もらって嬉しい年賀状。でも年賀はがき買ってきて書いて出すのは面倒だ。もう期限が迫ってきた! かといってありきたりのデザインで出したくない…。毎年のことながら頭が痛い。
しかし今はスマートフォンで何でもできる時代。スマホ年賀状アプリを使えば簡単に年賀状が送れる。そして数あるアプリの中でも注目を集めているのはCONNECTITが提供する「スマホで年賀状2015」。受注数は前年比298.3%(2014年12月14日現在)で、既に100万枚を突破しているという。同社代表取締役社長の飯野法志氏に好調の要因を聞いてみた。
日本人のクリエイティブ活動としての年賀状作成
--年賀はがきの売り上げが年々減っているのに、どうして年賀状に着目を?
年賀状というのは日本人が何かをつくり、アウトプットする手段としてすごく興味深い分野だと考えました。みなさんが行っているクリエイティブな活動を、日本の文化として残したいという気持ちもありましたね。「人が何かをつくりたいという気持ち」をサポートしたいという想いです。
--不安はなかったですか?
ビジネスとして成り立つのか、収益を生み出せるかということに関して、マーケットの縮小は非常に大きな問題だったのですが、日本郵便さんをはじめとする関係企業の方々が、良い取り組みだと思うのでぜひ応援したい、とチャレンジを支持してくれたというバックボーンがあったので突っ走ることができました。
ターゲットを設定しなければ、エッジのたった企画にはならない
--「ネットで年賀状」と「スマホで年賀状」のサービスを提供されていますが、「スマホで年賀状」の受注数が大幅に伸びています。理由は何だとお考えですか?
スマートフォンの普及が進んでいるという状況は大きいですね。最近は特に、女性のニーズを見込んでいます。これまで年賀状というと、お父さんがデジカメから写真を取りこんでPCで仕上げて…という傾向があったのですが、スマホで年賀状を作れるとなると、今度は女性が年賀状作成の主役になってきます。今年は20歳代後半から30歳代前半の方がメインターゲットになっています。特にお子さんがいらっしゃる女性ですね。
--具体的にはどういったアプローチを?
年賀状市場でいうと写真つきのものがすごく多いんです。ご家族の写真とかお子さんの写真ですね。そして日常的な写真っていまはほとんどスマートフォンで撮りますよね。「スマホで年賀状」ではスマートフォンにある写真を簡単に取り込めるので、特にお子さんがいる層にターゲットを絞り込むと伸びるのではないかと意識しています。テンプレートデザインもオシャレでカワイイ、写真が映えるものを増やしています。
--デザインや使い勝手ではどんな特徴がありますか?
500種類以上のテンプレートを提供していて、オリジナリティあふれる年賀状がつくれます。また人気テンプレートのトップ10はすべて写真あり年賀状で、より多くの写真を使いたいというニーズに応えて、使用できる写真を昨年度の3枚から5枚に増やしました。
--ターゲットを考えた際に「みんなに届けたい」といった結論になってしまうこともあると思うのですが、どのように絞り込まれているのですか?
やはり、ターゲットが決められないと、エッジが立った企画にはならないですね。スマートフォン自体が若い世代に支持されていることを考えて、更にふだん写真を使っているのは…と考えていき、20代後半~30代前半の女性、と絞り込まれていきます。
ただ、年賀状は国民的なものですから、アプリ自体のターゲットを絞り込んでいるのではなく、例えば10代~20代に対しては、「進撃の巨人」とコラボしたアプローチなど、いくつかのターゲットを設定して、それぞれにあった企画を立てています。若年層については、年賀状自体が既に身近な存在ではないため、まずは「面白そうだからアプリにさわってみよう」と思ってもらうことを目指しました。
人気マンガ「進撃の巨人」と驚きのコラボ
『進撃のマンガ年賀状』購入者に抽選で当たる超大型年賀状。なんと通常はがきの10倍サイズ |
--『進撃の巨人』とのコラボデザインを見て驚いたのですが…
人気マンガとのコラボレーションは難しかったのですが、年賀状に馴染みのない若年層に興味を持ってもらいたくて、「進撃のマンガ年賀状」企画を進めました。
--どんな企画ですか? 具体的に教えてください
作中の人気キャラクターや巨人の画像を使って、マンガの一コマに写真を入れる「フォトフレームタイプ」と、自分で考えた台詞を入れる「台詞入力タイプ」の全18種類のデザインテンプレートを提供しています。また購入者に抽選で「超特大年賀状」プレゼントキャンペーンも展開しています。
--ファンにはうれしい企画ですね
正直、結果は見てみないとわかりませんが、アプリのダウンロードはすごく増えました。若年層が年賀状を出す、という行動につながって年賀状文化の継承につながるならば、また次の企画をやってみたいですね。
短期勝負の年賀状。克服すべきはスピード感
--年賀状ビジネスは、短い期間に多くの作業が集中しますよね
そうですね、ネットやスマートフォンで年賀状を簡単に作って送れるようになって、さらに後ろ倒しになっている傾向があって、自分たちの首を自分たちで絞めているように感じるときもあります(笑)
--翌日配送を実施するにあたってデータ処理や印刷、配送で協力会社さんに無理を言うこともあるのでは?
年賀状のマーケットというのは、年賀状自体に直接影響される会社が多いんです。日本郵便さんはもちろん、印刷会社さんも年賀状印刷を自宅プリンターでやられるよりも、きちっとした印刷物できれいなものを体験してもらいたいと思うんです。出来ないことがひとつでもクリアできれば、次のマーケットが広がるというポジティブな意味合いで応援してもらっています。とはいえ、同業各社さんも同じだと思うのですが、分散させるように早期割など導入したりしているんですけど、なかなか…。
目指すは通年サービス提供のプラットフォーム
--年賀状が終わって年が明け、新しく考えていることはありますか?
年賀状は1年に1回しかない短期的なプロジェクトなので、通年でサービス提供できるようなプラットフォームをやりたいと思っています。暑中見舞いなどのはがきを使ったリアルなコミュニケーションのサービス提供ですね。旅行に行ったときに、旅先から簡単にカードが送れるようなサービスも考えています。
--ビジネスにあたって、飯野社長が一番大事にしていることは何ですか?
僕のキャリアはデジタル領域で形成されていますが、最終的にアナログでリアルな部分が世の中を突き動かしていると思うんです。デジタルとアナログの関わりをすごく大事にしたいですね。自分たちのサービスでシェアが増えたから喜ぶのではなく、利用者に何を還元できているのか、利用者の立場になって考えていければと思っています。
--ありがとうございました