IEA(国際エネルギー機関)のマリア・ファンデルフーフェン事務局長(前・オランダ経済相)が11月に来日し、『World Energy Outlook 2014』レポートをもとに、日本記者クラブにて会見を開きました。
将来は非OECD諸国のエネルギー需要が増加
IEAが発表した『WEO2014』レポートと、ファンデルフーフェン事務局長のスピーチによれば、
『世界のエネルギー需要はダイナミックに変貌している。将来は非OECD諸国のエネルギー需要が増加し、OECD諸国の需要を凌ぐことになるだろう。OECD加盟国のエネルギー需要は2040年まで横ばいとなり、中国はしばらくの間、緩やかに増加するが2030年頃から横ばいになる。一方、非OECD諸国は、2020年以降は、インド、東南アジア、中東、アフリカの一部地域、ラテンアメリカなどがエネルギー需要の牽引役として台頭してくるだろう。
一方、供給面を考えると、世界のエネルギーシステムは、需要の期待に十分に応えられない状態にある。中東の一部地域では、1970年代の石油ショック以降で、最もリスクを抱えている現状と言っても良い。石油市場においては、中東の不安定が大きなリスク要因だ。短期的に見れば石油市場は緩和の見通しだが、将来的にはリスクを抱えている』
と、世界のエネルギーシステムの現状と見通しについて解説しました。
再生可能エネルギーは2040年までに世界の総発電量増加分の約半分に
また、2040年までに、石油、ガス、石炭、低炭素(再生可能)エネルギー源と、ほぼ四等分される世界のエネルギー供給構成について、ファンデルフーフェン氏は、
『天然ガスのマーケットは有望だ。LNG(液化天然ガス)の役割は拡大するだろう。天然ガス需要は50%以上増加し、化石燃料の中で最も高い伸びとなり、エネルギー供給の安定性につながる。また、供給側もオーストラリア、アメリカ、カナダ、モザンビークなど中東依存から多様化することになるだろう』
と述べました。
さらに石炭と再生可能エネルギーについては、
『石炭の資源量は豊富にあり、供給は安定しているが、汚染対策やCO2削減が影響し、将来的には減少するだろう。石炭需要の多い中国でも2030年以降は減少に転じ、OECD諸国も需要が減少する。その分、再生可能エネルギーが増加し、2040年までに世界の総発電量増加分の約半分を占めることになる。増加分の内訳は風力が34%、水力が30%、太陽光・熱が18%となっている』
との分析を明らかにしました。
執筆者プロフィール : 鈴木 ともみ(すずき ともみ)
経済キャスター・ファィナンシャルプランナー・DC(確定拠出年金)プランナー。著書『デフレ脳からインフレ脳へ』(集英社刊)。東証アローズからの株式実況中継番組『東京マーケットワイド』(東京MX・三重テレビ・ストックボイス)キャスター。中央大学経済学部国際経済学科を卒業後、現・ラジオNIKKEIに入社。経済番組ディレクター(民間放送連盟賞受賞番組を担当)、記者を務めた他、映画情報番組のディレクター、パーソナリティを担当、その後経済キャスターとして独立。企業経営者、マーケット関係者、ハリウッドスターを始め映画俳優、監督などへの取材は2,000人を超える。現在、テレビやラジオへの出演、雑誌やWebサイトでの連載執筆の他、大学や日本FP協会認定講座にてゲストスピーカー・講師を務める。