イクメンという言葉が世の中に定着して久しいが、”イクボス”という言葉をご存知だろうか?

イクボスは育児に理解のある事業主や上司のこと。内閣府男女共同参画局のウェブページによれば、男性の育児参加・育休取得を支援する目的で開催された群馬県のセミナーで使われたことがきっかけで生まれた言葉だという。

今回マイナビニュースでは、「うちにイクボスがいます」と手を上げてくれたフェイスを訪問。育児アプリ開発を行う”イクメン”の金光泰佑さんと、その上司である”イクボス”小澤真知子さんに、会社でのイクボス事情についてお話を伺うことができた。

株式会社フェイスの金光泰佑さん(左)と小澤真知子さん(右)

「イクボス」と呼ばれて

――最近は部下の育児参加に理解のある上司を「イクボス」と呼ぶそうです。金光さんにとって小澤さんはイクボスですか?

金光さん「はい、『イクボス』と呼べると思いますね。
もちろん仕事をきちんとしていることが前提ではありますが、保育園行事などへの参加にも理解があります。また、妻のことを気にかけてくれて、「たまには早く帰ったら」と声をかけてくれることもあります。
育児の悩み事について相談することもありますし、会社の上司というだけでなく、育児経験の先輩という面があると思いますね」

――世の中には「子供が熱を出したぐらいで帰るな」と育児に理解の無い上司もまだまだ多いと思います。

金光さん「私の友人の男性で、奥さんがインフルエンザで倒れてしまい、自分がどうしても子供の面倒を見なければならずに有休を取得したら、上司から嫌味を言われた…という人がいます。世間でイクメンへの理解が広まっているとはいえ、まだまだそのような職場でつらい思いをしているパパママは多いと思いますね」

――小澤さんは、ご自身が『イクボス』と呼ばれることについてどう思いますか?

「上からしてもらったことを部下たちに返してあげたい」

小澤さん「『イクボス』という響きにはなかなか慣れないんですが…(笑)。
私が出産したのは12年前ですが、実は今の会社で、産休も育休も私が第一号だったんですよ。弊社の社長は理解のある人で、『いつ戻ってくるの?』ぐらいの感じだったので、働きながら育児をするということに迷いはありませんでした。
職場に戻ってきてからも、色々な場面で職場のみなさんに助けてもらって、ここまで来られたと思います。今は上からしてもらったことを部下たちに返してあげたいなと思っています。
その思いが、自分をイクボスと呼ばれるようにしてくれたと思いますね。
ここ3、4年でパパママになる人が一気に増えました。社内で時短制度を使っている人もいますし、子育ての話をする機会も増えましたね」

――世のパパママの中には、「周りに迷惑をかけてしまっている」と育児と仕事の両立に悩んでいる方も多いかもしれませんね。イクボスから何かアドバイスはありますか?

小澤さん「今は大変かもしれないし、ペースダウンせざるを得ないときもあるかもしれません。でもそういう時期がずっと続くわけではない。仕事を長いスパンで考えてほしいと思います。
ただし、仕事に対する責任感はしっかり持つべき。与えられた仕事はできるときに集中してきっちり仕上げるようにする。そうやってがんばっていればいざというときに周りも応援してくれるはずです」

イクメンとイクボスが作ったアプリ

金光さんは育児経験を活かし、育児アプリの開発を担当されているそうだ。例えば育児に関するQ&Aや成長の管理手帳などいくつかの機能をまとめたスマホアプリ「Baby Smile」は、金光さん主導で開発されたという。

「社内中のパパママに聞いて機能を考えました」

金光さん「いまウチには6歳と3歳の息子がいるのですが、長男が生まれたばかりの頃、夜泣きが本当にひどくて、妻が憔悴しきった様子で育児手帳をつけていたんですよ。子供が起きないように暗闇で、寝不足の妻が書くものですから、読めないようなヨレヨレの字でした。
そのとき『もっと簡単に育児記録を付けることはできないか』と思ったのですが、当時はスマホなどほとんど普及していない状況でしたからね。2年前に弊社サービスのユーザーから企画を集めるコンペがあり、前身となる育児アプリができました。それをバージョンアップする形で生まれたのが「Baby Smile」です。
少しでもママの負担を軽くするにはどうしたらいいものかと。これはもう育児している人に聞くのがいいと、妻はもちろん、社内の子育て経験がある人間に聞いて回ったり、育休中の社員にメールを送ったりして、意見を集めて機能を考えました」

――金光さん自身がこだわった点は?

社員の奥さんの本当の子宮の音を入れたという「泣き止み音」がユニーク ※クリックで拡大

金光さん「子どもの健康に関する『Q&A』機能ですね。どんな症状のときにどうすべきかが、一覧してすぐにわかるようにデザインしました。 初めてのお子さんだと、パパママもちょっとしたことに動揺しがちということは経験上わかっていましたから、なるべく細かい情報も入れるようにしました」

――ビニールの音、麺をすする音、掃除機の音などが入った「泣き止み音」もおもしろいですね

金光さん「どれも子宮の中で赤ちゃんが聞いている音に似ているんだそうです。「お腹の中の音」という泣き止み音は、実際に弊社社員の奥さんの子宮の音を録音したものなんですよ(笑)」

――小澤さん、働くイクボスという視点から見ると、このアプリはどうでしょう?

小澤さん「妊娠しながら働いていると、例えばお腹に張りがあったりしても、張りがどの程度のものか、どのくらいの期間続いているのか…細かいところまで覚えていられません。自分の体調を簡単にでも記録していくことができるので、赤ちゃんが生まれるまでママたちに安心して過ごしてもらえるアプリになったと思いますね」

育児するパパママの痒いところは、育児するパパママが一番よく分かる。イクメンと、それを支えるイクボスがいたからこそ生まれたアプリと言えるかもしれない。 インタビューを通じて、今後イクボスやイクメンは、社会を動かしていくアイデアを生み出す源になるだろうと感じた。あなたはどう思っただろうか?

アプリ詳細

アプリ名:Baby Smile
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価格:無料
対応OS:iOS 6.0以降、Android 2.3以上