ファン1人のためにライブを開催したボブ・ディラン (C)BANG Media International

米ミュージシャンのボブ・ディランが23日、たった1人のファンのためにライブを開催した。

ボブ・ディランは、自身のツアーバンドと共にフィラデルフィアにあるアカデミー・オブ・ミュージックのステージに立ち、41歳のタレントであるフレドリック・ウィキングソンのためにバディ・ホリーの「ハートビート」、ファッツ・ドミノの「ブルーベリー・ヒル」、チャック・ウィリスの「イッツ・トゥー・レイト(シーズ・ゴーン)」、そしてタイトル不明のブルースジャムを演奏したという。そのパフォーマンスを2列目の座席から1人で鑑賞したウィキングソンは、「私は微笑みすぎてしまい、エクスタシーを摂ったかのようだった。笑みが止まらず、その後何時間もあごが痛いくらいだった」と感想を語っている。

この特別公演は『エクスペリメント・エンサム』(『エクスペリメント・アローン』)という名のスウェーデン映画シリーズの一環で、本作はカラオケバーやコメディクラブなど通常大勢の観衆に向けて行われることを1人で体験するということがテーマになっており、ボブは非公開の金額を支払われ、本作に参加することになった。

ウィキングソンは1曲目が終わったところで拍手をしたものの、その後は自分自身を抑えることができなくなったと『ローリング・ストーン誌』に語っている。

「(僕が拍手した時)誰も僕のことなんて気にしていなかったんだ。それでとってつけたように聞こえたとか、奇妙に聞こえたかもしれないと気づいた。それで2曲目の『ブルーベリー・ヒル』の時には何か言うべきだと思ったんだ、あまりにも変な感じだったから。それで『君たちすごいよ!』って叫んだ。そうしたら、ディランが噴き出して笑い出したんだよ。僕には2人の子供がいて、その誕生は素晴らしいことだったが、僕のバカみたいなコメントでステージでディランが笑っていたことは信じられないね……。ショーが終わった時ディランは『いつでも寄ってくれ』と言ったんだ。こんなおかしなことは二度と起こらないと強調していた。とにかく最高だったね」

ショーの前に「疲れ果てていた」というウィキングソンは、劇場には他に誰もいなかったに関わらず、どこに座るかを決めるのにかなり時間がかかったという。「最前列じゃやりにくいかと思ったんだ。僕はまさにレストランで2番目に高いワインを選んでいるかのようだった。それっていかにもスウェーデン人らしい行動なんだけどね。それで2列目が一番いいかと思ったんだ」

この15分間のイベントを収めたドキュメンタリーは来月からYouTubeで公開される。

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