タブレットやノートPCを利用する際、「モバイルルータ」と「スマホのテザリング」では、どちらが便利でお得だろうか? そんな疑問を解決すべく、マイナビニュースではモバイルルータ派とテザリング派を集めて座談会を実施し、「どちらが使いやすいか」というテーマで議論してもらった。その中で、最近流行している「格安SIM」の話題が出た。
そこで今回は、実際に格安SIMサービスを使っているユーザーの話を交えつつ、モバイルルータと格安SIMの使い勝手の違いについて考えてみた。
格安SIM契約中のMさんの場合
座談会では、容量制限のないモバイルルータであれば、運用コストの面でも通信容量の面でもテザリングより使い勝手が良いという結論に落ち着いた。この結果に関して、「格安SIMを使ったテザリングの場合は?」と疑問も出たのだが、参加者の中に格安SIMの利用者がいなかったので検証できなかった。
そこで本稿では「複数台のモバイル端末を所持する場合、モバイルルータと格安SIMならどちらが使いやすいか」という新たなテーマを掲げ、両者の特徴について考察してみた。 なお今回は実際に格安SIMのユーザーであるMさんに話を聞いている。Mさんは会社勤めの30歳独身ひとり暮らし。彼のモバイル環境は以下の通りだ。
- NTTドコモのスマートフォン、SIMフリースマートフォン、ノートPC(テザリング)を利用
- モバイル端末のデータ通信に費やす容量は月に8GB超
MさんはNTTドコモのAndroidスマートフォンを利用中。ノートPCはスマホのテザリングで通信している。また、2台目端末としてSIMロックフリーの「ZenFone 5」を購入し、MVNOの格安SIMカードを挿して運用しているという。毎月のデータ通信容量は、ドコモのスマホとノートPCの合計で5GB超、SIMフリー端末で3GB超とのこと。
ZenFone 5の用途は主にプライベート用の端末として、ブラウジング、ソーシャルサービス、ネットショッピングなどを中心に使っているとのこと。データ容量を消費するとわかっていながら、たまに動画サービスやオンラインゲームなどをチェックしてしまうのが悩みだそう。「気を抜くとすぐにかさんでしまうデータ通信容量をいかに低く抑えるか」に毎月苦心しているとのことだった。Mさんの月額利用料は以下の通りだ。
■ Mさんの月額利用料金(端末代金を含まず)
- NTTドコモのAndroidスマートフォン(月額9,000円超)
カケホーダイプラン2,700円+spモード300円+データMパック(5GB)5,000円+追加オプション(1GB)1,000円
- 格安SIMサービス「U-mobile データ専用 3GB」(月額1,480円) データ専用プラン(3GB)1,480円
合計:10,480円
メインのスマートフォンのデータ通信容量は約6GB。ドコモの料金プランでは5GBの上は8GBになってしまうので、5GBのプランに毎月1GBを追加して利用しているそうだ。プライベート仕様のZenFone 5については、現時点では利用プランの上限(3GB)を超えることはないが、前述の通り、「気を抜くとすぐにかさんでしまう」ため、気をつけながら通信している。
このように10,000円超の通信費を毎月支払っているMさん。この金額について「割高かなと思う」と語る。高額な利用料を支払っているのに、満足いくインターネットライフを送れているとは言えないようだ。
格安SIMサービス利用上の3つの問題点
Mさんのモバイル環境について聞いていくうちに、格安SIMサービスの問題点が見えてきた。
大手キャリアでは2台目のモバイル端末を運用しやすいように、料金面でお得なプランを提供し、またデータシェアなどで使い勝手も向上させようとしている。しかし、まだ「割高」と感じている人は少なくない。そのため、格安SIMサービスが注目されているわけだが、こちらも万能ではない。次の3つの問題点に注意する必要がある。
その1:データ通信容量の上限が決まっている
ひとつめは言わずもがな「データ通信容量の上限が決まっている」ということ。データ通信の多い月は、追加費用が発生してしまう。Mさんは最近、アプリやOSのアップデート、ウイルス対策ソフトのデータ更新といった日常的に行われる通信で費やされるデータ容量まで気にし始めたという。通信容量の上限が決まっていると、誰しもそういった思いにとらわれることだろう。「ぷららモバイルLTE」「U-mobile」など、通信容量に制限が設けられていない格安SIMサービスも提供されているが、ぷららモバイルLTEは通信速度が3Mbpsに制限されており低速。U-mobileは下り最大150Mbps/上り最大50Mbpsの通信が可能だが、一定期間で大量の通信を行ったユーザーの利用を制限する仕様となっている。いずれも、まだまだ使い勝手のよいサービスとは言いづらい。
その2:使いすぎると通信速度が制限される
先に触れたように、あらかじめ設定されている通信容量を超えると通信速度が制限されてしまう点も注意したい。格安SIMサービスの多くは、速度制限が設けられており、超過すると最大200kbpsなど低速な環境になってしまう。
その3:追加料金を支払うと結局高額になる
最後は、「追加料金を支払うと結局、高額な利用料を支払うことになる」ということだ。通信容量を使い切り、100MBあたり300円など追加料金を支払い続けていると、結局は高額な利用料を支払うことになりがちだ。加えて、大手キャリアようにスマホとの間でデータの通信容量をシェアできない点にも触れておきたい。使い方によっては、容量が余ってしまう(=お金が無駄になる)、ということも充分に考えられる。
これらの問題点に加えて「MVNOが提供する格安SIMカードが挿せるモバイル端末がまだそれほど普及していない」ということにも触れておきたい。格安SIMカードに対応したスマートフォンの数はまだ少ない。タブレット端末に至っては、SIMカードスロットを搭載していない製品も数多く存在しているのが現状だ。
格安SIMとモバイルルータ、賢い選択はどっち?
ここまでMさんの意見を参考にしながら、格安SIMは本当に”お得”に運用できるか考えてきた。今回取材したMさんの運用コストは、月額10,000円を軽く超え、その利用料とサービス内容について不満を持っていることがわかった。
一方、前回の座談会で「Androidスマートフォン+WiMAX 2+(モバイルルータ)」を運用していたAさんは、月額10,196円で運用していた。コストに関しては、ほぼ同程度と言えるだろう。
■ Aさんの月額利用料金
- Androidスマートフォン
カケホーダイプラン2,700円+spモード300円+データSパック(2GB)3,500円
- WiMAX 2+(モバイルルータ)
UQ Flatツープラス3,696円
合計額:月額10,196円
では、使い勝手の面ではどうだろうか。ストレスなくデータ通信を行いたいなら、Aさんのように通信容量に制限をもうけていないWiMAX対応のモバイルルータを活用するのが賢い選択肢だと言わざるを得ない。格安SIMや大手キャリアの料金プランのように容量制限が設けられていないので、通信量を気にせずインターネットを利用することができる。加えてSIMカードスロットを搭載しないモバイル端末も運用できるというのも利点になるだろう。利用料についてもWiMAXの場合は月額3,696円と手ごろ。メインのスマートフォンの通信をWiMAX回線に逃がし、通信容量を節約する、といった使い方も可能だ。
現在、格安SIMの導入を検討している方は、AさんのようにWiMAXモバイルルータという選択肢も視野に検討しておくとよいだろう。