スペインからご紹介する国際結婚カップルは、結婚19年を迎える、旅行代理店ランドオペレーターとして多忙な幸子さん(51歳)とフリーの産業デザイナー、エリセオさん(51歳)のお2人です。お嬢さんが今秋から留学に旅立ち、久しぶりの2人きり。新婚時代に戻られたご様子です。19年という年月をかけて構築された結婚生活とは、どんなものなのでしょうか。

妻の幸子さん(日本人、旅行代理店ランドオペレーター、51歳)と夫のエリセオさん(スペイン人、フリーの産業デザイナー、51歳)

■ふたりのなれそめと、結婚して何年目なのか教えてください。

私が当時勤務していた会社の経営者がスペイン囲碁の会の創立者で、エリセオは会員の1人でした。この囲碁会のパーティーに上司から招待されたのをきっかけに、グループ交際が始まりました。ある時、エリセオに2人だけで食事をしたいと誘われたのですが、その帰り道、彼が暴漢に襲われケガをしてしまったんです。そのお世話をしたことから、交際が始まりました。もう、結婚19年目です。

それぞれの世界を保ちつつ、2人で楽しい時間を共有するのが大人のカップルの鉄則

■日本の結婚と比べ、特別で驚くようなことや、独特な風習はありますか?

スペインでは、結婚前に"独身生活お別れパーティー"を同性の友人と行います。普通に食事をしたり、 飲みに行ったりすることがほとんどですが、中には独身最後ということでハメをはずす人たちもいるようです。

結婚後も独身時代と同じ生活を続けられると勘違いしていた私はパーティーはしませんでしたが(笑)、エリセオは友人たちと飲みに出かけ、深夜に弟と友人に担がれて戻ってきました。聞いた話ですが、結婚前日のこのパーティーで飲みすぎて意識の無くなった新郎 を、悪友たちがわざと 遠方行きの列車に乗せ、意識の戻った新郎が死ぬ思いで結婚式に駆けつけた、なんてこともあるそうです。

結婚式では、新婦はある3つのものを身につけなければなりません。新しいもの1つ、人から借りたもの1つ、青い色のものを1つ。花嫁衣裳や下着や小物に3つをあてはめて準備します。「なぜ?」と聞いても、答えられる人はいませんが、「そうすれば幸せになる」と言われてしまえば、誰もが万が一のためにそろえるようです。ちなみにこれは花嫁だけで、花婿の身につけるものに関して縁起担ぎはありません。

それから結婚式ではご祝儀に新郎新婦にお金を渡します。これは日本と同じですが、スペインでは、新郎のネクタイ、新婦のガーターを切り刻んだ一片 と交換にお金を渡すんですよ。新郎、新婦からの幸せのおすそ分けでしょうか。披露宴の時に新郎新婦の友人たちがお皿にネクタイとガーターを載せて各テーブルを回るのです。先ほどまで身につけていたものですから、日本人の私は「そこまでしなくても……」と思ってしまいます。でも、私もやはり郷に入れば郷に従え。ネクタイとガーター切りました(笑)。

スペインの七五三、"コムニオン"を祝う姪っこ(左)と一緒に撮影した家族写真、照れ屋(?)なお嬢さんも今では大学生

■さしつかえなければ世帯年収や夫婦の内訳などを教えてください。

世帯年収はスペインでは中流家庭の平均的な金額だと思います。内訳は夫4割、妻6割です。

■家計はどちらが管理していますか? 何かうまくやりくりするコツはありますか?

家計の管理は妻がしています。優先順位を決めて 不要な物は購入しない。日常の洋服は女性の友人たちとのリサイクルを利用。外食はせず、家で料理して食べるように心がけています。

■どんな家に住んでいますか?

3LDKのマンションです。歩いて3分のところには川沿いに遊歩道や公園もあります。サッカーチームのアトレティコ・マドリッドのホームスタジアムのすぐ近くで、マドリードの中心地までバスで10分ほどの便利な場所でもあります。 

■家事はどのように分担していますか?

妻が7割、夫が3割。夫がする家事は買い物の同伴、ゴミ出し、妻不在時の料理などでしょうか。

■ちなみに、昨日の晩ご飯は?

昨晩はワインの晩酌用おつまみ数皿(お昼の残りや切って載せて並べるだけの簡単な物)で済ませました。スペインでは昼が正餐で、夜は比較的軽いのです。日本と反対ですね。きゅうりの輪切りにアンチョビをのせたもの、アボガドとサーモンの刺身、ラ・マンチャ地方のチーズ、焼き鳥数本、魚すり身の唐辛子入りガーリックオイル炒めといったところ。

きゅうりとアンチョビ、アボカドとサーモン、ラ・マンチャ地方のチーズ、そして焼き鳥、国際色豊かなある日の夕食

■お互いの好きなところは?

夫: 後述の嫌いなところを除くすべて。

妻: 粘り強い。へこたれない。楽観的。好奇心旺盛。

■夫・妻の嫌いなところは?

夫: ああしろ、こうしろと、いろんな事を指図する。やり方も自分の思うやり方でないと気に入らなくて怒る。自分をそのまま 受け入れてほしいのですが……。

妻: 自己中心的。人や家族のためではなく、自分の好きなことをして、人の意見に聞く耳を持たない。客観性、現実把握能力に欠けているように思います。セルフコントロールして、向上してもらいたいです。

■結婚生活が長続きする三カ条を教えてください。

  1. 自分を幸せにする鍵は自分。

結婚すれば幸せになるわけではありません。どんな状況でも幸せを感じる自分をつくっていければ、 結婚も長続きすると思います。実は、我が家の場合、夫の方がこの術に長けています。

2.互いの友人、家族とのつきあいを大切にする。

スペインの場合は、夫婦は家族というセットの中の単位。こちらでは 日本に比べて休みが多く長いせいか、家族・親族・友人が集う機会が多いです。最初は面倒に思えますが、それでもだんだん自分の友人、家族になっていくものです。両親が他界した私には、舅と姑が実の親のようにも思えます。舅は4年前に亡くなりましたが、よく一緒にワインを飲んで、笑い話をしたものです。また、私が2年続けて入院した時に誰よりもよく看病をしてくれたのは姑でした。

3.各自の世界を持ち、また共通の楽しみを持つこと。

夫はフリーなので、自宅がオフィスです。比較的一緒にいる時間は長い方ですが、私も自分の仕事や趣味や友人とのつきあいで出かけることが多く、別行動も取ります。2人の好み、趣味がすべて同じであるわけはないので、それぞれが自分の好きなように楽しめば良いと思います。結婚当初、夫は妻が別行動を取ることに反対で、私も「妻は家事に専念すべし」のような時代錯誤なイメージを持っていて、あまり外出もせず、息苦しい時代がありました。

19年の年月をかけて変わってきたわけですが、それを夫婦間の情熱がなくなったと思うより、お互い大人になって相手の気持ちを尊重することを分かってきたと思っています。ただ、やはり楽しい時間を共有することは大事で、私たちの場合はおいしいワインを飲みながら一緒に食事をするのが大切な時間となっています。

■将来の家族の夢は?

娘が仕事をし、家庭を持って、孫が生まれ、皆の成長を見ること。そして、その家族全員で日本に行き、彼らのルーツでもある日本を一緒に見たいですね。これは家族の夢というよりは、私の夢ですけど。