2014年8月末、インテルのハイエンドプラットフォームが刷新され、"Haswell-E"が発売された。最大の特徴は、コア数のラインナップが従来の6コア/4コアから、8コア/6コアへと増加したことだ。そしてDDR3メモリに代わってDDR4メモリが採用され、アクセス速度が大幅に向上。CPUソケットは「LGA2011-v3」になり、"SandyBridge-E"や"IvyBridge-E"との互換性はなくなった。これらの変更によりチップセットはX99 Expressとなり、X79 Expressから3年ぶりの更新が行われることになった。
マウスコンピューターも、さっそくこの"Haswell-E"とX99 Expressを搭載した製品を発表している。とはいえハイエンドプラットフォームだけに、8コア/16スレッドを利用できる最上位モデルCore i7-5960Xを搭載したシステムは高価だ。しかしバリューモデルとなるCore i7-5820K搭載PCならば、最小構成は14万円台(税別)。Core i7-4790などを搭載したPCに少し予算を足すだけで手が届いてしまう価格帯となる。そんなCore i7-5820Kを搭載した製品が、「MDV ADVANCE」シリーズの「MDV-RX9520S」。今回は同製品について詳しく見ていこう。
MDV-RX9520Sの最大の特徴は、なんといっても"Haswell-E"ことCore i7-5820Kを搭載していることだろう。6コア/12スレッド以上を備えたCPUはインテルのメインストリームCPUラインナップにはいまだ登場しておらず、4コア/8スレッドを超えたマルチスレッド処理はハイエンド環境でなければ味わえないものとなっている。ただしコア数が増えている分、発熱の処理が難しくなっており、定格動作クロックは多少低めとなる3.3GHz(ターボ・ブースト機能利用時3.6GHz)。Devil's CanyonのCore i7-4790Kは4.0GHz(同4.4GHz)という高い動作クロックを実現しているので、マルチコアを活かせないソフトでは逆に処理速度が伸び悩むこともあるかもしれない。このあたりは、次ページのベンチマークテストで詳しく確認していきたい。
マルチカードリーダーを標準搭載したミドルタワーケース
"Haswell-E"を搭載した同モデルは、いうまでもなくマウスコンピューターのタワー型ラインナップにおいてハイエンドに位置するモデルだ。その分ケースも上位モデルが使用されており、単品で販売されている市販モデル並みの最新ギミックを備えている。前面パネルは指紋の目立たないつや消しブラックとなっており、左右と下部に設けられたエアホールから吸気を行う。また中級以上のケースでは当たり前となった、電源ユニットのボトム配置を採用しており、CPUの熱が電源ユニットへ与えるダメージを軽減してくれる。しかもケース自体が低重心となるため、安定した設置が可能だ。
つや消しブラックが採用された前面パネル。ほこりや指紋が付きにくく、きれいな状態を長期間保つことができる。吸気は前面パネルの左右と下部から行う |
ケース背面の様子。電源ユニットのボトム配置により、ケース全体の安定性が増している。12cmファンの下には、水冷ユニット増設用ホールも確認できる |
左側面パネルの拡張スロットにあたる箇所にはエアホールが設けられており、グラフィックスカードの冷却を助けてくれる。電源ボタンは、床置き時の押しやすさを考慮して、ケース天面に設置。そのほかのフロントインタフェースは、電源やアクセスランプと共に、前面パネルの中央に配置されている。USB 3.0端子やオーディオ入出力だけでなく、マルチカードリーダーが標準搭載されている点がうれしい。なお前面パネルは、ストレートなエアフローを実現したスチールメッシュパネルに、BTOカスタマイズで変更することも可能。静音性よりもケース内の温度を重視する場合は検討しよう。
左側面のパネルにはエアホールが設けられている。拡張スロットの側面に位置し、ケース外のフレッシュな空気を直接グラフィックスカードに送ることが可能 |
左側面のパネルを開けた様子。使用しないケーブルは中央付近で5インチベイに束ねられている。グラフィックスカードは短めで、スペースには余裕がある |
前面パネル中央部にはアクセスランプを備える。その下にはオーディオ入出力やUSB 3.0などのフロントパネル用端子が並ぶ。マルチカードリーダーを標準で搭載しているのがうれしい |
電源ボタンのみ、前面パネルの天面に取り付けられている。ミドルタワー以上のサイズでは机の下にPCケースを置くことが多いため、ON/OFFも容易に行えるだろう |
6コアをしっかり冷却するサイドフロー型CPUクーラー
続いてPCの内部を確認しよう。マザーボードは、MSI製のX99-S01。MSIのWebページでは確認できないモデルだが、恐らくX99S SLI PLUSから一部の機能を省いたOEMモデルだろう。ボード色から各スロットまで黒で統一されており、なかなかカッコいい。DDR4メモリは8枚まで搭載することができ、クアッドチャネルで動作する。ただし、標準で搭載されているのは2枚となるため、試用機ではデュアルチャネル動作だ。続いて目に入るのがCooler Master製のサイドフロー型CPUクーラーだ。Core i7-5820Kは6コア/12スレッドを内蔵しているため、TDPは140Wとかなり高い。そのCPUからの熱を効率よく外部に排気するために、ヒートパイプを使用したサイドフロー型CPUクーラーが採用されている。その形状から、恐らく「Hyper 212」シリーズだろう。サイドフロー型としては標準的な作りだが、その冷却性能には定評がある。
グラフィックスカードやメモリを取り外したところ。マザーボードにはMSI製のX99-S01が採用されている。ボード、スロット、ヒートシンク、コンデンサに至るまでブラック一色だ |
CPUクーラーにはCooler Master製のサイドフロー型を採用。4本のヒートパイプによりヒートシンクに熱を伝え、12cmのファンによって効率よく排熱する |
拡張スロットはPCI-Express x16が4基、PCI-Express x1が2基。搭載されるCPUや接続する拡張カードによって、実際に使用されるレーン数は変わってくる。なお、Core i7-5820Kを搭載したMDV-RX9520Sでは計28レーンが使用可能。BTOカスタマイズにて上位のCPU・Core i7-5930KやCore i7-5960Xを選択した場合は、40レーンが扱える。また2つ目のPCI-Express x1スロットの横には、MSIの独自技術により、PCI Express 3.0 x4の帯域を利用することで転送速度・最大32Gb/sを実現した「Turbo M.2スロット」が確認できる。SATA3.0対応SSDをはるかに超える高速なストレージを利用したいなら、BTOカスタマイズメニューからPLEXTOR製のSSD「M6e」シリーズを選択しよう。HDDなどのストレージ用ゲージは、脱着式のワンタッチHDDホルダを採用。ドライバなどがなくとも、簡単にHDDの入れ替えや追加が行える。
6スロットすべてがPCI-Express 3.0で統一された拡張スロット。2基目のPCI-Express x1スロットの横には「Turbo M.2スロット」も確認できる |
脱着式のワンタッチHDDホルダにストレージを取り付け、ゲージにスライドインさせることでHDDを設置できる。工具なしで簡単に取り付けられ点がうれしい |
バックパネルの構成は、USB 2.0×2、PS/2ポート、USB 3.0×8、ギガビットLAN、光出力端子付きのHDオーディオ。メインストリーム向けチップセットであるZ97/H97 Expressでは、対応するCPUに3Dグラフィックス機能が内蔵されているため映像出力端子が設けられているが、X99 ExpressとHaswell-Eはグラフィックス機能を持たないので存在していない。その分、USB 3.0端子などが非常に豊富だ。LANコントローラは、省電力と安定性で人気の高いインテルのi218-V。ハイエンドプラットフォームだけに、細かな仕様にも妥協はない。
ハイエンドプラットフォームだけのことはあり、ケースやマザーボードには最新の高品質な製品が使用されている。次ページでは取り外した各パーツを確認し、ベンチマークテストでそれぞれの性能を計測していこう。