英BBCが中国にあるPegatronのiPhone 6製造工場で撮影した番組において、Appleが過重労働や未成年就労などコンプライアンス違反を行っていると告発して話題になっている。一方のAppleもBBCへの反論と非難の声明を出しており、Appleとそのサプライチェーンを巡るコンプライアンス問題が再燃しつつある。
同件はBBCが放映した「Panorama」という特集コーナーでの告発記事が発端となっている。現在、iPhone 6の生産ラインは従来のFoxconnに加え、iPhone 5cを製造していたPegatronが加わっての複数ライン体制となっているが、このうちPegatronが上海郊外に持つ生産ラインでの現場の様子がBBCの番組の中で紹介され、過酷な労働が常態化していると報じられている。
例えば同生産ラインでは12時間シフトの中で作業員が席でそのまま寝付いていたり、Mac向けの部品生産ラインでは連続18日勤務で1日の休日申請が却下されていたり、あるいは最長シフトが18時間勤務だったりと、ストレスで不眠症状を訴えたりする従業員もいるという。BBCによれば、同番組においてAppleへのインタビューを申し出たが同社に断られており、代わりに「Apple以上に安全で公正な労働環境を保証している企業はない」とのコメントを紹介している。
実際にAppleによれば、Pegatronだけで100万人以上の労働者の勤務時間調査を行っており、その平均値は週あたり55時間だったという。過去、2010年ごろに同社は深センのFoxconn工場で自殺が相次いだことを受けてサプライチェーンのコンプライアンスを大幅に強化し、定期レポートを報告するようになっている。
だが、今回のBBCのレポートでは前述のような過重労働だけでなく、従業員の住環境も満足のゆくものではないとの報告も行っており、サプライチェーンの拡大とともにコンプライアンス遵守が必ずしも行われていない可能性があるようだ。このほかBBCのPanoramaでは、"錫"の産出で知られるインドネシアのバンカ島(Bangka)において、違法鉱山での児童労働が行われ、ここで得られた"スズ"がAppleのサプライチェーンの中で利用されていることを報告している。
英Telegraphでは、同件についてAppleの事業担当SVPであるJeff Williams氏が英国で働く5000人のスタッフに宛てたメールにおいて、同氏ならびにCEOのTim Cook氏がBBCの報道に深く失望しているとのコメントを寄せたうえで、その内容に反論しているとメールの全文を紹介している。Telegraphの説明によれば、Williams氏はまだまだ改善の余地はあるものの、サプライチェーンにおける今年2014年の就業上限である1週間あたり60時間という労働時間に対して、コンプライアンスの達成度は93%だったとしており、必ずしもBBCの状況報告が全体を表したものではないとの意見を述べているようだ。
またBBCが後半で報告したインドネシアでの違法鉱山で採取されたスズがサプライチェーンに入ってきている件について、Williams氏はそうした事実があることを認め、現状で中間業者が多数いるなかでそうした違法スズが混入することは避けにくく、問題解決に取り組んでいるとしている。解決方法としてはサプライチェーンにインドネシア産のスズを使わないことを厳守させることが近道だとしながらも、Appleではあえて違法鉱山の問題に直接取り組んでいくべきだとし、根本からの解決を目指していく方針を示した。
ここ数年は比較的落ち着いていた印象のあるサプライチェーンのコンプライアンス問題であり、Tim Cook氏自身もこうした問題への取り組みに積極的な人物だといわれるが、一方でAppleの事業拡大とともにサプライチェーンが拡大していくなか、監視対象は非常に膨大なものとなり、問題の根本解決は難しい部分も大きいだろう。今後の同社の動きに注目だ。