2014年11月は北海道新幹線の動きが目立った。そして新型車両導入のニュースが続々と届いた。中でも静岡鉄道の新型車両はインパクト大。一方で、「レイルウェイ・ライター」として活躍された種村直樹氏が亡くなった。時代の移り変わりを感じさせる月だった。

北海道新幹線では、12月から列車走行試験も始まった

北海道新幹線のレールがつながり、列車名も決まる

ついに北海道新幹線のレールがつながった。11月1日、JR北海道は新幹線木古内駅構内でレール締結式を開催した。軌道敷設工事は2012年3月から始まり、約2年8カ月で完了となった。その後、電気や信号関連の付帯工事が進捗し、12月からはH5系新幹線車両による試験運転を開始。青函トンネルを通過している。

2016年3月までに開業予定の北海道新幹線について、JR北海道の動きが活発だ。11月20日には列車名と在来線アクセス列車の車両について発表している。

北海道新幹線の列車名は東北新幹線を踏襲し、東京駅・仙台駅発着が「はやぶさ」、盛岡駅・新青森駅発着が「はやて」となった。これは同時に北海道新幹線の運行パターンの発表でもあり、いままで新青森~函館間を結んだ特急「白鳥」「スーパー白鳥」の名前の消滅も意味する。伝統ある列車名と、鮮やかなグリーンが印象的な789系の去就も気になるところだ。

函館~新函館北斗間の在来線アクセス列車については、733系1000番台の新造が発表された。札幌近郊で運行している733系交流電車をベースとした3両編成×4本の合計12両。外観はステンレス車体の銀色に、H5系のシンボルラインとなる「彩香パープル」と、JR北海道のコーポレートカラー「ライトグリーン」の帯を巻く。客室はオールロングシートとなる。1編成あたりの定員は441名。

接続する新幹線H5系の定員は731名だから、満員で到着した「はやぶさ」「はやて」の乗客を乗せきれない。もっとも、東京や仙台からの乗客全員が新函館北斗駅に向かうわけでもないし、新函館北斗駅から札幌方面特急列車へ乗り継ぐ乗客も多いだろう。733系1000番台の定員441名は十分といえそうだ。ただし、この定員は立ち客も含む。ロングシート車はクロスシートに比べて座席数が少ないだけに、椅子取りゲームが始まるかも!?

新車登場&導入発表、静岡鉄道が広く話題に

箱根登山鉄道の新型車両3000形「アレグラ号」

北海道新幹線のレールがつながった11月1日、関東では箱根登山鉄道の新型車両「アレグラ号」こと3000形がデビューした。人気観光地・箱根のニューフェイスとあって、テレビニュースの関東ローカル枠や週末のバラエティ番組などでも紹介されたようだ。

同社が提携しているスイス・レーティッシュ鉄道をイメージした真っ赤な車体と大きな窓ガラスが特徴。四季折々の車窓の楽しみを予感させる。「アレグラ」はスイスの言葉で、挨拶するときに使うというけれど、ネットで検索するときは「アレグラ号 列車」「アレグラ号 箱根」などで絞り込もう。「アレグラ」だけだと鼻炎薬になってしまう。

ネットで大きな話題となったニュースといえば、静岡鉄道の新車導入計画だ。2016年から運行開始。8年間で2両編成×12本を製造し、現在の1000形を置き変える予定。40年ぶりの新車導入で、「地方鉄道でありながら新車」「洗練されたデザイン」が鉄道ファン以外にも話題となった。地方鉄道は大手私鉄の中古を導入する例が多いけれど、静岡鉄道は自社発注・自社製造を貫いており、1000形も東急車輛(現・総合車両製作所)に発注した新車導入だった。

新型車両の驚きも大きいけれど、1000形が40年間も運行され続けている事実も特筆に値する。東急車輛のステンレス車両技術が優れていたと実証した功績は大きい。また、「車齢末期の中古車を買い換えるより、新車を長く使う」という静岡鉄道の戦略も見事だ。1000形ステンレス車両の新車採用に先見の明があった。

JR東日本の新型車両E129系

総合車両製作所といえば、11月30日にJR東日本の新潟地区でE129系近郊形電車がお披露目され、12月6日から営業運転が始まっている。総合車両製作所は、東急車輌とJR東日本新津車両製作所が母体となった会社だ。新津車両製作所はおもに首都圏向けの通勤電車を製造しており、新潟地区向けの新車製造は初。新津地区で試運転をするけれど、地元の人々は工場公開イベント以外で新津製の電車には乗れなかった。その意味で、E129系は電車の「地産地消」といえそうだ。

JRグループではもうひとつ、JR九州が架線式蓄電池電車の2016年実用化を発表している。筑豊本線の非電化区間、若松~折尾間(若松線)に導入するという。架線下の走行時や停車時にリチウムイオン電池へ充電し、その電力で非電化区間を走行する。家や職場で充電し、外で使うスマートフォンのようだ。同様の方式はJR東日本が烏山線EV-E301系「ACCUM」で実用化しており、交流電化区間ではJR九州が初となる予定。筑豊本線は折尾駅を境に電化区間と非電化区間となっており、車両運用が分断化していた。架線式蓄電池電車の投入で直通運転も行われるとのことで、便利になりそうだ。

信楽高原鐵道が約1年2カ月ぶりに再開

11月29日、信楽高原鐵道信楽線が復旧した。2013年の台風18号で橋桁が流されて以来、不通になっていた。

信楽高原鐵道が11月29日から運行再開された

旧国鉄信楽線時代、赤字路線として「廃止宣告」を受けたが、地元が第3セクター鉄道を設立して存続。しかし1991年に列車衝突事故を起こし、遺族への賠償、JR西日本からの賠償金返還訴訟などで窮地に陥った。その後、JR西日本とは債権放棄で和解、自治体と上下分離で合意し、新しい枠組みで再出発した矢先の災害だった。

全線の線路を保有する甲賀市は、復旧予算次第で廃止も覚悟したという。しかし、滋賀県と国の支援を受ける形で復旧が決まった。その背景には、近江鉄道やJR片町線(学研都市線)と接続する「びわこ京阪奈線」構想も後押ししたと思われる。終点の信楽駅は商売繁盛のシンボル「信楽焼のたぬきの置物」で有名だ。たぬきさんの御利益で集客し、業績アップを期待したいところだ。

種村直樹氏、高倉健氏、ご逝去

11月6日、「レイルウェイ・ライター」こと種村直樹氏が療養中の病院でご逝去。享年78(歳)。毎日新聞記者時代から雑誌「鉄道ジャーナル」などに寄稿し、1973年に鉄道分野の専業著述業として独立。『周遊券の旅』『鉄道旅行術』をはじめとする著書や、鉄道雑誌記事の執筆、きっぷの知識に関する質問コーナーなどで、ブルートレインブーム世代に支持された。2000年にくも膜下出血で入院されて以降は活動を控え、2010年からは闘病生活に専念されていたという。

種村氏が亡くなった翌日(11月7日)には、自動車評論家・徳大寺有恒氏の訃報もあった。ブルートレインブーム世代の多くはスーパーカーブームも経験しており、種村氏と徳大寺氏の訃報に、時代の区切りを感じた向きも多かったことだろう。

11月10日は俳優の高倉健氏がご逝去。任侠映画で一世を風靡し、その後も数々の映画に主演。鉄道ファンにとっては映画『新幹線大爆破』『駅 STATION』『鉄道員(ぽっぽや)』の主演が印象深かった。11月28日には俳優の菅原文太氏も亡くなられた。こちらは『トラック野郎』で一世を風靡している。

11月は文壇と俳優の分野で、鉄道と自動車に縁のある方々が去った。故人を偲びつつ、新しい時代に進んでいきたい。