感染すると「吐き気」「嘔吐(おうと)」「下痢」などの症状に悩まされるノロウイルス。時には集団食中毒を引き起こすこともある。口からウイルスが入ることによる経口感染が感染ルートとはわかっていても、その対応策を知っていればさらに感染リスクは低減できる。
感染を防ぐため、家庭ではどのような方法が有効なのだろうか。ライオンのヘルスケアマイスター・山岸理恵子さんに、家庭での注意点を挙げてもらった。
手洗いは効果的だが、アルコール消毒は……
ノロウイルスを避けるためには、まずは丁寧な手洗いが肝心だ。だが、消毒によく使用されるアルコールは、ノロウイルスには有効でないという。
「ノロウイルスは一般的なウイルスに比べて小さく、手のシワなどに入り込みやすいです。せっけんで念入りに洗浄し、流水でしっかりと洗い流してください。また、『エンベロープ』と呼ばれる皮膜を持たないウイルスの構造上、アルコール消毒はあまり有効ではありません。消毒には次亜塩素酸ナトリウムを使用してください」。
次亜塩素酸ナトリウムとは、市販の塩素系除菌・漂白剤に含まれている成分。塩素濃度が200ppmになるように薄めて、浸すように拭くことでウイルスを失活化できる。衣類なども次亜塩素酸ナトリウムで消毒できるが、色落ちなどが発生する場合もある。使用する際は注意しよう。
熱処理は85℃以上で1分以上を徹底
ノロウイルス対策には熱処理も有効とされる。
「85℃以上のお湯などで1分以上加熱することによって、ノロウイルス感染の可能性は低くなります。食材はもちろん、布巾や包丁などの調理器具にも有効です。不要な鍋で煮沸消毒したり、調理器具をトレーなどに入れて熱湯を注いだりすることで、ウイルスを失活させることができます。衣類は次亜塩素酸ナトリウムで消毒したり、熱水洗濯した後にも高温の温風が出る乾燥機を使用したりすると、殺菌効果が高まります」。
調理器具や食器、台拭きなどは熱処理をすることで感染リスクを抑えられそうだ。食器洗浄などの際に一手間加えて、ノロウイルスを遠ざけるようにしよう。
吐しゃ物などを処理する時はゴム手袋やマスクを
家族に感染者が出てしまった場合、吐しゃ物やふん便に接触することによる二次感染も多い。処理する際には細心の注意が必要だと、山岸さんは話す。
「吐しゃ物などを処理する場合には、必ずゴム手袋やエプロン、マスクなどを着用して直接触れないようにしてください。床などを汚してしまった場合は、まずペーパータオルなどでふき取り、最後に次亜塩素酸ナトリウム溶液でふき取ります。汚れものはビニール袋などにまとめて密閉し、拡散しないようにします。ビニール袋の中にも次亜塩素酸ナトリウム溶液を入れて、ウイルスを失活させてから廃棄しましょう」。
吐しゃ物などは、乾燥するとウイルスが空気中に舞い上がってしまうため、乾く前に処理することが重要となる。また、汚してしまった衣類の洗濯にも注意が必要だ。
「汚してしまった衣類をそのまま洗濯してしまうと、洗濯槽にノロウイルスが残ってしまう場合があります。バケツなどを使って、手洗いするようにしましょう。その際、水しぶきなどを吸わないように気をつけてください。洗った水も、シンクなどに流すとウイルスがそこに残ってしまうため、トイレに流してしまったほうがよいでしょう。できれば、次亜塩素酸ナトリウムを使って消毒するのがベストです」。
家庭でも適切な処理をして、ノロウイルスのまん延を防ごう。
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取材協力: ライオン ヘルスケアマイスター・山岸理恵子さん
ボディーソープほか、スキンケア商品の開発に長年携わった後、現在のヘルスケアマイスターとなる。商品開発の経験を生かし、主にライオン快適生活研究所にて健康で快適な暮らしのための情報発信に尽力している。