シャープは26日、同社のエアコン「SXシリーズ」の新製品発表会を開催した。冷房能力6畳用から23畳用までの8機種を、2015年1月20日に発売する。

シャープ「プラズマクラスター エアコン SXシリーズ」

シャープのエアコンは、独自のイオン発生技術"プラズマクラスター"機能や、上下両側に開いて送風もできる"ロングパネル気流"などを備えている。これらに加えて、前年の2014年度モデルでは、"足冷えまセンサー"と呼ばれる機能を搭載したほか、業界で初めて足元の温度を設定できる製品を発売し、"ママと赤ちゃんにやさしいエアコン"を謳った販売戦略を展開した。

今回発表されたSXシリーズは、エアコンの"清潔さ"に主眼を置いた新機能や改良が図られたのが特徴だ。特にカビ対策に重きを置き、従来のプラズマクラスターによるカビの抑制に加えて、カビを発生させないための機能や機構が採用されている。

まず1つが運転中の機能として、"ホコリブロックフィルター"を採用。これはエアコン内部にホコリを侵入させないようにするためのもので、フィルターの目を従来の1/4にあたる、1マス5万5300マイクロ平方メートルに小さくした。さらに、フィルターの目に入り込める細くてしなやかな毛と、ホコリをボックスに掻き出せる弾力のある毛からなる"ハイブリッドブラシ"により、従来比で約1.8倍のホコリ除去が可能になっている。

また、ファン・送風路・新パワー集中ガイドと呼ばれる部品に"静電反発型チタニア"をコーティング。これは「酸化チタン複合物」ともいわれる物質で、成田国際空港ターミナルの天井ガラス面にも採用されている。この素材の採用により、静電反発の力で電荷を帯びたホコリを弾くことができる。これら機能によってもなお付着してしまったホコリは、従来機種にも搭載されていた"熱交換器クリーニング"機能により、洗い流す。

新製品の内部構造(カットモデル)

新旧フィルター比較。新フィルター(右)は、従来(左)に比べて、フィルターの目が1/4の細かさになっている。中央に展示されているのが"ハイブリッドブラシ"

通称"チタニアコート"。送風経路の部品にコーティングされ、静電気の力でホコリの付着を防ぐ

次に運転停止後には、エアコン内部の除湿が行われる。これはプラズマクラスター内部清浄と呼ばれる従来の機能。メーカーによると、冷房・除湿運転時のエアコン内部の湿度は90%以上にもなるとのことだ。ホコリと水分を栄養源にして、空気中の浮遊カビが着床しやすくなることから、エアコン運転後に不可欠な行程としている。

最後に停止中の機能として、"プラズマクラスターパトロール"を搭載。室温20度・湿度70%以上というカビが生育しやすい環境になると自動でエアコン内部の空気を動かし、1立方センチメートルあたり10万個の高濃度イオンを放出。さらに、ファンが逆回転することにより、エアコン内部全体にプラズマクラスターを行き渡らせる。

シャープでは、これら一連のカビ対策機能を総称して"風クリーンシステム"と呼ぶ。一般的に、カビ菌は室内の空気中1立方メートルあたり100~1000個存在すると言われる。同社が日本食品分析センターに依頼して行った試験では、空気中1立方メートルあたり920個の浮遊カビ菌が含まれる環境下において、エアコンの運転前後のカビ菌数を比較したところ、風クリーンシステム非搭載の前年モデルでは6,500個に増殖していたのに対して、新製品では860個と逆に減少していたという。

長時間使用したエアコンの内部の状況を部品を分解して展示。驚くほどカビだらけだ

夜間の暗い場所でも使えるよう、持つと光るリモコンを採用。新モデルでは温度設定も0.5度単位になっている

そのほか冷暖房の機能では、"スピード暖房"と、エアコンの内部を予熱して暖房運転開始後すぐに温風を出せる"即温風タイマー"を追加。2つの機能により、6分以下で部屋全体を設定温度まで温めることができるとしている。

また、"やさしさ冷房"も搭載。温度と湿度を検知し、28度設定の冷房運転とリズム風を送る扇風機モードを自動で切り替える機能で、主に就寝時の使用を想定している。前年モデルで搭載された、室温15度で弱運転する"やさしさ暖房"が好評だったことから、今回冷房バージョンとして新たに追加された。

「当社のエアコンでフラッグシップ機にあたるSXシリーズ。自社のエアコン全体で2割程度の売上を目指したい」と語る、シャープ 健康・環境システム事業本部 空調システム事業部・副事業部長の苅田英之氏

記者発表会で登壇したシャープ 健康・環境システム事業本部 空調システム事業部・副事業部長の苅田英之氏は「自社で行った、お母さんを対象にしたアンケートでは、家庭内でカビが気になる場所としてお風呂の次にエアコンと答えた人が多かった。しかし、エアコンのお手入れをしている頻度は半年か1年に1回という人が多く、意識と実態がかけ離れていることがわかった」と説明。

「お手入れしなくてもエアコン自身で清潔さを保てるのが大切。カビを予防するという発想で今年のモデルは商品づくりを行った。カビ取りの専門業者など、社内外のカビの専門家にヒアリングを実施してカビ発生のメカニズムに着目して開発した」(苅田氏)と、新製品にいたる経緯を明かした。

市場想定価格は、冷房時の定格出力7.1kW (23畳用)のAY-E71SX2が35万円前後。以下、20畳、18畳、14畳、12畳、10畳、8畳、6畳用の順に各33万、30万、28万、27万、26万、24万、23万円前後となっている。