英国のビールと言えば、やはりダークな「エール」。パブで1杯もいいのだが、スーパーマーケットでもいろんな種類のエールが売られている。そこで今回、気軽に買える多数のビン入りエールの中から、飲み比べて厳選した5種類をご紹介!

スーパーマーケットで買える「エール」の数は多い。パブで試しておいしかったエールを見つけたら、即買いがオススメ!

戻ってきたエール人気

英国でも絶対的に消費量の多いビールと言えば、日本のスタンダードなビールのような炭酸のきいた薄い黄色のビール「ラガー」だが、地ビールとなるとやはりエール。炭酸の弱いダークなエールは、英国では「ビター」とも呼ばれて地方色も豊か。「冷え冷えをごくごく」のラガーと違って、「ぬるめをちびちび」がエールのお作法で、一昔二昔前の英国では「おじさんの飲み物」として定着していた。

しかし、英国の消費者団体「CAMRA(キャンペーン・フォー・リアル・エール)」の働きかけに昨今の食ブームも手伝って、すっかり活況を取り戻した様子。最近ではほとんどのパブで数種類のエールを用意している。ラガーに比べて味の幅の広さが食通の若者にもうけて、ワインやウイスキーのように違いを求める通好みの飲み物となっている。

英国のパブでは最近、どこでも数種類のエールを置いている。地元の醸造所のビールにめぐり合えることも

ハチミツ香るオーガニック・ビール

さて、ロンドンの中規模のスーパーマーケットで買えるビン入りの英国産エールは20~30種類以上もあるが、その中でもエール初心者にも飲みやすいのが、西ロンドンで醸造されているオーガニック・ビール「ハニー・デュー」。おそらくロンドンで一番知られているエール「ロンドン・プライド」と同じフラーズ社のビールだ。女性向けの黄色い涙型のパッケージ・ロゴもかわいらしく、お土産にもぴったり。ハチミツの香りやうっすらとした甘みとゴールデン・カラーが特徴だ。

「ロンドン・プライド」はロンドンで超定番のエール

女性好みのかわいいボトルの「ハニー・デュー」。名前の通り、ハチミツの香りとほのかな甘みが楽しめる

黒ビール好きにはたまらない2品

1827年に北ヨークシャーで創業してから、かたくなに家族経営を守っているビール会社がT&Rシークストン社。そしてシークストンを代表するエールのひとつが「オールド・ペキュリアー」だ。エールにしては炭酸がきいていて、濃厚な香りともっちりとした泡が黒ビールを思わせる。

もう一品、CAMRAの「ベスト・ストロング・ビター」賞をはじめ、いくつものアワードを受賞しているのが「ブロードサイド」。こちらもハーフ&ハーフのような味わいで、黒ビール好きには好まれそう。こってりしたお料理と一緒にいただくのも美味。アルコール度数が6.3%と、5%台が主流のエールの中では強いビールでもある。

濃厚な味わいながら炭酸が強めなので、エール初心者にも飲みやすい「オールド・ペキュリアー」

予想以上にアルコール度数が高い「ブロードサイド」はちびちび飲みたい

ラベル買いしたいデザインが魅力の2点

ホール&ウッドハウス社は、1777年創業のドーセットのビール会社。現在もウッドハウス家の7代目が所有・経営している。アナグマのロゴがかわいい同社の、これまたかわいいフェレット・ラベルのビールが「ファースティ・フェレット」。色の薄いエールは独特の苦みがあることが多いのだが、こちらはライトで苦みが少なくアルコール度数も低めの4.4%。女性でも飲みやすいエールのひとつだろう。

もうひとつ、ラベルの魅力でお土産にオススメしたいのが「スピットファイヤー」。英国では第2次世界大戦のアイコンとも言える戦闘機の名前がつけられたこのビールは、ケントのビール会社シェパード・ニーム社が1990年、バトル・オブ・ブリテン50周年を記念して発売したもの。味はいわゆる普通のエールで大きな特徴はないが、「ザ・英国」なラベルと王冠はお土産にぴったり。

かすかなオレンジのアロマと、甘さと苦みのバランスが絶妙の「ファースティ・ファレット」

ユニオンジャックがあしらわれ、英国らしいラベルがお土産にぴったりな「スピットファイヤー」

ここでは、エールを飲みつけていない日本人の口にも合いそうなもの、という基準で5点を選んだが、エールは数限りなくある。スーパーマーケットでも支店によって品ぞろえはさまざまなので、モルトな味わいをじっくり味わいたい人はぜひ果敢にチャレンジしてみてはどうだろう。パブでオーダーする際にも気軽に試飲させてくれるので、あれこれ飲んでみてからお気に入りの1杯を購入するのがオススメ。

ちなみに、ロンドンでは2008年から地下鉄での飲酒が禁止されている。実際に飲んでいなくても口の開いた缶やボトルを持っているだけで罰金の対象になるのでご用心を!

筆者プロフィール : 安田和代(やすだかずよ)

編集者、ライター。1995年からロンドン在住。日本の雑誌、ウェブサイトにロンドン情報、ライフスタイル記事、人物インタビューなどを寄稿。著書は『ロンドンのアンティーク』(日経BP企画)ほか。あまり役には立たないけれど「おもしろいモノ」をクンクンと感知しつつ、Facebookブログなどもゆるゆると更新中。