米国の格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスは1日、日本国債の格付けを「Aa3」から上から5番目の「A1」に1段階引き下げたと発表した。ただし、今後の見通しについては、日本は極めて高い信用力を維持しており「安定的である」としている。
主な格下げ理由については、「財政赤字削減目標の達成可能性に関する不確実性の高まり」「デフレ圧力の下での成長促進策のタイミングと有効性に関する不確実性」「それに伴う中期的な日本国債の利回り上昇リスクの高まりと債務負担能力の低下」の3つを挙げている。
財政目標の達成と債務抑制に関する不確実性の高まり
第1の理由として、日本政府が中期的な財政赤字の削減目標を達成できるかどうか、および債務の増大傾向を安定化あるいは反転させると同時に、成長を促進することに内在する緊張を克服できるかどうかに関する不確実性の高まりを挙げた。
その上で、消費再増税延期の決定は、2020年までに基礎的財政収支を均衡させるという長期目標の達成をさらに困難にするとし、この戦略は「財政再建と、長期的には債務の負担能力および持続可能性にリスクをもたらす」と懸念している。
経済成長に向けた政策の不確実性およびデフレ終息に向けての課題
第2の理由としては、アベノミクスの「第3の矢」を達成する政府の能力に関する不確実性の高まりを挙げ、一部の経済指標は過去1年間で経済活動が改善したことを示しているものの、潜在成長率は「依然として低い」と指摘。経済再生およびリフレに向けた課題は、安倍首相が2013年3月に「3本の矢」の経済政策を導入した当時より厳しいとの見方を示した。
併せて、雇用の改善、コーポレートガバナンスの向上、人口動態から生じる課題への対処の必要性など、日本経済の根底にある構造的な問題に対処するために、「政府がどのような追加施策を選択・実行しうるかも依然として明らかではない」と指摘した。
政策の有効性および信頼性の低下が債務負担能力を低下させる可能性
第3の理由としては、多額な債務残高の負担能力および持続可能性に対する最初の2つの懸念の影響を挙げた。2%のインフレ目標に向けた日銀の政策により、いずれ国債利回りが上昇し、政府の借入コストが増大すれば、金利上昇に伴って歳出も増え、税収増が相殺されることになる。
さらに、政策目標の達成能力に関する不確実性が高まれば、利回りが上昇し、歳入増により補うことが困難となるとし、その結果、政府の債務負担能力を損ない、「最終的に債務の持続可能性が低下し始める」としている。