数年前からネット上をにぎわせている1枚の写真。そこに写っているのは、警察犬の最終試験の模様。その試験官を務めるのは……なんと、猫!? 数々の犯罪撲滅に貢献する警察犬について、その知られざる試験方法を調査しました!

警察犬を猫が試験する!?

「警察犬の試験を猫」は本当?ウソ?

果たして、ネット上に出回っている情報は本当なのか? 日本警察犬協会総務部の須永浩二課長に話を聞きました。

――警察犬の最終試験に猫が登場するというのは本当なんでしょうか?

須永さん「私自身、初めて聞きました。嘱託警察犬の採用試験は東京の警視庁を除く各道府県警が行っています」

――採用試験の方法を教えてください。

須永さん「試験は基本的には年1回実施され、県によっては2回行っているところもあります。県により異なりますが、主に『足跡追及(そくせきついきゅう)』と『臭気選別』の2種類が行われます」

「足跡追及」の様子

――それぞれ詳しく教えてください。

須永さん「『足跡追及』は、犯人または行方不明者の足取りを警察犬が辿る能力を調べるものです。まず、仮想の犯人役(=印跡者)が、予め定めたコースの通り歩きます。途中決められた場所に遺留品を置き、最終地点にも遺留品を置きます。その後、犬が足跡コースで遺留品を発見させながら、所要時間内に正確に辿れるかどうかを試験します。コースはおよそ200~300歩です。

「臭気選別」の様子

『臭気選別』は、犯人の物と思われる遺留品を想定し、その臭いをもとに犯人の物かどうかを犬に判断させ、その正解率を競う競技です。10メートルほど先に選別台を設置し、臭いのついた5枚の布を置きます。1枚は「原臭」のついたもので、あとの4枚は他の臭い、『誘惑臭』がついたものです。

試験は全部で4回行い、きちんと『原臭』のついた布を持ってこれるかを見ます。また、より高度な犬の選別能力が必要とされる『ゼロ回答選別(犬に嗅がせた容疑者と同じ臭いを付けたものが、選別台上にない場合)』も行います」

「臭気選別」の様子

――他にもありますか?

須永さん「『警戒訓練』といって、よく警察犬が人間の腕にかみついている映像がテレビで流れますよね。ああいった犯人を咬捕する能力等指導手の命令を如何に忠実に守るかを審査する競技を見る試験や、県によっては爆発物の探知を行わせる試験などもあるようです」

「警戒訓練」の様子

「警戒訓練」の様子

警察犬に選ばれる犬種とは?

――警察犬になるには、性別や年齢、犬種などの制限があるのでしょうか?

須永さん「年齢と性別に制限はありません。犬種も、基本的には警察犬協会が指定しているエアデール・テリア、ボクサー、コリー、ドーベルマン、ゴールデン・リトリーバー、ラブラドール・リトリーバー、ドイツ シェパードの7種を推奨していますが、その他の種類でも試験を受けることができます。最近では関西の方で小型犬を警察犬として採用したケースもあります」

――小型犬ですか? その狙いは?

須永さん「大型犬では入れないようなところの捜索を行うため、と聞いたことがありますが、実態としてどのように活用されているかはわかりません」

どこかに「猫試験官」がいるかも……

というわけで、「猫試験官」を導入しているという確証は得られなかったものの、小動物に反応するかどうかの試験を行っている県警もあるということなので、日本全国どこかの県では猫試験官が存在するのかもしれませんね。

ところで、インタビューの中でも小型犬の警察犬が採用されたケースがあるということですが、「日本一小さい警察犬」として話題になったのは2010年、和歌山県警で採用されたミニチュア・シュナウザーの『くぅ』でした。

その後、岡山県では2011年に世界で初めて日本犬の柴犬が県警の嘱託警察犬審査会で合格し、警察犬として、行方不明者の捜索に貢献。交通安全運動の出発式などの広報活動でも活躍しました(現在は引退)。

さらに、奈良県警では2011年にチワワが警察犬に採用され話題を集めました。小型犬の採用は話題性だけではなく、災害時にガレキの間をぬって行方不明者の捜索にあたるなど、大型犬では難しい任務での活躍が期待されています。

今後も「小型犬のお巡りさん」が全国各地で見られるかも?

※写真提供:日本警察犬協会