪の延長みたいなものでしょ? 」などと考えている人もいるかもしれないが、風邪とインフルエンザはまったくの別物だ。
風邪
さまざまなウイルスが原因となって引き起こされる。主な症状として「のどの痛み」「鼻水」「咳」「くしゃみ」などがある。熱もそこまで高くはならない。
インフルエンザ
インフルエンザウイルスが原因となって引き起こされる。主な症状として「38度以上の発熱」「頭痛」「全身のだるさ」「関節の痛み」などがある。免疫力が低下している人や高齢者が感染すると、肺炎を併発するケースも見られる。
インフルエンザの主な感染経路はくしゃみや咳、会話などによる飛沫感染のため、密集した地域では集団感染が見られる。一度流行が始まると、短期間に多くの人へと感染する点もインフルエンザの特徴。冬になると、「インフルエンザによる学級閉鎖」などのニュースを目にしたことがある人も多いことだろう。それだけ、感染力が強いのだ。
インフルエンザウイルスには「型」がある
インフルエンザを引き起こすインフルエンザウイルスには、さまざまな「型」がある。そのタイプは「A型」「B型」「C型」と大別できるが、大きな流行の原因となるのは「A型」と「B型」だ。国立感染症研究所によると、現在日本で流行しているインフルエンザウイルスは、「A(H1N1)亜型」と「A(H3N2)亜型(いわゆる香港型)」および「B型」の3種類だという。
この型を見て、「新型インフルエンザはどこに入るのか」と感じた人もいるかもしれないが、新型インフルエンザはこれらの型とは異なる位置づけだ。
私たちの体は、ウイルスの「抗原」(抗体が異物を認識して破壊するための標的)を目印にして「こいつは体にいてはいけない異物だ! 」という判断をし、ウイルスを撃退しようとしている。風邪をひいたときなどに熱が出るのは、ウイルスを撃退しようと体が防御反応を起こしているためだ。
「A型」のインフルエンザは、その抗原性が少しずつ変化する「連続抗原変異」が頻繁に起こる。毎年世界中で流行していることから、「季節性インフルエンザ」とも呼ばれている。この抗原が大きく変化すると、体がウイルスへの急激な変化に対応できず、通常のインフルエンザシーズン(日本では例年12月~3月)以外に感染が拡大することがある。これが新型インフルエンザだ。
過去には数千万人の死者を出したことも
厚生労働省が「国民の健康と生命、生活に、場合によっては医療体制を含めた社会機能や経済活動にまで影響を及ぼす可能性があるもの」と定義しているように、新型インフルエンザは時として多数の死者を出す。
過去の事例で言えば、1918年の「スペインインフルエンザ」(スペインかぜ)や、1957年の「アジアインフルエンザ」などが新型インフルエンザに該当。特に「スペインインフルエンザ」は、全世界で4,000万人以上の死者を出したといわれているほどの猛威をふるった。
日本では2009年に、「(H1N1)2009ウイルス」による新型インフルエンザが流行。免疫がなかったため、秋ごろを中心に感染者が拡大した。翌2010年には目立った流行が確認されておらず、「(H1N1)2009ウイルス」は「A(H1N1)亜型」として季節性インフルエンザとして取り扱われるようになった。
ワクチンや免疫がなく「パンデミック」(世界的大流行)につながる可能性もある新型インフルエンザは、突如として出現して場合によっては死に至る。「たかがインフルエンザ」などと軽視する姿勢は間違い。今後もし「新型インフルエンザ」という言葉が流行しだしたら、細心の注意を払う必要があることを覚えておこう。
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