愛知県・蒲郡市は11月24日、蒲郡市民会館にて「蒲郡市民講座『チョコレートの機能性と健康生活』」を開催。蒲郡市らが行っている「チョコレートの摂取による生活習慣病の予防・改善効果」の実証研究の中間結果報告や、チョコレートの健康効果に関する講演などが行われた。
産学官連携でのヘルスケア計画
同講座は、2013年度に蒲郡市が策定した「蒲郡市ヘルスケア計画」の一環として開催された。
同計画は、「市民の健康・予防と早期発見・回復」「再生医療等のヘルスケア産業の育成・集積」の2つの基本方針を軸としている。同計画の実現に向け、蒲郡市が主体となって、市民の健康維持や病気の予防に関する取り組みを積極的に推進。「市民の健康意識の向上・健康寿命の延伸」など、市が抱える主要課題に取り組んでいるという。
その蒲郡市の理念に、産業界では明治が賛同。現在、愛知学院大学(学)と蒲郡市(官)と連携した産学官共同での実証研究を実施している。
産学官共同での実証研究に参加した明治が会場内に設置したブースには、多くの人が集まっていた |
血圧が有意に低下
講座ではまず、この実証研究の中間結果報告が行われた。
実証研究は、蒲郡市民を中心とした45~69歳の男女を対象にして行われ、計347人分のデータを得た。参加者は、カカオポリフェノールが70%以上含まれているチョコレートを1日25g、4週間にわたって毎日継続摂取。そして、4週間の摂取の前後で体重やBMI、血圧などを測定したほか、摂取開始日からの自覚的な体調を調査するためのアンケートも実施した。
研究を監修した愛知学院大学 心身科学部学部長・大澤俊彦教授が、「チョコレートを用いてのこれだけの大規模な研究は初めてですが、非常に画期的な結果が得られました」と話すように、今回の研究ではチョコレートが健康にポジティブに働くことを示唆するデータが複数得られている。
まず、チョコレートを食べたことによって、参加者の血圧が有意に低下していた。参加者は「高血圧群」(収縮期血圧140mmHg以上あるいは拡張期血圧90mmHg以上)と「正常血圧群」(収縮期血圧140mmHg未満かつ拡張期血圧90mmHg未満)の2群に分けられ、それぞれ研究開始前後での血圧の変化をチェックした。
すると、摂取前は125.3mmHgだった参加者全体の収縮血圧(最高血圧)の平均値は、摂取してから4週間後には122.7mmHgまで減少。特に「高血圧群」は、摂取前後で比べると平均値が145.6mmHgから139.744mmHgまで改善されており、正常血圧群に比べて血圧の低下量が大きかった。
大澤教授は、チョコレートに含まれるカカオポリフェノールに血圧を下げる効果があると解説する。血管内部に炎症が起こっていると血管が狭くなり、それに伴って血圧が高くなる。だが、その炎症部分にカカオポリフェノールが作用すると、炎症が軽減されて血管が広くなる効果が期待できる。その結果として、赤血球が通りやすくなり、血圧が下がるという。
そのため、「チョコレートのカカオポリフェノールは、持続性のある血圧降下作用が期待できます」と大澤教授は話す。特に、カカオポリフェノールが70%含まれているような、高濃度のポリフェノール含有チョコレートが効果的だという。
動脈硬化の予防にもつながるかも
さらに、チョコレートが動脈硬化の予防につながる可能性を示唆するデータも得られている。
動脈が本来の働きをしなくなる動脈硬化は、脂質異常症によって引き起こされると言われている。日本動脈硬化学会の「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2007年版」によると、
「LDLコレステロール(悪玉コレステロール)が140mg/dL以上」
「HDLコレステロール(善玉コレステロール)が40mg/dL未満」
「中性脂肪が150mg/dL以上」
これらのいずれかが該当すれば、脂質異常症と診断される。今回の研究では、LDLコレステロールを排除する役割を持つHDLコレステロールが、チョコレートの摂取によって有意に増加していることが判明した。
大澤教授は、「これは、食事摂取による動脈硬化予防に向けての重要な効果といえます」と力説。さらに、体調を調査するためのアンケートによって、チョコレートを食べることが精神的にも健康になることがわかったことを報告した。
チョコ大好きな楠田枝里子さんも登場
講演の後は、大澤教授を含めたパネリストによる座談会が開催された。
座談会には「チョコレートの奇跡」などの著書があり、大のチョコレート好きを自認するタレント・楠田枝里子さんも参加。チョコレートのでき方や含まれている成分とその効能を語るなど、熱烈な"チョコマニア"ぶりを披露して会場をわかせた。
座談会に参加した稲葉正吉蒲郡市長は、研究参加者として自身も4週間チョコレートを摂取したエピソードを披露。「根っからのチョコレート好きなので、苦にはなりませんでした」と話すと、会場は大きな笑いに包まれた。
最後に大澤教授は、今回の発表は中間報告であり、チョコレートに関するさらなる研究が必要だと指摘。その上で、「ヒト試験では証明されていないさまざまな機能、特に認知症に関する効果はこれからヒトで証明していく必要があります」と、チョコレートの秘められたパワーをさらに解明していきたいと話した。また、今回の結果を受けて、「チョコレートを1日に25g程度食べるということを、ぜひ習慣にしていただきたい」と提案した。